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言葉の覚え書き

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#慣用読み

『言葉の覚え書き』目次

【第1部 表記】組版右横書き 文体口語体と文語体 常体と敬体 能動と受動 文のねじれ 「べき止め」 「さ入れ表現」 可能の表現 助動詞「れる」「られる」 可能動詞 「ら抜き言葉」 用言の活用と音挿入 改行・段落改行と段落 文字種日本語の文字体系 全角と半角の使い分け アルファベット、アブギダ、アブジャド ギリシャ文字 Unicodeについて ヘボン式ローマ字 漢字常用漢字 同音の漢字による書きかえ 字体・字形 仮名現代仮名遣い 「じ」「ず」と「ぢ」「づ」 漢語に続

読めますか?──「鼻腔」

ビクウは医学における慣用読み。 本来はビコウ。「腔」を漢音でコウと読むのは、「口腔」と同じです。

拳銃1チョウ

鋤、鍬、銃など細長いものを数えるときの助数詞チョウを「丁」と書きますが、これも同音の漢字による書きかえ。元の表記は「挺」。 「挺」には、真っ直ぐな棒、杖という意味があります。なお、字音はテイで、チョウは慣用音です。

語学にタンノウな人

才能が優れているという意味の漢語としては、カンノウと読みます。そもそも「堪」の字音はカンしかないのですが、「堪能」がタンノウと読まれるようになったのには、少々ややこしい経緯があります。 「堪能」には、他に満足するの意がありますが、『日本国語大辞典』(精選版)などによると、これはもともと「足(た)んぬ」がなまったものとのこと。これに対する当て字が「堪能」なのですが、この際「湛(タン)」を当てるつもりが「堪(カン)」と取り違えられたと考えられています。 そして、満足するの意で

読めますか?──「截然」

サイゼンと読むのは誤り。正しくはセツゼン。 区別がはっきりしているという意味です。 「截」は、切る、断つ。ここから、断ち切ったように整えるという意味が派生しました。 「截」を使った熟語には、他に「直截(チョクセツ)」などがあります。

本のソウテイ

書物を綴じて、表紙などの外形を装飾すること。「装訂」が本来の用字。「訂」は綴じるという意味です。 『日本国語大辞典』(精選版)によると、明治末期に装本の美術工芸的要素が強まるにつれ、「製本」にかわって装い釘(てい)じる意の中国風の熟字「装釘」が使われたそうです。 「装丁」は同音の漢字による書きかえ。 「幀(トウ)」は絵画のことで、「装幀」は書画を掛け物や額に仕立てることを指しますから、書籍のデザインの意で用いるのは誤りです。なお、この場合のテイは慣用音です。

読めますか?──「惨敗」

漢和辞典で「惨」を引いてみましょう。ザンは慣用音、サンは漢音となっていると思います。 「惨敗」はサンパイがもとの読み方。ザンパイは戦後になってから登場した読み方で、戦前はもっぱら清音のサンパイでした。 現在は各種国語辞典もザンパイの読みを認めていますが、『広辞苑』(第七版)は冒頭に「正しくはサンパイ」と註記を付けています。

読めますか?──「出納」

お金や物の出し入れのこと。スイトウと読みます。 「出」のスイという字音は、「出師(スイシ。軍隊を繰り出すこと)」など、他動詞「いだす」意の用法の一部に限定された読み方(『全訳漢辞海』第四版)。「納」をトウと読むのは慣用音です。 『日本国語大辞典』(精選版)によると、平安時代の辞書『色葉字類抄』や節用集の類ではシュツナウと読んでおり、「金銭の出し入れに『すいとう』と読むようになったのは比較的新しい時代になってからだと思われる」とあります。

ジョウチュウ

寄生虫であるサナダムシのことです。「条虫」は同音の漢字による書きかえ。 正しくは「絛虫」で、トウチュウと読みます。ジョウチュウは、「絛(トウ)」をジョウと読んだことによる慣用読みです。

「農薬をサンプする」?

「散布」は同音の漢字による書きかえ。正しくは「撒布」。 「撒」は「まく」と訓読みします。 「散布」への書きかえは、「撒布」の慣用読みであるサンプによるものですが、「撒水」と同様、「撒」の字音はサツなので、「撒布」はサップと読むのが正解です。

読めますか?──「浸漬」

液体の中にひたすことです。シンシと読みます。 慣用読みのシンセキは、「漬」の旁につられた誤読です。「漬」の字音はシしかありません。

「深圳」の読み方

香港に接する中国広東省の「深圳」は、日本では慣用的にシンセンと呼ばれていますが、センは「圳」の旁にある「川」に基づく誤読、いわゆる百姓読みにあたります。 漢和辞典としては最大級の『大漢和辞典』によると、「圳」の字音として、シウ/ジュ、シン、シュンが掲載されていますが、センの読みはありません。 「圳」は、広東地域において、田畑の間に水を通す小さな溝を表します。伝統的な字体ではなく、限られた地域でのみ使用される方言字です。もともと標準中国語にはない字なので、広東方言から音韻体

読めますか?──「多士済々」

タシセイセイです。 「済々(セイセイ)」は、数が多くて盛んなさまを表す畳字(同じ字の繰り返し)です。

読めますか?──「貼付」

チョウフと読みます。 「貼」の字音は、もともと漢音のチョウしかありません。「貼」という字は2010年の改定「常用漢字表」(平成22年11月30日内閣告示第2号)で追加されましたが、ここでの音読みもチョウだけです。 テンプという慣用読みは、語感の似ている「添付」からの類推ではないかと思われます。