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登山家 平出和也さんの生き方から想うこと

夏の忙しさを良い理由にしばらくnoteの記事更新が滞ってしまいました。知人のSNS投稿で知った平出和也さんという登山家の登山中の滑落事故死。現在NewsPicksでの対談を無料公開で視聴できます。

恥ずかしながら平出さんのお名前をこのニュースで初めて知り、対談をお聞きしました。文字通り命をかけてチャレンジした世界二位の標高を誇るK2の未踏ルート。平出さんがどのような想いで登山に挑んでいたのか、その人生観に感銘を受けました。
今回は平出さんの対談をお聞きして感じたことを書かせていただきます。
登山の話だけでなく、自分はどう生きるか、とても心動かされるお話です。ぜひ皆様お聞きください。


平出和也さんについて

平出和也さんの経歴について少しだけご紹介します。
1979年生まれ長野県出身。
2001年ブータンのクーラ・カンリ東峰の未踏ルート踏破を皮切りに、
世界の未到ルートを果敢にチャレンジ。
登山界で最も名誉とされるピオレドール賞を日本人で最多の3度受賞。
自らが登山家であり、プロカメラマンとして石井スポーツに所属されていました。
こだわりである未到ルートの開拓、未踏峰の登頂が彼の代名詞であるようです。

未踏峰へのこだわり

平出さんが22歳(2004年)、まだSNSやGoogleマップも発達していない時に、地図を印刷し繋ぎ合わせ大きな地図を作成したそうです。人が行ったことのある山にマーキングして、行ったことのない空白の場所を確認したそうです。

未踏峰=人がいけない理由がある。なぜ未踏峰なのか、本当にそうなのか自分の目で見て答え合わせをしたい。そこにこそ魅力が詰まっていてワクワクするという気持ちでパキスタンに旅に出たのが始まりだそうです。
しかし、この登山中に山頂への登頂を果たしますが、下山中に凍傷で足の指を失います。この失敗から山頂への登頂だけでなく生きて下山するところまでが登山だという認識を強く持ち、新しい挑戦の準備を始めていくことになります。自分の行ったことに対して全部責任が返ってくるこの経験が、平出さんの成長に大きく影響を与えることになったそうです。

平出さんの失敗から学ぶこの経験は、命がかかっている挑戦の中で、次は失敗できない、しっかり準備をしなければならないと、あらゆる感覚が研ぎ澄まされていったのだと思います。

未知への挑戦への綿密な下準備

山頂から生きて帰るための情報収集と準備計画はかなり綿密に行われていました。未踏峰のルートであればなおさら情報がなく、インドの図書館に行き気象データなどを収集し、自分でグラフを作成し、登頂するのにベストのシーズンを予想したそうです。
また、これまでの登山での経験から、どの装備をどれくらい持っていくべきか、全く不要だったものは存在しないまでに必要最低限に装備をそぎ落としていったそうです。
登頂することは、準備していたことの答え合わせを一つ一つ行っていくことだとおっしゃられていました。

そして、もう一つ平出さんのおっしゃっていた言葉の中で感銘を受けたのは、「成功した時こそ背後に潜む小さいミスに目を向けるためにふりかえろう」ということです。うまくいっている時に思わず気を抜いてしまいますが、その時こそ気を引き締め、リスクの目を摘んでいこうという見習うべき隙のない姿勢ですね。

予測できない世界へ挑戦することは、予測する、実践する、ふりかえり改善するというサイクルを精度高く高速で回していく必要があったのだと思います。このことはまさに登山だけでなくビジネスや普段の生活にも通ずることだと思います。

登山家としてだけでなく社会人として求められる存在でならなければならない

登山ルートの下調べや、体力トレーニングなど、登山に纏わる活動や準備だけやっているのが登山家ではなく、しっかりと社会と繋がり、お金を稼げなければならないというのがポリシーだそうです。

プロカメラマンとして、平出さんがいないと成立しないテレビ番組があり、そのポジションを作り上げていったことで、登山活動を一過性のものでなく、細く長く続けられるようなライフスタイルを築いたというお話でした。

このお話も好きなことを仕事にしている私にとっては深く頷けるお話でした。好きなことを継続して行うには、社会から求められないと自己満足になってしまいます。そこをしっかりと意識できるか、とても重要な視点ですね。

登山達成時に感じることは「空白」

対談の最後に「登山達成時の感情は?」と問われ、平出さんが答えた言葉は「空白」でした。
登山を成功させるために全てをかけ、準備し、思いを馳せ、達成した際にはそれが終わってしまうという感情から心が空っぽなるそうです。そこまで集中して、時間もお金も気持ちも注ぎ込めるものが皆さんにはあるでしょうか。未踏峰へのこだわりを持つ平出さんのお話には、人生をより濃密に生きるためのヒントがたくさんありました。

たくさんの情報や物が溢れる現代の中で、自分が本当に夢中やがむしゃらになれるものは何なのか、見極め行動する力が必要です。そして、その反動が空白なのだとするのであれば、自然の中での活動をした後に空白を感じられるような機会や場にしていく必要があるのだと感じまいました。

一方で、綿密な計画や想像を働かせながらも、それをも凌駕する自然の力は、人間がコントロールできない世界であることを改めて痛感する出来事でもあります。
平出さんからのお話からたくさんの学びをいただき、これからの人生の糧にさせていただくとともに。
平出さん、パートナーの中島さんお二人のご冥福を心からお祈りいたします。

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