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片仮名を使う場面

日本語を学ぶ外国人が戸惑うことの一つが、漢字、平仮名、片仮名の使い分けなのだそうです。なかでもよくわからないと言われるのが、どういった場面で片仮名を使うのか、ということ。

日本語の先生が「外国語を書くときに片仮名を使うのですよ」と説明すると、「じゃあ、『ゴミ』は外国語ですか?」と問われて答えに窮した、という話を聞いたことがあります。

主に漢字と平仮名との交ぜ書きが標準的な表記体系として確立している日本語において、片仮名の用法はいささか特殊といえます。「外来語に使う」というのは、片仮名の数ある用法の一例に過ぎず、厳密な定義についてはもう少し幅広く考える必要があります。その定義は、一言で言うと「特定の形態素を際立たせる」ことです。

形態素(morpheme)とは、意味を担う最小の言語単位のことです。「山」「川」「海」など、それ自体で単語を構成するものの他、「お茶」の「お」、「国際化」の「化」などの接辞や、「教える」の「る」などといった用言の活用語尾なども含まれます。

欧米語などのように分かち書きをしない日本語では、漢字と平仮名の使い分けで形態素をある程度識別することはできますが、それだけでは不十分な場合があります。そのようなときに、片仮名が使われるというわけです。

以下に、片仮名が使われる主な用法をまとめました。

外来語

コンピューター(computer)
キムチ(김치)

中国語由来の語は原則として漢字で書きますが、慣用により片仮名で書くものもあります。

ラーメン(拉麵)
チャーシュー(叉燒)

漢字の音読み

ヒッキョウ(畢竟)
コウキョ(薨去)

同音異義語により表記を確定できないときにも、片仮名が用いられます。

(参拝を)やめなさいと、ゲンメイしました。

──唐家璇・中国外交部長(2001年当時)。日中外相会談で首相の靖國神社参拝について記者団に問われて。

当時、「言明」と「厳命」のどちらなのかが取り沙汰されました。

擬音語・擬態語

ゴロゴロと雷が鳴った。
夜空の星がキラキラと輝いていた。

生物の和名

ニホンザル
ゲッカビジン

特定の語を地の文から区別する

漢字にすると難読である、相当する漢字が不明あるいは存在しない、特殊な意味づけ、強調の意図、卑俗な用法などの場合に、片仮名で表記されるケースです。「ゴミ(塵/芥)」もこの用法に入ります。

ハレ(霽れ)とケ(褻)
キタヤマさんから電話がありました。
ヒロシマとナガサキ
モノとサービス
マジでムカつく
バカがウツる

「ムカつく」には擬態語の要素も認めることができます。


英文では外来語や強調する語をイタリックで表記する習慣がありますが、上述の片仮名の用法もこれに似たようなものだといえるでしょう。いずれにしても、共通するのは、漢字と平仮名が主体の文章において、片仮名の部分が異質であると読み手に認識させる効果を狙ったものだということです。

「ココハドコデスカ?」というふうに、日本語の非母語話者による片言の発話を全て片仮名で表記するのも、その異質さを利用したものです。

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