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「健全な精神は健全な肉体に宿る」?

スポーツ好きの人にとっては残念ですが、「健全な精神は健全な肉体に宿る」は勘違いです。

原典は古代ローマの詩人ユウェナリス(Decimus Junius Juvenalis、67?―138?)の『諷刺詩集』(“Saturae”)で、その中にある次の一節が元の文章です。

orandum est ut sit mens sana in corpore sano.
(健全な肉体に健全な精神を与えたまえと祈るがいい)

「orandum est ut ...」で、ut以下のことが祈られるべきである、というラテン語の構文となっています。

「mens sana in corpore sano」で「健全な肉体に健全な精神が」。その前にあるsitは、英語のbe動詞に相当するsumの接続法の形です。接続法は英語の仮定法に当たるもので、つまり反実仮想です。よって、ut以下は「健全な肉体に健全な精神があるように」となります。

ユウェナリスがいた当時のローマは、パークス・ローマーナと呼ばれる帝国の最盛期で、そこでは頽廃的な雰囲気が蔓延しており、特に強健な肉体の持ち主ほどその性根は堕落するとしたものだったといいます。ユウェナリスはその様子を目の当たりにして、「健全な肉体には健全な精神が是非とも宿ってもらいたいものだ」と嘆いたのです。

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