短編作品その2

「誰だ!」
 後ろを振り返ると、街燈の光を浴びている自分の姿を映し出した影がそこにいた。
 そいつは僕と目が合うと、脱兎のごとく逃げ出した。
 逃がすまいと必死になって追いかけると、やつは暗がりの街角を曲がり、大通りへと出ると、大勢の人がごったがえす雑踏へとまぎれこんだ。
 ぜんまい仕掛けの操り人形のような、ぎこちない単純運動を繰り返す通行人が行き交うなか、とうとうやつの姿を見失ってしまった。