薄暮(雑記)
蝉の声が空気に染み込んでいく。
夏の温度はどこまでも、消えることなく残り続けている。
行き場の無くなった熱が同じ場所に留まる。
徐々に暗くなっていく街と、それに合わせて灯る街灯。カーブミラーのオレンジや、ガードレールの錆びついた白が、薄暮の中に沈んでいく。
電信柱や木々の黒が色濃くなる。その黒が世界を分断したり、新しくつなぎ直したりして、昼とは全く別の景色を作り上げる。
何度繰り返し呼吸して熱を発散しようが、今着ている服の全てを脱ぎ捨ててしまおうが、夏の昼が溶けた空気の中では全く意味がない。
いつまでも引き摺るように、半分諦めたようにその温度の中に佇んでいる。
街が夜を迎える準備をする。
その準備の音に合わせて呼吸をする。そうすることで私自身も、夜を迎える準備をする。
日々やらなければいけないことのほとんどを、今はほったらかしたままでいる。どうせやらなければいけないのならば、これから先、いつかの自分がどうにかしてくれるだろう。
そんな甘えと諦めの感情を吐き出しながら歩く。
夜が始まろうとしている街の中で、この呼吸と足音だけが聞こえる。
アスファルトはもう青く染まっている。
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