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5G線上のアリサ【第2章#7話】

#7話:転落の大拡散(バズり)ショー



【視聴時間=03:30】


「ツリッターVR実況オンにするわよ。みんなは映らないように気を付けてね。身元がバレるから」

「あぁ、清水ちゃんもこっち向かんように気を付けぇやぁ」
清水/池田

友達のいない愛利沙にとってツリッターVR機能使用は、教師であるが不慣れなために落ち度を見せることになる。

「オン」

「おぉ、映っているわ。私のVRメガネに愛利沙ちゃんの視点がそのまま映っている!」

「平野さん、声も入るから気を付けて!」

「あぁもう、町長! 平野さん言うたら平野さんの名前も入るやん。これなら先生の名前も100万人に知られてもうたやん」

「ご、ごめん、井口さん……」

「……だから!」

「もう手遅れです」

リアルタイム観戦者は10万人から右肩上がり。
ツリート内でリツリートをされ愛利沙は周りが見えずテンパりーーー

「―――フォ、フォロワーの皆さん、こんにちは。アリサです。今日は地元、池田町の桜の紹介をします―――」

フォロワーに見られ愛利沙が見つめる視点を同時に共有している。彼女のツリート内部は桜の景色で最初は賑わったが、喋りと配信不慣れな点を見抜かれ観光名所に逃げて、VR共有視点をオフへと切り替え配信を終えた。

「―――はぁ、どうだった?」

「どうもこうも、池田町の良さが十分に伝わったやろ。これで観光客がどれだけ増えるか楽しみや」

「予め、ツリッターVR実況をする時のルールを確認しておくべきでしたね」

「……ですね」

一同、興味本位のフォロワーたちに特定される怖さを、知らないまま地元紹介でツリッターVRを使った。

タイムライン上で個人情報が徐々に明かされる中、愛利沙は総合体育館の紹介をし始めた。

「ここは北京オリンピックで銅メダルを取った堀島君の地元でもあるのです!」

その反応が気になったためにコメント機能をオンに変えるとーーー

すぐにオフへと切り替えた。

ネガティブコメントで埋め尽くされていること弾幕ばかりが流れ、VRメガネは前さえ見えない事態に戸惑い参りだす。

「オフにしました。コメントの件は無視してください。タイムライン上も荒れているかと思いますが、気にしないように」

「ねぇ、加護さん……あたし何か間違ったことをしたのかな?」

「いいえ、いくら情報強者情強であっても、経験や企画の意図がないとこのようになるということです」

「そうやで、何事も経験や。アリサの有名人への道のりはここから始まるんや」
加護/清水/池田

緊急事態。

日常崩壊。

愛利沙の普通が壊れ始める。

観光名所やB級グルメを紹介した後、帰ってみたら、驚くことに氏名特定とまとめサイトにアップされている。

老人たちと愛利沙が取った良かれと思ったその行動は、アイムソーリーにフォローをされた唯一のアカウントのアリサのことを、追い詰めることになる始まりだとこの時、知らないままでいた。

人生転落、大拡散バズりショータイム。

開幕。

愛利沙に危機が迫る。


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