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御徒町のサウナ「プレジデント」を復活させたキメラ戦術

私が御徒町のサウナ「プレジデント」(以下プレジ)に初めて行ったのは2016年12月頃だった。サウナ王こと太田広氏が読売テレビの「ワケあり!レッドゾーン」にて、今ではおなじみの"オロポ"が飲める施設としてプレジを紹介していたことがきっかけだった。

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その当時、初めて行った感想。率直に、二度と行くか!と思った。

サウナ室のドアはガバガバで熱が漏れているし、水風呂は22度前後でぬるく塩素臭も強い、全体的にこれといった特徴が無い。その上、1回入るのに2000円前後の料金設定だった(価格はうる覚え)。徒歩圏内にある「北欧」が3時間1000円(当時)で高いクオリティを提供していたので、当時はこれ以上通うメリットを見出せなかった。

しかし、2019年11月の現在。プレジは私にとって最も好きなサウナ施設のうちの1つとなった!マンガ「サ道」2巻の巻末企画におすすめ施設としてプレジのコメントも寄稿させていただいた。

大規模なリニューアルをせずとも、工夫とアイデアの積み重ねで着実に素晴らしい施設へと進化していった。その軌跡を顧客視点から分析してみたいと思う。

プレジデントがとった改善策一覧

プレジはどうのようにして生まれ変わったのか。私が見てきた中で、特に顧客の満足度を高めた施策を10個あげてみる。

#1 3時間1100円のショートコースの設置
#2 水風呂のデフォルト温度を15度に
#3 サンゴや珪藻土を用いた濾過システムの水風呂水質改善
#4 休憩椅子の設置・増加
#5 しきじlikeの灼熱「薬草スチームサウナ」の開始
#6 サウナストーブ直前の焦熱シートの設置
#7 レストランの食事のクオリティアップ
#8 ワーキンギスペースの設置と館内フリーwifi 
#9 イベントの実施。レジェンドゆう、クリスマスピアノコンサート、ヒバサウナ
#10 クセの強いTwitter運用

#1 3時間1100円のショートコースの設置
御徒町・上野エリアは、北欧やセンチュリー、おもてなしお宿などが並ぶサウナ激戦エリアと言える。その中で、特に北欧の価格を意識したのだろうか、まず価格面での不利を無くすため、3時間1100円(12:00〜21:00入場)を導入した。消費増税後、北欧の3時間プランが1400円に上がったが、プレジはまだその価格を維持している。

#2 水風呂のデフォルト温度を15度に
チラーを導入したのか、22度前後が水風呂が安定的に15度前後キープするよになり、より快適な温冷交互浴を楽しめるようになった。

#3 サンゴや珪藻土を用いた濾過システムの水風呂水質改善

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長崎 佐世保のサウナ サンで設置されている珪藻土や木炭、サンゴを用いら独自の水風呂濾過システムを採用し、塩素臭を軽減し、肌触りが気持ち滑らかな水質を実現した。

#4 休憩椅子の設置・増加
水風呂後の休憩スペースとして、浴室内に椅子を4つ追加。

#5 しきじlikeの灼熱「薬草スチームサウナ」の開始
プレジが再評価されたきっかけになった。静岡県のサウナしきじの薬草サウナの香りを再現し、スチームサウナの蒸気量・湿度を向上させ、アッツアツの水滴滴るスチームサウナを実現させた。

#6 サウナストーブ直前の焦熱シートの設置

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プレジのサウナは、90度前後で遠赤外線ストーブのやや乾燥気味のセッティングなのだが、ストーブのデカさは上野エリア随一。その強みを生かして、ストーブの真ん前にベンチを設置し、背中を焼くように身体を温めることができる「プレ八幡」という、レインボー本八幡をオマージュした焦熱シートを設置した。

#7 レストランの食事のクオリティアップ

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レストランの食事のクオリティがとんでもなく向上した。おすすめは牛バラカレー。生ビールはジョッキ自体がキンキン冷えた状態で提供され、麺料理に関しては浅草開化楼の麺を使用するこだわり。アイスシェイクもおじさん達の食欲をくすぐる。クオリティを維持するためか、レストランの営業時間を制限している。

#8 ワーキングスペースの設置とフリーwifi

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昨今のコワーキングサウナの流れを取り入れ、手作り感満載のワーキングスペースを新設し、wifiも全館パスワード無しで接続できる。PCを充電できる電源が増えたのは純粋に嬉しかった。

#9 イベントの実施。レジェンドゆう、クリスマスピアノコンサート、ヒバサウナ

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プレジはサウナ室の「広さ」も上野エリア随一である。劇場のようなレイアアウトになっているため、アウフグースイベントとも相性が良い。レジェンドゆう氏を招いたアウフグースを定期的に開催。最近では「トワイライトヒーリング ヒバ サウナ」という、照明と暗くし、テレビを消し、温度を少し下げ、ヒバの香りとゆったりとしたジャズが漂うリラックス空間を演出するサウナイベントも開催するようになった。

また、昨年のクリスマスには、エントランスでピアノコンサートを行う愛嬌のある?イベントも開催された。

#10  クセの強いTwitter運用

味のある文体と、温浴施設のアカウントでありながら、時たまに政治への意見を具申してしまう独特の運用方針・投稿内容から、隠れファンが多くいるアカウントである。

他の施設を徹底的にオマージュする「キメラ戦術

サウナ王・太田氏によれば、かつてプレジは「接客が優れたことで有名なサウナ」だったようだ。その接客術を学ぶために、全国の多くの温浴施設が視察にきていたそうだ。当時は施設内にクラブも併設されていたらしい。

そんなプレジが現代に蘇ったのは、全国あらゆるサウナ施設の優れたポイントをオマージュしてつなぎ合わせる、まさに「キメラ」のように施策を実行したことが大きい思う。しかも、大きな投資をすることなく、現実的な範囲で実現し、確実に顧客の心を捉える。オマージュしている施設名を大々的に公表しているので、その施設へのリスペクトも伺え、好感がもてる。

静岡しきじの薬草、佐世保サウナサンの濾過システム、レインボー本八幡の最上段、、、

おじさん達の砦であり続けて欲しい

「北欧」は若者たちで賑わい、それはそれで喜ばしいことだが、おじさんたちが堕落できる居場所(サウナ)が減りつつある。

プレジデントはおじさんが堕落できる数少ない楽園となった。チャラついた格付けに惑わされることなく、今の独自の路線を積み重ねていけば、もっともっとファンが増えていくと思う。個人的なわがままを言うと、これ以上混んでしまうのは、ほんの、ほんの少しだけ嫌だけども(などと言いつつこの記事を書いているのだが)、おじさん達の砦であり続けて欲しい。

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