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初めてバイトの子とお話したよ

こないだ、あがりが一緒だったバイトの子と駅まで話しながら帰った。
なぎさは歳の近い友だちがほとんどいなかったので、なんて話していいかちょっと困った。

その子は、店長からモリカって呼ばれてたけど、
なぎさからいきなりモリカって声をかけるのはなんだなーと思ったので、
「ねぇねぇ」から始めてみた。
そして、「ラジオなんか、聴く?」って尋ねた。

すると、モリカは「うん、結構聴くよ、radikoで」と返ってきた。
ヨッシャーって声にならない声をあげたつもりになって、
一気に話し始めた。

「なぎさもよく聴くんだ。リクエストしたり、いろんなリスナーさんからのリクエストで、今まで知らなかった曲に出会ったりするもんね」
「ボクも誰かのリクエスト曲で、いい曲を見つけたりしてるよ」
あぁ、この子、自分のこと「ボク」っていうんだ。

「最近、なんかいい曲あった?」となぎさが尋ねると、
モリカは、ちょっと興奮気味に語り始めたので、びっくり❗️
「なぎさも知ってるでしょ?パリピ孔明!」
あっ、なぎさって呼んでくれた。
店長がなぎさのことをそう呼ぶの、知ってたんだ。
うれしい。
でも、 パリピ孔明 知らなかった。

「パリピ孔明って曲?」
「パリピ孔明は元は漫画、でもTVアニメやドラマにもなったんだ。映画にもなったよ。」

「そっかー、で、曲は?」
「アニメの主題曲になってたチキチキバンバン、いいよ。聴いてみて」
「チェック、してみるね」

「そうそう、アニメも面白いよ……。」

「三国志とか、諸葛孔明とか、よくわかんないけど、234年に死んだ中国の武将が、渋谷で生まれ変わるって発想がすごい。しかも、歌姫をめざす女の子をプロデュースしていくなんて❗️」

モリカが聞いてくれた。
「なぎさは、どうなの? どんな曲聞いてるの?」
「私、最近聞いていた曲は、上白石萌音さんの 懐かしい未来 や ヒプノシマイの神宮寺寂雷さまの 君あり故に我あり なんかかな……」

すると、モリカが「上白石萌音の妹の上白石萌歌が 、実写版TVドラマのパリピ孔明に出てくるEIKO役をやってるよ」
「えぇー、そうなんだ。上白石姉妹ってすごいのね。」
「TVはもう、終わっちゃったけどね……。」とモリカ。

そして、
続けて「なぎさは、ヒプマイの神宮寺寂雷(じんぐうじじゃくらい)のファンなの? ボクはね、伊弉冉 一二三(いざなみ ひふみ)の パーティーを止めないで が好き❤️ パリピ孔明じゃないけど、パーリーピーポー、パーティ好きな人たちのお話っていいじゃない。 それに一二三の座右の銘 今日という日は、残りの人生の最初の日である ってのもいいな」

「えっ? 今日という日は、残りの人生の最初の日である だって? その言葉、どっかで聞いたことある。 う〜ん……あっ、ちょっとちがうかもしれないけど 今の自分がこれからの人生で一番若い って」
「その言葉、だれのなの?」
「だれのだか知らないけど、近所のお寺さんの掲示板に貼ってあった言葉なの、それにそこでとても印象に残る出来事があったの」
「何? 何があったの?」

「今までラジオネームとリクエスト曲やメッセージでしか知らなかった人とその言葉の前で会っちゃったの」
モリカは目を丸くして
「何それ? ラジオの世界でしか知らなかった人と実際会うなんて、奇跡!運命的な出会いなんじゃない?」という。
なぎさは「そうかも……」と心の中で思いながら静かにうなずくと、
モリカは好奇の目を輝かせながら
「ねえ、その人ってどんな人なの? 男の人なんでしょ」と聞いてきた。
「そう、男の人。 でも年上の人、かなり歳が離れているの」
「えぇ、すごい。 いいじゃないの歳の差なんて! 恋の始まり始まり」とモリカ。

「そんなんじゃないの、ソータとは。リクエスト曲とね、本がつながってきたの。ソータが萌音さんの 懐かしい未来 をリクエストしたとき、なぎさが懐かしい未来って不思議な言葉の沼にハマってたの。そしたら、ソータが 懐かしい未来って本を教えてくれたの。なぎさが、寂雷さんの 君ありゆえに我あり をリクエストしたら、同じ題名の本を紹介してくれたの。」

モリカは、ちょっと残念そうな顔をして「音楽と本でつながっているいくなんてボクには考えられないなぁ。アニメと音楽ならすぐにつながるけどね」
「私だってそう。音楽と本がつながり、本が苦手だった私が今まで読んだことのないよな世界の本を読み始めちゃったりね。」

「不思議な関係、音楽と本、そしてなぎさとそのその人の関係ってなんなの? 恋の始まりってイメージじゃないね」

「君ありゆえに我あり って本を読んでたらね。ビートルズのジョージ・ハリスンの言葉が出てきてね。それがハリスンが作った曲の一節だったの。その曲を聴いてみたら、私が知ってるビートルズの曲なんかじゃなくってね。シタールとかいうインドの楽器で始まる変わったリズムの曲だったの」

「聴いたことあるよ。ビートルズは一時、インドに行ったり、瞑想したりしてことがあったとか。」

ハリスンやシタール、インドのお話まできたところで、モリカとなぎさは、駅のホームでモリカは上り、なぎさは下り、それぞれの電車に乗ってお別れした。

初めてお話したモリカなのに、いつの間にか「上白石姉妹」「ヒプノシスマイク」「一二三とお寺さんの言葉」「ハリスンとシタール」など、モリカといくつかの接点が見つかっちゃった。

初対面の人、それも同世代っぽいモリカとお話するなんて初めてのことだったけど、今までのなぎさには考えられない経験ができた。
なぜなのかな、少し考えてみようかなって。

きょうのできごと、ソータに伝えてみようっと。




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