短編作品その5
月光のスポットライトが照らし出す舞台の上。
美しいお姫さまと、凛々しい王子さまが手をとりあうなか、現れた一人の道化師。
くるりくるりと二人のまわりを廻って、手に持っていた大きな布を二人の頭からかぶせると、「さあ、御立会い!」と叫んだ。
そしてパッと布を取り外すと、あら不思議、そこに姫と王子の姿はない。
「ハハハッ、なにも不思議がることはありますまい、あの麗しいご両人は、ちゃんとおりますぞ。そら、あの天空に浮かぶ檸檬色の月をみてごらんなさい!」
実際言われたとおり月を見上げてみると、消えてしまった姫と王子とおぼしき人影が、くっきりと月に映り込んで幸せそうに手をとりあっていたのである。