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静岡県の新幹線は本当に不便なの?

東海道新幹線沿線の各県のなかでも、一番長い距離(だいたい170km!)を走り、一番多い駅数(6駅)を保持している県。
しかし、のぞみ号の運転開始から、例外なくすべてののぞみ号がすっ飛ばしてきた県・静岡県。
浜松市や静岡市は政令指定都市にも指定されており、都市の規模にしては不便だ!とか、1時間に1本ぐらいののぞみを止めてもいいじゃないか!
という意見もあるようです。

確かに、最大で1時間に12本という、通勤電車にも引けを取らない高頻度で運転される「のぞみ」に対して、ひかり・こだまは合わせて4本。
あまりにも不便じゃないか!という意見もまあわからなくはないです
のぞみのイエローに染まる発車標に対し、ポツリポツリとひかり・こだまの赤・青が時折挟まる東海道新幹線のダイヤは、確かにアンバランスと言えなくもないですね。
しかし、本当に不便なのか??というとそうでもないような気がします。
他の新幹線駅と比べてどうなのか?いろいろと調べてみました。



歴史的背景
因みに、東海道新幹線の開業当初から速達型のいわゆる静岡飛ばしの伝統?は、現在に至るまで引き継がれている。
開業当初に設定されていた「ひかり」は当然のごとく東京~名古屋間は全列車がノンストップ。その後、一部のひかり号は静岡や浜松などに停車するようになるものの、あくまで一部。
基本的には、静岡駅や浜松駅への準速達系の停車は1時間に1本に調整されて今に至ります。
のぞみの登場前は当然ながら?ひかり号の速達型が、今ののぞみ号の役割を担っていたわけです。

これはどうしても東海道新幹線の宿命として、東京~名古屋~大阪のパイが大きすぎ、そちらに全力を注いでおかなければいけないというところ。
中間駅間の輸送よりも、三都市間直行の輸送が多いのは、開業以来の宿命と言えます。

因みに開業後しばらくは、ひかりとこだまの運転本数は同じでしたが、これは、現在ののぞみ号と同様、ひかりは超特急料金と呼ばれた加算料金が課せられたこともあり、こだまで乗り通す人も多かったこと。
また、混雑対応もあって、こだまには自由席が設けられたため、輸送力の増強にはこだま号の増発が効果的であったこともありました。
その当時は、こだまも結果的に東京~名古屋~大阪の輸送を担っていたともいえます。

<静岡駅にのぞみを止めることは可能なのか?>
物理的には不可能ではないと思います。のぞみ号はすべての列車が全区間、全速力で走っているわけではなく、前を走る列車との間隔の関係上、ある程度はスピードを落として運転している区間がある場合が多いです。
例えば、新横浜~名古屋を見ても、最速で1時間15分で走る列車もあれば、逆に1時間21分掛かる列車もあります。
概ねではありますが、新幹線列車が1駅停車することによるタイムロスは4分ほどと言われているので、数字上は時間がかかるのぞみ号だけでも静岡に停車することは出来なくはないかもしれません。
ただ、この所要時間の差はこだま号やひかり号の関係もあるため、静岡駅付近でのダイヤがどうなっているのか?という問題もあるので、簡単に言えるものではないです。
もしくは、のぞみ12本ダイヤを実施しない時間帯に、運転されない続行便のスジを生かして停車させるということは可能でしょう。

<ではなぜ、のぞみが静岡に停車しないのか?>

一言でいうと、東海道新幹線内でののぞみ号の役割を明確にし、それを忠実に守っているだけと言えます。
あくまでのぞみ号の役割は、東京~名古屋~大阪の大都市圏を結ぶこと。
のぞみ号はそこに特化することで、効率的かつ速達性をもって輸送にあたることができます。

静岡県内の輸送需要がそこまで大きくないというのも理由の一つでしょう。
JR東海の発表によると、2022年度の静岡駅の新幹線単独の乗車人員は1万7千人。ちなみに浜松駅は1万1千人です。
東海道新幹線内ののぞみ停車駅の中で最小になる、品川や新横浜の2万8千人に及びません。

せめて1時間に一本でも!という声でも、残念ながらそれも難しいでしょう。現在のダイヤはのぞみ同士が近接して走っており、臨時ダイヤを含めるとダイヤ上は最大でも9分の間隔。最小では2分や3分の間隔で走っています。
そんな中で1本でも停車させれば、のぞみがのぞみを追い抜く!なんてことにもなりかねず、それはJR東海としてもやりたくないでしょう。
それをするならのぞみを減らしてひかりに…という議論になりかねません。

<静岡は本当に不便?>
本当に静岡の新幹線駅は冷遇されているのか?という問題です。
のぞみの数分間隔でやってくるという現状を見ると、そう感じるのも無理はありません。
多分、静岡の新幹線ホームで列車を待っていたら、次から次へとのぞみが通過していくのを見守ることになるのでしょう。
しかし、静岡の都市規模からすると、むしろ妥当なダイヤ・輸送力ではないか?と僕は考えます。

現状の静岡駅の新幹線ダイヤを見てみます。

上り(東京)方面ですと
こだま号が毎時25分と57分
ひかり号が41分
とはいえ、毎時25分のこだま号は、途中でひかり号に追い越されるので、有効な停車本数としては2本というところでしょう。

下り方面もほぼ同じような感じで
こだま号が21分と52分、ひかり号が毎時07分。52分発のこだま号は上りと同じく途中でひかり号に抜かされるという状況。
要するに静岡起点で見ると、メインの行先地となっているであろう東京方面にしろ、名古屋方面にしろ、有効な本数としては2本。
ただし、やはり追い抜きの関係もあって、間隔は不均衡です。

因みに、静岡と同規模レベルの都市となると、人口規模だけ見ると新潟が丁度程よい比較相手となります。
その列車本数といえば、日中は1時間に1本~2本程度。
対東京で少し距離があるというものの、この程度で十分に輸送量としては賄えているといえます。

こだま号が不便か?というとそうでもないと思います。確かにのぞみにバンバン抜かされるのは焦る人には気持ちいいものではありませんが、いつも自由席はガラガラ。繁忙期でもない限り、静岡から座れない!ということはほぼないでしょう。
30分間隔にやってきて、1時間30分弱で東京や名古屋に出ることができる利便性は、便利すぎる中にあっては気づかないかもしれませんが、のぞみを抜きにして考えれば十分に便利なものと考えられます。

むしろ、のぞみに鬱陶しい(?)東名阪間直行客を請け負ってもらっていると考えてもいいかもしれません。
もしも様々な障壁を乗り越えてのぞみが静岡に止まったとしても、やってくる列車は東名阪間の直行客で一杯。途中の静岡から乗る人は立ちん坊で乗ることになりかねず、本当に利用者にとって幸せなのか??と思います。

<リニアが開通したら?>
それではリニアが開通したらどうなるでしょう?
残念ながら、その時ものぞみが静岡に止まる可能性は非常に低いと思います。
まず名古屋開業時。
のぞみの運転が減るとは思いますが、新大阪までであってもまだ乗り換えを嫌う客。また、東京~山陽方面へ向かうお客のために、まだ速達性は必要です。そもそもリニア新幹線の輸送力は東海道新幹線よりも劣るとおもわれており、まだまだその時点ではのぞみの必要性は高いと思われます。

そして新大阪開業時。
この時に、のぞみの役割はほぼ終了するのかもしれません。

当然、東名阪間の需要はほぼリニア新幹線に託されるでしょう。
山陽方面を見ると、乗り換えを考えても、東京~博多を4時間弱で結ぶことが出来ると考えると、完全に今ののぞみ号の役割は、リニア新幹線+山陽新幹線に移行するでしょう。
寧ろ、静岡県内にものぞみを停車させ、東京~静岡県内~関西・山陽方面の需要喚起をするようになるのでは???

といったところで、ちょっとまった。
もうそれならひかり号で良くないか!という話になります。
本数は需要に合わせて減らすとしても、全列車が静岡や浜松に停車する必要はありません。
ならひかり号の停車パターンを増加させ、今は2時間おきの停車となっている小田原や豊橋などの中小都市の駅も、満遍なく1時間に1本は止まるようなダイヤも可能だと思います。

現在、ひかり号は東京~新大阪でおよそ2時間50分を要していますが、のぞみの退避がなくなれば、のぞみ停車駅+2~3駅に停車したとしても、全列車が2時間33分ほどで、東京~新大阪を走ることは可能と思います。
これは一時期の、のぞみ号の所要時間と互角な所要時間。
博多方面への直通ひかり(これは、リニアからの新大阪乗り継ぎでの山陽方面速達需要も拾う)を復活させれば、乗り換えを嫌う山陽方面直通客も充分に使うことが出来るでしょう。

ただ、もしかしたら少々割高なのぞみ料金を保持するため、寧ろひかりを撤廃し、こだま号を除くすべての列車をのぞみにする可能性も捨てきれはしません。
その場合には静岡に止まるのぞみが実現するわけですが、なんかのぞみが静岡に止まる…というのはしっくりこないですね。

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