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サンキューメぇーーン

大凡毎朝立ち寄るコンビニが徒歩15分の通勤路にある。そこでカフェラテを買うのがいわゆるモーニングルーティーンだ。そのコンビニである朝、一向にお会計が済まないレジがあった。

あたふたしているそのお客さんは外国の方で日本語が喋れないようだった。屈強な体つきで今にもラップを歌い出しそうなその外国人男性は何故だかお会計に戸惑っていた。

「wait…wait…」

と何かがうまくいっていない。その外国人男性の後ろには次のお会計を待つ列が徐々にできていく。1人、2人、3人目が僕。そしてまた後ろに4人、5人。『早くしてれよ』という心の声が前から後ろから聞こえてくる。

背伸びをして前の人越しに状況を確認すると、どうやら電子決済がうまくいかないらしい。IDでお会計をしようとしているみたいだが、どうにもこうにも彼の支払いは一向に完了しない。

困っているその彼のその目の前に立っている店員さんはというと、これといって手助けをしようともしていない。何なら『何やってんだよ』という心の声が表情に出ているようにも見える。このままだと埒が明かない。1回だけ深呼吸をして前に並んでいる2人をかき分け彼に声をかけた、、、

「Excuse me. What happened ?」
と、高校生までの英語知識。さぞ下手くそな発音だっただろう。20代の10年間で海外旅行に10ヶ所行ってきた経験はあるので聞き取ることには多少の自信はある。すると、彼は日本じゃまず見ないような映画の世界さながらのジェスチャーで『これの使い方を教えてくれ。。。』と言ってきた。その慌てぶりから繰り出される大きなジェスチャーはまるでトイストーリーのウッディのようだ。

僕は「Lend me.」
果たしてこの言い方で合っているのか。何とか伝わりはしたみたいで、彼は僕に携帯を差し出してきた。どれどれ。あーなるほど、ハイハイ。彼が困っていた原因は案外簡単なことだった。

「Press here two.」
携帯の横のボタンを2回押して画面が切り替わったらそこの機械にタッチしてくれと伝える。(果たしてこの英語も合っているのか?)言われるがままに彼はその通りにやってくれた。すると“トルゥントゥン”と音がなりお会計完了。

『Yes!Yeah !! サンキューメぇーーン!!」

大喜びの彼。喜んでくれて嬉しいが、そんなことより印象的だったのは「メーン」。「メーン」って本当に言うんだ。練馬の三つ編みおさげラッパーが頭をよぎる。助かったよと拳を突き出してきた彼に僕も拳を突き出す。“コツっ”と拳と拳がぶつかる。ここはニューヨークのハーレムかどこかか?自分がいる場所が下北沢のコンビニだということを忘れるくらい映画のワンシーンかの如くのシチュエーション。

彼の喜ぶ姿を見てこちらも気分が上がり、
「Have a nice day !!」
と彼の背中をペシっと叩き、コンビニを出ていく腰パンでもはやパンツが見えている彼の背中を見送った。

サンキュー“メーン”。ソーマッチでもベリーマッチでも無い。「サンキューメーン」、メーンなんだ。一体日本語に例えるならどんな言葉になるのか?

「ありがとうだぜ!」
「ありがとな兄弟!」
「ありがとう!お前最高だせ!」

みたいな感じか?
おそらく日本には無い表現。不思議とこのメーンにはありがとうと言う感謝とともに固い友情見たいなモノを感じる。「今日からお前は俺の友達だぜ!」みたいな。もし仮に僕が困ってたらあの外国人男性は僕のことを確実に助けてくれそうな気がしてならない。そう、彼と僕はもう友達なんだ、、、違うか。

「メーン」いい言葉じゃないか。
なんか好きだ。

これを読んでくれたあなた
「サンキューメぇーーン」!


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