「がえんぜず」
承諾しないという意味ですが、本来は漢文の「不肯」を訓読した「かえず」または「かえにす」です。
「かへず(かえず)」は、動詞「肯ふ」の未然形に打消の助動詞「ず」が付いたもの。
「かへにす(かえにす)」は、動詞「肯ふ」の未然形に、上代の打消の助動詞「ぬ」の連用形「に」と、サ変動詞の「す」とが結びついたものです。
さす竹の皇子の宮人ゆくへ知らにす
──『万葉集』第二巻167
打消の助動詞「ず」は、この「にす」から変化したといわれています。
「かへにす」が変化して「がへんず(がえんず)」という言い方も発生しました。
したがって、「がえんず」自体に否定の意味が既に含まれているのですが、「に」の打消の意が忘れられたことで「がえんず」が肯定だと誤認され、それを否定するために未然形「がえんぜ」にさらに打消の助動詞「ず」が付いたのが、「がえんぜず」です。
皆様からの尊いご寄付は、今後の執筆活動に活用させていただきます。なにとぞご支援を賜りますようお願い申し上げます。