短編作品その4

 

 シガレットをぷかぷか吹かしているお月さまがいて、青色の煙を辺りにくゆらせている。
 私はそれを見て、遠き記憶のなかにある、白髪の髭をたっぷり蓄えた老人の姿を想起させた。
「そうかしら? あなたにはそう見えて?」
「そうだとも。君にはあれがバッハやベートーヴェンに見えるかい?」