【猫】腎不全の高齢猫と暮らす
腎不全のおさらい
猫の寿命が一昔前に比べて飛躍的に伸びたせいか、高齢猫は腎臓に何らかの不具合を抱えていることがほとんどだと思います。たまに、SNS等で20歳を超えるようなご長寿猫さんが、ふっくらした顔つきのふわふわの毛で食欲もしっかりあるような画像を見ると奇跡のようだと思ったりもします。
我が家は三兄妹ともに17年近く、大きな病気をほとんどすることもありませんでしたが、結局、2人は17歳半で腎不全からくる全身症状で虹の橋を渡り、残りの次男猫は今も腎不全と闘病中です。
腎不全は猫の加齢と共に発病しやすい病気ですが、初期には目に見える兆候はほとんどありません。多くの方が、定期的な健康診断で腎臓のBUNやクレアチニンの数字が高いと指摘されて初めて気が付くのではないでしょうか。腎臓機能が落ちてきた時、飲水量や排尿量が多くなりますが、日々暮らしているとその増加には気づきにくいものです。我が家のように多頭飼いだと判断はもっと難しいかと思います。
しかし、7~8歳以降のシニア期に入った猫について、以下の2点については、個体ごとにある程度は把握できるのではないかと思います。
体重が減ってきた
体重が減ってきた時は、血液検査の結果にも注意してください。家猫の多くは成長していくなかでどうしても肥満の方向に進んでいき、多くの猫飼いさんたちは猫たちの減量ダイエットに取り組んでいると思いますが、体重が減ったと単純に喜ばないでください。
確かに、低カロリー食やシニア食に変えることで、健康的に脂肪が落とせている結果かもしれません。ただ、食餌の影響ではなく、摂食量そのものが減っているとか、飲水量に比べて排尿量が多くなっていることも多いにあり得ます。特に、飲水量が減って排尿量が多くなっている場合は、脱水状態になっており、この場合は体重がスコーンと落ちます…。血液検査等では、他の数値で脱水傾向にあるかも分かりますので、BUNやCrの値だけでなく、総合的にみるようにする必要があります。
元気がなくなる
歳をとったから運動量が減るということもありますが、腎臓が悪くなって、気分が悪くて動きたくないのかもしれません。慢性的な脱水症状になると、腎臓の濾過機能が落ちて、血液中の老廃物等の有害物質の濃度が高くなります。BUNの数値はこれですね。腎臓は、老廃物をなんとか排出しようと多量の尿を出すようになりますが、飲水量が伴わないと脱水が進むことになります。
私のブログではしつこく書いてますが、「排尿量 > 飲水量」は脱水になります。超簡単な公式です。
脱水症状を経験したことのある方はご存じでしょうが、頭痛はするし気持ち悪いし、なんにもする気がなくなりますよね…脱水と血液中の老廃物が、猫の元気を奪っているのかもしれません。
なんでも病気に結び付けていると飼い主も参ってしまいますが、どこかで気にかけてあげてください。元気がないだけでなく、吐くことが増えていないか、毛艶が悪くなっていないか、頬がこけてきていないか…
「歳だから寝てばかりいる」で片づけることなく、「どこか悪いんじゃないか」と考えた方が、その後の猫のQOLを高めることに繋がります。
腎不全の兆候
人間でもBUNが高くなる高窒素血症になると、様々な不快な症状が出るそうです。
食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、消化管出血、口内炎、頭痛…
「腎不全」と一言で言いますが、こういう体調だと元気で過ごすことの方が難しいと思います。
シニア期に入った猫が寝てばかりいるとか、摂食量が減った、突然吐くことが増えた、口をくちゃくちゃ鳴らしているということが増えた…という際には、腎臓が悪くなってきている可能性が高いです。
加齢とともに腎臓機能が弱った猫と元気に過ごすためには、血中の老廃物等を減らすのと同時に身体の脱水を避け、とにかく腎臓を休めてあげることです。
猫はシニア期になると、幼猫期や成長期に比べてタンパク質を多く必要とはしません。むしろ、過剰なタンパク質は、分解の最終生成物であるBUNを増やすことになります。動物が生きていくためにはタンパク質は重要な栄養素であることには間違いありません。ただ、シニア期に入ると過剰なタンパク質の摂取はむしろ望ましくないのです。
腎不全の進行を遅らせる
腎臓の細胞はどんどんと死んでいくようで、再生しないものだそうです。そして新たには増えません。基本的に減り続けていく、腎臓とは消耗品のような臓器です。なので大事にしてあげないといけません。
脱水を避ける
日頃の生活では、飲水機会を増やすために水場を増やすとか、ドライフードだけでなくウェットフードを与えるなど、体内に水分が入る工夫を。度重なる嘔吐や下痢により、重い脱水症状がみられた際には、速やかに皮下点滴等により、体内の水分量を確保してあげてください。(こういう時にシリンジ等で無理に飲ませると、吐いたり下痢したりすることもあります)
血中老廃物の生成を減らす
BUNは過剰なタンパク質摂取の影響が考えられるため、カリウムやリンも少ない腎臓に配慮したフードを選び、最終的には腎臓サポート食等の低タンパク質療養食への切り替えがもっとも有効です。
フードについては、正直、色々な意見が多すぎますし、過激な発言をされる方も多数いらっしゃいます。獣医さんよっても考え方が異なるようです。が、最終的には飼い主側が自己責任で判断することだと思います。
他の病気にもならないようにする
腎臓機能が低下すると免疫力が落ちるため、健康な時にはかからないような風邪を引いたり胃腸炎を起こしたりする可能性が高まります。体調を崩すとお腹を下したり吐いたりすることも増えますが、これは脱水を引き起こしやすいことから避けたい状態です。体調を崩した際は、なるべく早く受診の上、治療をしてあげてください。
亡くして初めて分かること
遅きに失したことですが、猫を亡くして気づくこと、分かることがたくさんありました。まだまだ元気だったけど血液検査で腎臓が悪くなりかけていることが分かっている時、取り得る手段はまだまだたくさんあったのです。
猫トイレのオシッコ玉が大きくなったとか、毛玉ゲロでない嘔吐が増えたとか、ブラッシングしていると毛割れが目立つようになったとか、今になって思えば腎不全の進行を示すサインを見落としていたように思います。その際、適切な打ち手を施していれば、もう少し元気に、かつ長生きできたと思います。
猫は人間と違って「シンドイ」とは言いません。むしろ体調の悪さを隠します。猫が進行性の病気にかかりつつあるかどうかは飼い主が汲み取るしかありません。
これらの失敗を、残された次男猫に繰り返さぬよう今も試行錯誤を続けています。読者のなかには、「腎不全の猫」の情報を集めておられる方も多いと思います。少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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