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言葉の覚え書き

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2021年5月の記事一覧

ショクジン

「食尽」は、同音の漢字による書きかえ。元は「蝕甚」。 「蝕甚」とは、天体が最も多く欠ける状態のことです。

河口でザスする

船が浅瀬に乗り上げること。 「座州」は、同音の漢字による書きかえ。元は「坐洲」。 前回「坐礁」でもお話ししたとおり、「坐」には「座」よりも広い意味があります。 「州」「洲」はともに、川の中の陸地、土砂が堆積して水面から出ているところの意。「州」が派生して、後に「洲」の字ができました(『全訳漢辞海』第四版)。 「坐礁」は水底が岩礁などの硬い地物の場合に用い、「坐洲」は水底が砂の場合に用います(『マイペディア』)。

船がザショウする

「座礁」は、同音の漢字による書きかえ。元は「坐礁」。 「座」が専ら腰を下ろすという意味を表すのに対して、「坐」にはこれに加えて、乗り物に乗る、じっとしている、手出しできずにいるなど、より広い意味があります。

「潮時」

2012年度の「国語に関する世論調査」では、「潮時」の意味として「ちょうどいい時期」で使う人が60.0パーセント、「ものごとの終わり」で使う人が36.1パーセントという結果でした。また、年代別に見ると、20代から50代では後者の意味で使う人が4割を超え、前者の意味で使うと回答した5割に肉薄していました。 正解は前者の「ちょうどいい時期」。もともとは潮の満ち引きのタイミングのこと。ところが、「引退の潮時」のように身を引く文脈の中で用いられることが多いためか、物事の終わりの時期

キケイ児

「奇形」は同音の漢字による書きかえ。元は「畸形」。 「畸」は不揃いなさまを表します。

文字の入れ替わりにご用心

「従来から」

「従来」という語自体に「……から」の意味が含まれているので、後ろに「から」を付ける必要はありません。

作品名の書き方、こんなときどうする?──プラトンの著作の場合

プラトンの著作の翻訳は、「ステパヌス版」と呼ばれる全集が標準的な底本となっています。これは、ジュネーブの古典学者で印刷業者でもあるアンリ・エティエンヌ(1528年―1598年、ラテン語名:ヘンリクス・ステパヌス)の印刷工房が1578年に出版したものです。 ステパヌス版の全集は、一つのページのうち、本の内側にギリシャ語の原文が、外側にラテン語の対訳が印刷されていて、ギリシャ語の原文には10行毎にラテン文字が振られています。 プラトンの著作から引用する場合は、このステパヌス版

作品名の書き方、こんなときどうする?──聖書の場合

聖書とは、ユダヤ教及びキリスト教における宗教文書群の総体です。「旧約聖書(ヘブライ語聖書)」「新約聖書(ギリシャ語聖書)」という語自体はそれぞれ一般名詞として扱うため、一般の書籍とは異なって二重鉤括弧(『』)は付けません。 聖書の出典は、個々の文書単位で表記します。二重鉤括弧(『』)はこの文書名に付けます。 脚註などでは、文書名の略称も用いられます。この場合、二重鉤括弧(『』)は不要です。 聖書の文章は章と節で区分されています。引用箇所の特定には、この章と節で表示します

「苛酷」と「過酷」

「苛酷」は、無慈悲でむごいこと。 苛酷な収奪 「過酷」は、程度を超えていることをいいます。 過酷な自然環境 チェルノブイリ原子力発電所や福島第一原子力発電所の事故など、想定していた設計基準事象を超える原子力関連施設の事故は「過酷事故」と呼ばれます。

「崩折れる」?

「くずおれる」とは、衰える、衰弱するの意。漢字で書くと「頽れる」。 歴史的仮名遣では「くづほれる」なので、「おれる」は「折れる」ではありません。 したがって、崩れるように倒れる、という意味で用いるのは本来は誤りですが、今日では国語辞典にも採録されるほどに普及しています。『日本国語大辞典』(精選版)によると、「『おれる』が『折れる』の意に解されて、近世以後、意味が広がって用いられるようになった」とのことです。

準備万……

「準備万全」と「準備万端」、どちらが正しい言い回しでしょうか。 「万全」とは「すべてに完全で少しも手おちのないこと」(『広辞苑』第七版)ですから、「準備万全」に何ら誤りはありません。 問題は「万端」の方です。「万端」とは「あらゆる事柄。また、あらゆる手段」(同)を意味します。よって、「準備はあらかた(整った)」のつもりで「本番に向けて準備は万端」と体言止めにするのは構いませんが、「準備は万端です」などと断定の助動詞を付けてしまうと、「準備はあらかた……どうなったのだ?」と

「引卒」?

「引卒」ではなく、「引率」。ソツは「率」の呉音。 「常用漢字表」には、「率」の音読みとしてリツとソツが収録されています。リツと読んだ場合は割合のことを指し、ソツと読んだ場合はひきいる、導くの意を表します。

「うっとおしい」?

「うっとおしい」ではなく、「うっとうしい」。 漢字で書くと「鬱陶しい」。「鬱陶(ウットウ)」とは、気持ちが晴れないことを表す連綿語。これに接尾語「しい」を繫げて形容詞化したものです。 連綿語は漢語の一種ですが、語法上の構造はありません。2つの漢字は音を表す働きをするのみで、2音節で一つの形態素を形成します。日本語でいうところのオノマトペに相当するものです。 同種の語に、「騒々しい」などがあります。