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言葉の覚え書き

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#誤読

『言葉の覚え書き』目次

【第1部 表記】組版右横書き 文体口語体と文語体 常体と敬体 能動と受動 文のねじれ 「べき止め」 「さ入れ表現」 可能の表現 助動詞「れる」「られる」 可能動詞 「ら抜き言葉」 用言の活用と音挿入 改行・段落改行と段落 文字種日本語の文字体系 全角と半角の使い分け アルファベット、アブギダ、アブジャド ギリシャ文字 Unicodeについて ヘボン式ローマ字 漢字常用漢字 同音の漢字による書きかえ 字体・字形 仮名現代仮名遣い 「じ」「ず」と「ぢ」「づ」 漢語に続

読めますか?──「聖路加」

「せいろか」は誤り。正しくは「せいルカ」 聖路加国際病院の英称St. Luke’s International Hospitalからわかるように、「路加」とは新約聖書に登場する聖人ルカの漢字表記です。使徒パウロの協力者の一人で、『ルカ伝福音書』『使徒行伝』の著者とされています。 『コロサイ人への書』に「愛する醫者ルカ及びデマス汝らに安否を問ふ」(第4章第14節)という記述があることから、ルカは医者であると信じられており、その守護聖人として崇められています。

読めますか?──「陶冶」

トウチ、トウジではありません。「冶」の字をよく見てください。さんずいではなく、にすいになっていますよね。 正解はトウヤ。陶器や鋳物を作ること。転じて、もって生まれた才能を育て上げること。 「冶」の音読みはヤしかありません。「鍛冶」は「かじ」と読みますが、これは熟字訓で偶然そうなっているだけであって、「冶」を「じ」と読んでいるわけではありません。

読めますか?──「月極」

ゲッキョクではありません。「つきぎめ」です。月単位で契約すること。 「極め」には、「約束の日。期限の日」(『日本国語大辞典』(精選版))という意味があります。

読めますか?──「上意下達」

組織などで上位の意向や命令を下位に伝えること。トップダウン。 ジョウイカタツと読みます。ジョウイゲダツではありません。 対義語は「下意上達(カイジョウタツ)」です。

読めますか?──「一世一代」

一生にただ一度。イッセイチダイと読みます。イッセイイチダイは誤り。 「世」の字音は、セが呉音、セイが漢音です。 呉音は、日本に伝来した字音のうち最も古いもので、仏教関連の用語に多く見られます。「一世」をイッセと呉音で読むのはやはり仏教関係で、過去、現在、未来の「三世(サンゼ)」の一つのこと。ここから、一生涯の意味を指すようになりました。 これに対して、漢音でイッセイと読む場合は、その時代、当代という意味になります。「一世(イッセイ)を風靡(ふうび)する」はこの用法になり

読めますか?──「旗幟鮮明」

立場や主張が明確であること。キシセンメイと読みます。 キショクセンメイは誤り。「幟」の字音はシのみです。

語学にタンノウな人

才能が優れているという意味の漢語としては、カンノウと読みます。そもそも「堪」の字音はカンしかないのですが、「堪能」がタンノウと読まれるようになったのには、少々ややこしい経緯があります。 「堪能」には、他に満足するの意がありますが、『日本国語大辞典』(精選版)などによると、これはもともと「足(た)んぬ」がなまったものとのこと。これに対する当て字が「堪能」なのですが、この際「湛(タン)」を当てるつもりが「堪(カン)」と取り違えられたと考えられています。 そして、満足するの意で

読めますか?──「懶惰」

なまけること。「嬾惰」とも。 ランダと読みます。ライダと読むのは誤り。 「懶」をなまけるの意味で用いるときは、ランと読みます。ライと読んだ場合は、嫌う、憎むの意になります(「憎懶(ゾウライ)」など)。

読めますか?──「截然」

サイゼンと読むのは誤り。正しくはセツゼン。 区別がはっきりしているという意味です。 「截」は、切る、断つ。ここから、断ち切ったように整えるという意味が派生しました。 「截」を使った熟語には、他に「直截(チョクセツ)」などがあります。

「煙(けむり)に巻く」

相手を惑わせるという意味の「煙に巻く」は、「けむにまく」と読みます。

「『きこつ』が折れる」?

「気骨」には、「きこつ」と「きぼね」の2つの読みがあり、読み方によって意味が変わってきます。 音読みで「きこつ」と読む場合は、不屈の精神、気概といった意味になります。 「きぼね」と重箱読み(熟語を音訓の順で読むこと)すると、心づかい、気苦労の意味になります。したがって、表題の慣用句は「気骨(きぼね)が折れる」となります。

読めますか?──「定石」

テイセキではありません。ジョウセキと読みます。 物事に対する決まったやり方。もともと、盤上遊戯において、古くから伝えられている最善の手の打ち方のことを指し、石に見立てる囲碁などでは「定石」、駒に見立てる将棋などでは「定跡」と書きます。

「したつづみ」? 「したづつみ」?

「舌鼓」の「鼓」とは、手で打つ和楽器のことで、「つづみ」と読みます。したがって、「舌鼓」は「したつづみ」です。 室町期の日本語の音韻体系が反映された『日葡辞書』(1603年)にも、「Xitatçuzzumi (シタツヅミ)」と記されています。