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春入学か秋入学かではなく、両方やればいい

感染症による一斉休校が長期化するにつれ、大学の入学時期を秋にずらそうという気運が高まってきた。

秋入学が一般的な欧米に合わせれば、留学の促進につながるという利点がある一方、関係法令の改正や会計年度の見直しをどうするのかといった点が指摘されている。

大学の国際化に寄与する秋入学移行には確かにメリットがある。しかし、議論の発端に立ち返るなら、それは根本的な解決策といえるだろうか。将来もし再び一斉休校を余儀なくされるような事態が起きたとき、また入学時期をずらすというのでは、単なる弥縫策で終わってしまう。

この際、春入学のままか秋入学に変えるかといった二者択一ではなく、両方取り入れて柔軟性をもたせた運用にすることを提案したい。つまり、大学への入学機会を年間で複数回設けるのである。

法改正の問題なら既に解決済みである。というのも、義務教育などとは異なり、2008年の学校教育法施行規則改正で、大学の入学時期については学長の判断で定められるようになったからだ。日本ではほとんどの大学が2学期制を採っており、一つの授業は一つの学期の間で完結するようになっているから、学期の区切りで入学機会を新たに設けるのは可能なはずである。現に、放送大学など通信制の大学の多くではそうなっている。

入学時期をずらすのではなく、4月入学を据え置いたまま別に設けるだけだから、留学生の受け入れという利点を享受したまま、社会への混乱も抑えられるだろう。勿論、入学時期が複数回あるということは、卒業時期も複数回あるということになる。とはいえ、各大学から3月以外にも卒業生が出るようになれば、企業もそれに合わせて採用活動を行うであろうから、学生にとってはむしろ都合がいい。なにせ、今は年に1回しかない就職機会が増えるのである。もしかしたら、通年採用への地平を開くきっかけとなるかもしれない。

入学機会が年に複数あれば、学年という観念も稀薄になるだろう。そうなれば、休学や留年に対するネガティブなイメージも払拭される。個々人の事情に合わせて、4年以上在学することは当然あっていい。

今回の事態を、生活様式の見直しにとどまらず、多様な機会を創出する契機としたいものである。

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