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コロナ「渦」

最近の感染症をめぐる情勢により、よく見かけるようになった誤字です。新聞の見出しでもよく間違えていて、「note」では「#コロナ渦」というタグまでできている始末です。

水部(さんずい)の「渦」ではなく、示部(しめすへん)の「禍」が正解。

「禍」は訓読みで「わざわい」です。「禍(わざわい)転じて福となす」でお馴染みですね。

音読みではカとなります。「再び戦争の惨禍(さんか)が起ることのないやうにすることを決意し、……」という日本国憲法の前文を連想する人も少なくないのではないでしょうか。

既存の語彙には、「戦禍」「戦渦」のように「禍」「渦」両方の字が使われる例はありますが、前者は「戦争による災難」(『日本国語大辞典』精選版)、後者は「戦争によって起こる混乱」(同)と、意味合いが異なります。

「混乱」という意味で「コロナ渦」という表記も通用するではないかという意見もありそうですが、さすがに無理があると思います。後ろに「渦」のつく熟語をすぐに思いつく人がどれだけいるでしょうか。それよりも、「惨禍」「戦禍」「舌禍」などの熟語を思い浮かべながら、PCに「ころなか」と打ち込んで変換しようとして、うっかり「渦」で確定させてしまった、というのが実際のところでしょう。

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