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【考察】テンペスト(嵐)に覆われたオズの魔法使い

水星の魔女は登場人物の名前や、シェイクスピアの作品が参照されていたり、テンペストがモチーフに存在しますが、もしかして本当の物語はオズの魔法使いなのではないか?と感じたので、考察をしていきたいと思います。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。

オズの魔法使いの登場人物と、水星の魔女の子供たちの類似性


まず、オズの魔法使いの登場人物と、水星の魔女の子供たちには類似性があります。

勇気のないライオン→グエル
心のないブリキの木こり→シャディク
頭脳のない案山子→エラン
ドロシーとトト→ミオリネ&スレッタの兼ね役
オズの魔法使い→ラウダ

それから、魔法のルビーの靴はエアリアルかな、という気がします。

それぞれのキャラクターに着目して、詳しく見ていきます。

勇気と理性を混同しておる

まずグエルですが、明確にキャラクターコンセプトがライオンです。

そして、勇気のないライオンです。

ところで、勇気とは何でしょうか?危険に立ち向かう勇敢さ?何ものをも恐れぬ心?

私は水星の魔女においての勇気とは、「進む力」であるのではないかと思っています。

逃げれば一つ、進めば二つ。

こう唱えるスレッタは、この言葉を「進むのはいつも怖い」「だから唱えている」と言っているので、これは「怖さを払しょくする呪文」で、それはすなわち「勇気をだす」ということではないでしょうか。

そしてグエルは、「スレッタ・マーキュリーに進めていない!」と言っていることから、進む力が不足している、進むことができなかった人です。すなわち、「勇気のない」人間です。

しかし、彼が本当に進む力がないのかと言えば、それは違うはずです。彼は立派に「ドミニコスのエースパイロットになる」という自分の人生の目標を持っていて、それに向かって努力してきた、進んできた人です。

オズの魔法使いが勇気が欲しいと言うライオンにかける魔法、言葉があります。
「ライオン君は勘違いをしとるだけだ。危険から逃げ出すことが意気地なしとは限らんぞ。勇気と理性を混同しておる。」
(1939年映画版オズの魔法使い(字幕版)ヴィクター・フレミング監督Prime videoより引用)

今のグエルはまさに、勇気がないと嘆くライオンです。彼は元々進む力、正しく進む力があったのに「進む力がない」と勘違いしているのです。そして父親を殺したことで恐らく、逃げ出したことを後悔したでしょう。しかしそれは必ずしも過ちではなかったはずです。現にグエルは、父親以外の人間と出会い、その人たちに暖かく迎え入れられます。

過ちだったのは考えなしに飛びだしてしまったこと。「進もう」として他のすべてを投げ出してしまったことです。

そして多分、彼の勇気は自分の中ではなく、自分の外、もっとも身近な人間の中にあります。

それは弟のラウダです。グエルはドミニコスのエースパイロットになるという夢はラウダと共有した、一緒に見る夢です。ホルダー時代のグエルは横暴で粗暴で、とても正しいとは言えませんが、元々ドミニコスへの入隊は別にホルダーが必須条件ではなく、ホルダーになる前のグエルの戦績はわずかに3勝以下なので、元々のグエルは恐らく優等生タイプだったはずです。グエルは先生に対して「すみません」とすぐに謝罪し敬語を使える人間なので、反抗する不良タイプではなく、高いパイロット技術と夢から逆算して将来設計をしっかり考えているのなら、成績も優秀だったでしょう。
つまり、ホルダーなんて称号がなくても、グエルは問題なくドミニコス隊への入隊を、そしてそれにつながるエースパイロットの夢を実現させたはずです。

敗北してしまったダリルバルデ戦でも、「ドミニコスのエースパイロット、諦めてはいないんでしょう?」とラウダに言われたら、改めて勝利を誓う。父親から傷つけられたプライドを、ラウダの言葉によって持ち直せている。あの時父親のAIの工作がなければどうなったのかはわかりませんが、ひょっとしたら本当に勝てていたのではないでしょうか?操縦権を取り戻してからは、「強い!」とスレッタに言わせるほどですし、あの時はラウダにまで見捨てられて意地になった状態で、実は本調子ではない可能性がある。もっと精神的に余裕があり、油断を払しょくした、まさに決闘冒頭のグエルならば、もっともっとよい戦いができていたはずです。
つまり、ラウダだけだったならば、グエルは最高のパフォーマンスを発揮して、ホルダーに返り咲けていたはずだった。

そして学園を逃げ出したあの決断も、ラウダのためだった可能性があるのです。ヴィムは「3度も負けたお前に何を期待できる」と言い、そのことにグエルは何も言えなくなるほどの衝撃を受けます。その前の「子会社にお前のポジションを用意した。そこで俺の仕事を学べ」というところでは、「待ってください!」と反論できている。だからグエルが本当にショックを受けたのは、「子会社に行かされる」「パイロットとしての自分が終わる」ことではなく、「お前には期待できない」という部分です。しかし、ヴィムにはもう一人息子がいる。ならば、自分に期待できないならば、ラウダには期待できる、ラウダに期待することにしたということになります。そしてそうなった場合、もうすでに「お前も父さん側の癖に」で父親の愛情はラウダにいっていると薄々思っていたのなら、それに関してそこまで大きなショックを受けないのだとすれば、グエルの頭によぎったのは「自分がいたらラウダの邪魔になる」という思いだったと推測することが可能です。
つまり、グエルはラウダに迷惑をかけないために行方をくらませた。そこで年上の庇護を受けて、心安らかに過ごすことができた。

ラウダが関係すれば、ラウダのためならば、グエルは正しく前へと進める。

現にグエルは、「これは兄さんだけの決闘じゃない。」を含むラウダの言葉に、「ああ」と否定することなくうなずいているので、ダリルバルデ戦は「ラウダのためにも勝つ」と誓った戦いでもあった。

なので、ラウダはグエルにとって、大切な「勇気」なのだと思います。

どれだけ人を愛するかではなく、どれだけ愛されるかが大切じゃ

シャディクは、グラスレー社のモビルスーツが騎士の鎧のような感じであることもそうですし、ミオリネへの恋心をも捨て去り、人間を駒だと考えている、心のないブリキの木こりです。

しかし、そうなのでしょうか?ミオリネを、その幸せのためなら他の男に託すほどに深く愛していて、スレッタに対しても魔女裁判が行われて、必死に無実を訴えるスレッタを、眉を寄せて見つめます。あれはサリウスのシナリオ通りなので、同情する必要はありません。しかし、シャディクは止めることはなくても、それを哀れだと感じる「心」を、確かに持っているのです。

養父であるサリウスにも、「信用されるように頑張ったんだよ?」と、養子であるからパフォーマンスが必要だと考えていますが、サリウス自身は大人の後ろ暗い世界に嬉々として入って、謀略を積極的に主導しようとするシャディクに、「学生なら学生らしく、決闘ゲームに興じればよいものを。しくじればグラスレーでのポジションを失うことになるぞ?」と、子供らしく青春を楽しみなさいというようなことを言い、せっかく頑張ってきた努力がパーになるぞ?と警告します。しかし、あくまで失うのは「グラスレーでのポジション」であり、サリウスの養子というポジションは失いません。ヘマをしたって、サリウスはシャディクを捨てる気は毛頭なく、自分の右腕として暗躍するのではなく、もっと子供らしく楽しんで、子供らしい幸せに喜んで生きればいいと、むしろシャディクを子ども扱いしています。

「心があってもそれだけ辛い思いをするだけだ」と言うオズに、それでもブリキの木こりは「心が欲しい」と願います。そんな彼にオズは、
「わしの故郷には善い行いをする人がおった。何と言ったかな…“心の広い人”と呼ばれとる。心の大きさは君と同じだ。(略)いいかい、忘れてはならんぞ。どれだけ人を愛するかではなく、どれだけ愛されるかが大切じゃ。」
(1939年映画版オズの魔法使い(字幕版)ヴィクター・フレミング監督Prime videoより引用)

心の広い人と呼ばれる人と、心がないと嘆く君は心の大きさは実はおんなじなんだ。つまり、心がないと君は嘆くが実は心を持っている。それもとても大きな暖かい心を。そして、「どれだけ人を愛したのか、ではなく、どれだけ愛されているかが大切だ」と。

シャディクはミオリネを深く愛していました。しかし自分が愛されるとは毛頭考えていなかった。恐らくシャディクは、そういう人なのだと思います。人を深く愛することができるけれど、愛されるとは思わないし、自分の気持ちも他人の気持ちも口に出さない。だから愛を取りこぼす。

恐らくサリウスに対してもそうです。サリウスは養子という以上にシャディクを愛しています。しかしシャディクが「自分は養子だ」と一線を引いてしまっているから、サリウスはシャディクが求めるように仕事の話をするしかなくなる。
父親をまた巻き込もうとしているようですが、そういう意識でいては、シャディクは結局失うばかりなのだと思います。愛されているという事実に向かい合って受け止めなければ、その愛はいずれなくなってしまう。ヴィムが伝えなかったから見えなかったのなら、シャディクは見なかったからなかったことになる。

どんなちっぽけな生物にも脳みそはあるのさ

エランですが、厳密に言えば案山子なのは強化人士たちで、本物のエランは彼らをからかいにやって来るカラスなのかなという気がします。

エラン4号は恐らく火や熱によって命を奪われます。案山子は火だけが弱点で、エランが吊り下げられているのも、木に括り付けられた案山子に見えなくもありません。そして本物のエランも強化人士たちも、考えることを禁止されている、脳みそがないと思わされています。

強化人士たちは市民ナンバーを獲得したいから協力している、兵士です。そして4号はお母さんの存在を忘れていて、それに気づいてから「おかしいね。」と自分の境遇がおかしいのだと思考を得ています。このあと燃やされちゃうん(多分)ですが、それまでの彼は感情も希薄で上からの命令に粛々と従うことだけを期待されていて、エラン自身感情が希薄なのは、スレッタに熱くなっているのを見ると、考えることを放棄しているからです。

本物のエランもまた、考えることを望まれていません。彼はペイル社から外へは恐らくほとんど出られず、学園にも行けていない。外に出れても、やはり役割を期待され、ペイルの四人が後ろに控えている、自由ではない状況です。そして強化人士の運用についても、エランは口出しできない。自分の代役を務めるというのに、その選考にも参加できず、ガンダムなんてものにも興味はなさそうなので、ペイルの四人が懸命に与えようとしている何もかもが、エランにとってはどうでもいい。しかしそれを言ったところで彼女たちがやめることもないでしょうから、尊重されているようでされていない、私たちがすべてを整えるからあなたは安全圏にいなさいと、自分の意思や考えが決して反映されることのない鳥かごの中にいる。

しかしエランは性格が悪いと称され、頭が悪いようにも見えないし、個人的にベルメリアや強化人士に会いに行っているので、彼は愚かな子供ではありませんし、行動力がないわけでもない。しっかりと自分の考えを持ち、行動できるし、彼自身は自分のことを愚かだと思ったことは恐らくないです。お飾り人形だとは思っていそうですし、自分の考えが反映されることはないと諦めてもいるでしょうが、彼の脳みそはしっかりとそこに存在しています。

脳みそを得て、周りと同じになりたいと望む案山子に、オズはこう諭します。
「脳みそなんて誰にだってあるさ。どんなちっぽけな生物にも脳みそはあるのさ。わしの故郷には大学があり、大勢の若者がそこで学ぶ。卒業しても脳みそは君と変わらんぞ。」
(1939年映画版オズの魔法使い(字幕版)ヴィクター・フレミング監督Prime videoより引用)

本物のエランは今、学園に通っていない、つまり学のない子供です。復学したところでもうすぐ卒業してしまいますし、3年生の描写を見るとあまり授業を受けていないようにも見えます。

彼は大学、学校に行っていない。故に学位も取得できない。

しかし脳みそはあります。学のある者たちと比べても同じ脳みそが。そして強化人士たちにも、思い出が、思考がある。

「なにもないなんてこと、絶対にない」のです。

自分の力で学ぶ必要があったのよ

ミオリネとスレッタは、主人公ドロシーと愛犬のトト、恐らくどちらも兼ねています。

物語が動き出したのは、宇宙に漂っていたミオリネをスレッタが助けようとしたからです。ドロシーとトトも、トトがミス・ガルチの猫に噛みついてそれをドロシーがかばったことから始まります。

それからもミオリネを守るために決闘を受けたスレッタによって、スレッタを守ろうとするミオリネによって、水星の魔女の世界は動いていきます。なので、スレッタもミオリネも、どちらもドロシーでトトなのです。

そして配役をオズの魔法使いに当てはまると、案山子であるエランにスレッタは強く惹かれ(映画でも「あなたとさよならしたくない」と案山子に抱きつきます)、ブリキの木こりであるシャディクはミオリネに強く惹かれミオリネもまたシャディクに淡い感情を抱いていました(映画でもブリキは別れ際「初めて胸の痛みを感じたよ」とドロシーに言います)、ライオンであるグエルのことは二人ともそこまで感情がないです(映画では、もちろん大切な仲間ですがキスもなく、二人に比べるとちょっとあっさりしてます)。

そしてミオリネはここではないどこか、「地球」を目指しています。ドロシーも心配のない場所を求めており、虹の彼方へ行けばそれが叶うと信じています。

故郷へ帰れないと嘆くドロシーに、北の良い魔女は
「あなたは自分の力でカンザスに帰れる。」「本当に?」「なぜ秘密に?」「自分の力で学ぶ必要があったのよ。」
そしてドロシーは「叔父さんや叔母さんに会いたいと思うだけじゃダメ。私が心から欲しいと思うものは、きっとおうちにあるのね。近くにありすぎて今まで気がつかなかったの。」と答えを出します。
(1939年映画版オズの魔法使い(字幕版)ヴィクター・フレミング監督Prime videoより引用)

ミオリネにとって一番欲しかったものは、恐らく父親に愛されているという実感です。それは近くにありすぎて気づけなかった。スレッタが欲しかったものは…なんですかね?少なくとも今はまだ手に入れていないような気がします。

しかし彼女たちはオズの国から現実に帰るのではなく、このままオズの国に残る、オズの魔法使いの世界の住人です。だから家に帰ってめでたしめでたしではなく、恐らく虹の彼方を目指すはずです。なぜならこの世界はアド・ステラ、「星へ」と名付けられた世界なのですから。

そしてそこへ連れて行ってくれるのは、ルビーの靴、エアリアルです。どうして原作版じゃなくて映画版なのかというのは、原作では銀の靴で、ルビーの靴は映画版だからという理由です。
エアリアルはその足が赤い。それもただ赤いのではなく、足の一部と言うよりは靴のようなデザインです。だから彼女/彼は、ドロシーが行きたいところへ連れて行ってくれる、魔法のルビーの靴です。それにルビーの靴は、履いている間は悪い魔女から守ってくれる魔法もかかっています。

…まぁ、スレッタとは家族であり、自分の意思や彼女を守るという決意を秘めているので、エアリアルもドロシーとトトの兼ね役の気がしますが。

カーテンの裏をのぞくでない

そしてオズの魔法使い、ラウダ。

彼は物語に積極的に出てきませんし、そのきっかけはミオリネとスレッタが作り出します。

最初のセリフである「授業中だよ、兄さん」も、ミオリネが出て行ったことが原因で起こった決闘で、ミオリネがきっかけです。

場面が切り替わって温室でも、スレッタがラウダの袖を引っ張ってグエルを止めてくれるよう頼んだから「兄さんを止めたければ自分で止めなよ」と発したので、スレッタが関わらなければ恐らくラウダが何か言うことはなかった。

それからグエルが表舞台から引っ込み、ラウダが露出するようになりますが、それもスレッタとミオリネのせいです。

そして10話で「仕方ないだろ」と声を荒げ、「どこに行ったんだ、兄さんは…!」というのは、今度はスレッタではなくグエルとの関係性が濃くなります。グエルがいなくなってしまったので、より強くラウダ個人として前へ出なければならなくなった。

オズの魔法使いはカーテンの裏に隠れて、拡声器や映像などを使い、自分を恐ろしい魔法使いとして演出していた。つまり、本当のオズは舞台裏に引っ込んでいた。それをトトがカーテンをくわえて引っ張って露呈します。

このことから、グエルはラウダにとってのカーテンで、ラウダは表舞台に出る気はさらさらなく、グエルの側でスンっと立って、「兄よりも冷静で理性的」な弟という演出をして、他人にはそう思ってもらえれば結構だった。

しかしラウダの本質は激情家です。感情が豊かで、それを隠す気もなく、ムカつくと思ったらムカつく顔をするし、舌戦だってしてしまう激しい男です。

兄をカーテンとしてその裏に隠れていると言えば聞こえが悪いですが、しかしラウダはグエルの勇気であるとすれば、勇気とは肉体の中にあり他人には見えないもの、触れないものだから他人に自己主張しないのは問題ない。何せラウダは、グエルに対しては自己主張するので、グエルが外に主張していくのなら、自分はまぁいっか、どうせこいつと関わらないし、とスンっとしていても問題ない。

ラウダは恐らく他者と関わるのが嫌いだし、心底めんどくせーと思っていると思います。そしてオズもカーテンの裏に隠れ、ドロシーたちどころかエメラルドの都の住民たちとすらほとんど関わりません。ラウダは副寮長という役職についているので、オズのようにエメラルドの都の住民たち、寮生たちと触れ合いたくないということはない、彼よりは他者と関わる気がありますが、それ以外とは極力関わり合いたくない。

しかし、トトであるミオリネとスレッタによってグエルを失ってしまったので、彼は彼女たちと関わらざるを得なくなります。オズもカーテンを失って、魔法使いという虚像を失い、彼女たちと関わらざるを得なくなり、そうして彼らに言葉という魔法をかけて、故郷へ帰るきっかけを作ります。

そしてここで、ラウダのパーメットの情報共有能力が高いという設定が本当であれば、の話ですが、本当であれば、彼はみんなの心を言い当てることができる、指導者としてのオズとして物語をハッピーエンドへ導ける存在です。(人の心を言い当てられるかもしれない可能性についてはこちらの考察をご参照のほど)

ライオンも案山子も木こりも、本当は自分が欲しいものをすべて持っていますが、オズに教えられなければそれに気づくことができなかった。上記の考察の通りなら、グエル、エラン、シャディクたちは、みんなその素晴らしい能力や欠点について自覚していない。
グエルには勇気が、エランには賢さが、シャディクには優しい心が、それぞれにあることをみんな気づいていない。

そしてドロシーとトトであるミオリネとスレッタも。彼女を導いたのはオズではなく北の魔女ですが、最初に帰ることができるという希望を持たせたのは、彼の存在と言葉です。

…まぁ、絶対やっぱりそんな積極的には関わらないとは思うので、しかしだからこそ、ラウダはそんな重要な役割を持たされたとしても、主要キャラクターよりも一歩引いたサブキャラクターです。

ラウダはグエルとジェタークさえ無事なら他はどうでもいいと思っているでしょうが、プロスペラが世界を飲み込もうとしている嵐は、それらの大切なものを飲み込もうとしている。
なのでラウダは立ち上がるしかない。主要キャラが日和ったり嘆いたり目を閉じたり諦めたりしているところを、キレながら物語に戻らせて主要キャラとしての役割を取り戻させるのが、恐らくラウダの役割で、あくまで主役には絶対になりたくない、けれど大事な人や存在を諦めるわけにはいかないだろうラウダだからこそできることです。グエルが望むならグエルと離れ離れになることだって受け入れられるラウダなら、彼を助けるためなら嫌な表舞台にもどんどん出るでしょう。嫌だけど。

まぁ、映画でもオズは気球が離れてしまうと、自分ひとりでカンザスに帰っちゃうので、そういう気質も実はラウダ似てるな…と思いますね。多分メンタルケアはしても、その後の涙ながらの再会とか、感動的な場面には加わらないタイプだと思います。自分の役目が終わったら速攻またカーテンの裏に戻る。グエルとは、彼の勇気も兼ね役なので、むしろ感動の渦中にいるような気がしますが。いや、いて欲しい。

このように、ラウダをオズの魔法使いとするなら、綺麗に御三家と主人公でオズの魔法使いの登場人物をすべて当てはめることが可能なのです。

そしてそれこそが、アド・ステラ世界の目指すべき場所です。

星の彼方を目指す子供たち


アド・ステラとは「星へ」という意味です。そしてこれはイタリア語で表されていますが、元となったのはラテン語のアド・アストラ、アエネーイスという叙事詩で使われている文言であると思います。

トロイア戦争後に新天地を目指し、イタリアローマへ渡るというお話ですが、このアド・アストラには、このような成語があります。

Per aspera ad astra

意味は「苦難を乗り越えて星々へ」です。(Weblio英和辞典 https://ejje.weblio.jp/content/per+aspera+ad+astra より引用)

カルド博士は、宇宙へ上がった人々は数々の困難に直面した、と語ります。そしてそれを乗り越える技術こそがGUNDであると。

アド・ステラの世界とは、元々は星を目指し、そうして宇宙へ飛びだした世界だった。しかしまだまだ課題があり、それらをクリアして星へ真に辿り着く技術がGUNDだった。

さらにオズの魔法使いの子供たちが生まれ、星を目指すだけでなく、星の彼方を目指す世界にもなった。

オズの魔法使いにおいて、ドロシーは初め「虹の彼方」を夢見ます。有名なオーバーザレインボーですね。ですが求めていたものは本当は近くにあったのだと、彼女は家へ帰ります。

しかしアド・ステラの世界にいる彼女たちは違います。彼女たちは魔法の国から醒める必要はなく、進めば二つと前進し、星をも飛び越えた新たな新天地、星の彼方を目指すことすら可能です。

そのためのルビーの靴がエアリアルで、GUNDで、スレッタとミオリネの使命なのではないかと。

恐らく、彼女たちを助けて助言をして、旅を手助けする北の魔女は、本来はカルド博士です。

博士の所属するヴァナディースは女神フレイヤの別名、PROLOGUEのフロント、フォールクヴァングは女神フレイヤの宮殿で、彼女は魔法の神でもあります。

ところで女神フレイヤには関係性の深い神がいます。

それが大神オーディンです。彼はフレイヤと死者を分け合い、彼女とは結婚しているとも言われます。このオーディンは知恵の神で世界の破滅を防ごうと動くもので、隻眼の男です。
そしてカルド博士も隻眼です。彼女は女性ですが、恐らくモチーフとしてはオーディンです。このフォールクヴァングも、オーディンと死者を分け合う場所と使われています。

オーディンは片目を代償に、さらに逆さづりになって生死の境を彷徨い、知恵とルーン文字を獲得します。ルーン文字は魔術の触媒となるものですが、オーディンは他にもセイズという魔法を使えます。このセイズは元々女神フレイヤのものであり、使うのも主に女性です。男性も使えますが、それは恥ずかしいことなのだとしてオーディンは非難されます。

恐らくヴァナディース機関の関係者が女性ばかりなのは、このためと考えられます。

カルド博士に話を戻しますと、オーディンと似た経験をしてGUNDを得たのではないでしょうか?彼女は左目を失い、それがきっかけでGUND技術についてのアイディアを得た。

彼女もまた魔女なのです。そしてドロシーを導く北の魔女です。彼女は亡くなりましたが、ミオリネは彼女のGUND技術提唱のPVを見て、株式会社ガンダムの方向性を決めます。彼女の志は、そしてGUNDという技術は、彼女たちを正しい道へと導く魔法です。

しかし本来ならば、彼女はもっと多くをなしえていたはずです。GUNDは世界の普遍的な技術となり、誰もがGUNDを使う未来が訪れていたはずだった。もしかしたら21年後も生きていて、ミオリネたちを直接導いてくれていたかもしれなかった。

しかしそうはなりませんでした。彼女たちを守って導いてくれる北の魔女は死んでしまった。

それは嵐、テンペストのせいです。

テンペスト(嵐)に覆われる物語


プロスペラはそのままテンペストの登場人物の名前がモチーフですが、彼女がまず嵐を起こしたのではありません。きっかけの嵐はもっと前に起きています。

それはデータストームです。データストームは文字通りデータの嵐です。それで、不思議なことがあるのですが、データストームの患者数…多くないですか?確認できるだけでも6名はいます。それにガンダムは「死者を出す」とされています。半分死んでいるに近いですが、まだ彼らは一応生きています。

…これ、本当は十名以上ガンダムに関わってデータストームを起こし、また死んでいるのではないでしょうか?

そうであるとすると、ガンダムの生命倫理問題の前にオックス・アースの生命倫理の方が終わっていませんか?十名以上のテストパイロットをむざむざ死なせ、寝たきりにさせ、それでも諦めないでGUND-ARMにこだわる?モビルスーツ開発評議会の前にこんな企業は行政命令で一発で倒産させるべきです。

ところでアド・ステラ世界においてとっても影の薄いものの一つに、政府組織があります。第1クールファンブックを見るに、まだ政府組織はあり、一部の企業が頭抜けているとありますが、本当かいな?地球も荒廃していて、ナジたちゲリラ組織が大っぴらに活動していて、しかも彼らが行っているのは政府転覆ではなくスペーシアンを対象としています。普通ゲリラ組織とは、強大なパワー、それこそ政府や国を相手に戦うものです。そしてナジは「おいおい、お前さんらのボスを殺せってのか?」と言っているので、普段のテロの対象はベネリットグループではありません。

ここでさらに一つ、謎の組織があります。宇宙議会連合です。彼らは学生であるミオリネも知っているので、何か大きな組織のようですし、怯えていないのでテロ組織とは違うクリーンな組織です。しかし運び屋というグレーに近い職業に就かなければ食べていけないと言っている。どうにも組織規模と財政状況などが合っていない。

そこで一つ仮説が生じます。
こいつらがアド・ステラ世界においての政府機関では?

宇宙議会連合ですが、現実でも言葉の響きが似ている組織があります。国際議会連合、略称「国連」です。

国連は複数の国が加盟する連合組織です。世界に共通したルールを敷き、まとめ上げる。

ということは、宇宙議会連合とは恐らく、フロントを国と見立てて束ねる政府組織です。で、今彼らの一部が運び屋なんて活動をしているのは、スパイ活動でもあるでしょうが、マジで金や権力を失っているからではないでしょうか?仮にも国に匹敵する権力と資金を有する彼らが、失墜するだけの大ポカをやらかしてしまった。

最初のデータストームを起こしたのはオックス・アースではなくこいつらでは?

ヴァナディース機関は研究機関であると思われますが、企業に属するのではなく一企業として独立している。通常「機関」とは、企業の中の意思決定機関ですとか、企業の一部組織を指す言葉です。そして研究機関としても、「研究所」として独立しているものはありますが、「研究機関」ましてや「機関」と名付けられて独立しているものはありません。

むしろ機関とは、行政機関や国際機関などの、何らかのオフィシャルな属性を持ちます。

それにヴァナディース機関の代表はどうもカルド博士ではありません。そしてカルド博士が生命倫理をクリアしていないものを実用化する、ましてや命を救うGUNDを兵器利用し、あれだけ大量のデータストーム被害者を出すとは考えられません。

これは仮説ですが。ヴァナディース機関は元々宇宙議会連合に所属する機関で、GUNDを軍事転用できることに気づいた何者かが勝手にルブリス量産試作モデルを開発。軍人で試験運用プラス訓練を行っていたら、大量のデータストーム患者を生み出してしまった。大スキャンダルになるどころか、政府転覆の暴動すら起きかねない状況に、急ぎヴァナディース機関を宇宙議会連合から切り離し、何も知らない地球の企業にGUND-ARMの情報を流す。それに飛びついてきたオックス・アースと提携し、そこでデータストーム患者がオックス・アースのせいで発生したというシナリオを作ってマスコミに流した。

これだと、オックス・アースがルブリスのロールアウトを急がなければならなかったことに、生命倫理はどうでも良かったからではなく、政府の不祥事を被って訳のわからんデータストームの責任問題を押し付けられて、それを何としても早期解決しなければならなかったという意味が生まれてきます。

そして、ルブリス量産試作型ができているのに、プロトタイプであるルブリスが出来上がっておらず、後に製作されていることにも説明がつきます。なぜなら普通は、まずはスペシャルな試作型を作り、そのデータから安価で安定した量産型へとバージョンダウンさせていくからです。ルブリス量産試作型が先に造られ、それではどうやったってデータストームをクリアできないから、責任者にされたカルド博士は後追いでルブリスを作り上げた。

さらにまだ生命倫理問題をクリアできていないのに量産試作型を購入しているのも、あれも恐らく宇宙議会連合繋がりです。最初フロント第3自治区は地球所属のフロントかと思っていましたが、しかしニュースでは「地球に軍拡の口実を与え」と言っているので、まだ地球では軍拡をしていません。ということは、アーシアン側の領地ではなく、そしてフロントが新システムの兵器を大量購入しただけで、地球の軍拡の可能性が発生するほどざわめく。と、考えると、宇宙の政府である宇宙議会連合の構成国である可能性が浮上します。

実際「自治」ってどこから独立してんの?って感じなんですが、恐らく巨大企業です。プラント・クエタはフロント全てがベネリットグループの工場として稼働していますし、フォールクヴァングもヴァナディース機関が所有しています。その所有権を跳ね返し、宇宙議会連合の構成国として自治することを決めた、これがフロントにおける自治区の意味です。

そりゃ政府とは民意の集合体ですから、それが軍拡すれば地球だって軍拡へ傾きます。

宇宙議会連合は、その支配権は「宇宙」ですが(どうも地球も属国扱いしてそうですが)、それも巨大な企業が生まれてきて肩身が狭くなってきている。地球は地球で、宇宙議会連合に反発した武装勢力がいる。それらを支配して、圧倒的な支配者へと返り咲く。地球の人的資源含めた資源もいただく。このような目的で宇宙議会連合は所属機関であるヴァナディース機関のGUNDという技術に着目し、戦力増強を目指してGUND-ARMを開発する。

その過程でデータストームが発生した。

しかも何人も被害者を出しているので、バレるギリギリまで実験をしていたんじゃないかと思います。しかしついにそれが隠せないレベルまで至ったので、地球の企業に罪をなすりつけることを思いついた。地球ならば、宇宙議会連合には関係ないので。

それに気づいたのが、恐らくデリングです。

デリングは元軍人で、PROLOGUEの段階ではガンダムに対して非常に強い憎しみを向けていました。多分ですが、同僚や後輩、先輩たちをデータストームによって失ったのではないでしょうか。

それで軍を辞め、直接叩き潰すためにグラスレー社へと入社した。グラスレー社はディフェンス・システムズというように多分警備会社です。退役軍人が警備員となるのは結構あるあるなので、グラスレー社は退役軍人の受け皿のような会社でもあると考えられます。孤児院を持っているのも、戦乱によって生まれた戦災孤児を引き取る、慈善活動的な側面もあるのでしょう。

サリウスの右腕となっているので、このことをサリウスに告げたのか、それともデータストームに早くに気づいて止めるにはこれしかないと早期に退役したか。

個人的には後者かなと感じます。サリウスはまだまだ穏健な策を取るつもりでしたし、この時点ではガンダムへの強い忌避感は感じられません。むしろデリングの方が本社も出先機関も皆殺しにしているので、殺意が高いです。
しかしこれも、戦友たちをあんな状態にされて、上はまだ止まるつもりがない、民間企業を巻き込んでさらに被害を拡大させようとすらしていると知れば、あそこまで強硬な手段を急いで取らなければならなかった事情は理解できます。

それだけでなく、デリングは宇宙議会連合の弱体化も恐らくやっています。その後もベネリットグループの影響力は拡大し、いくつものフロントを抑えて実質的な宇宙の支配者となった。宇宙議会連合の構成員は正体を隠し、地道な活動を行うしかなくなり、資金もカツカツな状況に追い込まれている。

そうなるとミオリネと関りがあり、デリングが意識不明という状況は彼らにとってビッグチャンスとなるのですが…それはともかく。

デリングはデータストームが起きたからガンダムを根絶やしにすることを決めた。あれは結構御大層なことを言っていましたが、戦友たちの弔い合戦という面も多分に含まれている。

そのせいでエルノラたちは家族や仲間、所属する組織を失い、今度はプロスペラとして嵐を起こす側になった。

そしてテンペストの世界となってしまった。その後もテンペストの住民たる親世代によって、世界はかき乱され、オズの魔法使いの子供たちにも被害が及びます。

ヴィムが一番わかりやすいですが、彼は暴力という嵐をグエルに使った。排熱処理の工作も水、つまり雨の真似事です。その後も虐げて、グエルからラウダを取り上げて、彼らを物理的に引き離し、言葉の暴力によって彼の心をズタズタに引き裂いた。

サリウス自体は嵐を使ってはいないんじゃないかと思いますが、シャディクが孤児になったのは、彼にとってはとてつもなく大きな嵐で、養子という立場で大企業の御曹司となった子供にとっては、その世界もまた嵐の渦中である。ガンダムを憎んだのはヴァナディース事変だときっかけが薄い気がしますが、この考察のようにGUNDに関わった子供を失ったのだとしたら、ガンダムを強く憎むようになったのは、子供を失うという嵐が原因で、そのためにシャディクはサリウスを古い考えに囚われた老人だと距離を取るようになってしまう。

ペイルは直接ガンダムを作り、強化人士を作り、データストームは未だに克服できず、これまでに3人死亡、エラン4号も廃棄処分される。強化人士の元となった、市民ナンバーすらない子供たちも、エラン自身も、自由をはく奪され後に死ぬか、先に死ぬか、いずれにせよ何もなせずに死んでいくのを黙って待っているしかない。データストームの嵐は強化人士たちを襲い、エランはその嵐が来ないように彼女たちによって守られ抜け出すことができない。

みんな嵐によって苦しめられている。

そのためオズの魔法使いとしての水星の魔女の始まりもすこし狂っている。ドロシーは竜巻によってオズの国へ行きますが、竜巻は積乱雲によって発生する、嵐を伴っているので、実はテンペストとオズの魔法使いの始まりは同じく嵐によって始まっているのです。

多分本当だったら、どんくさいスレッタが周りに馴染めずに孤立し、いじめという名の嵐によってミオリネの温室だったり、もしかしたらお母さんが存命だったら地球寮とかかわりを持つようになっていたかもしれないので、その関係によるどこかでミオリネとスレッタは出会うはずだった。

しかし母親を失い、父親との関係も上手くいかなかったミオリネは、単身地球へ渡ろうとし、スレッタに出会って阻止されてしまう。そうして代わりの嵐として、グエルと戦います。夜設定だったのかもしれませんが、戦いが終わると途端に晴れ、雲間から差し込む天使のはしごという構図だったので、曇天の方が可能性は高いです。

エランの時は宇宙ですが、ファラクトがデータストームを起こすので、それが嵐です。

…まぁ、実際に風や雨はなかったので、本当の嵐とは言えなかったかもしれませんが、あれは子供同士のことでもあったので、「嵐」まではいかなかったのかもしれません。実際大人が直接関わったダリルバルデ戦で雨が、ガンダムであるファラクトでデータストームという、より嵐に近い状況になり、モビルスーツの手配ぐらいしかしなかったシャディク戦は、暗いですが夕方で日が差し込んでいます。

このように、親世代はテンペストの登場人物で、その始まりはデータストームという世界が巻き起こした嵐だった。親世代は嵐を好き勝手起こして、子供たちは自分たちの本当の物語であるオズの魔法使いの世界を始められない。水星の魔女世界は、このような元の世界に嵐が蓋をする構造になっているのだと思います。

ただ、オズの魔法使いをすべて覆い隠せているかと言うと、ミオリネは北の魔女であるカルド博士のメッセージに気づき、それを指針に株式会社ガンダムを創設し、スレッタは12話を見るに、どうも母の言葉よりもミオリネの信頼に心が動いているようなので、少しずつ嵐が晴れつつあり、主人公が彼らに移りつつある世界なのかなと感じます。これは彼らが思春期という親の庇護から独立し始める年齢であるというのも関係していて、彼らは内に閉じ込めたり思い通りにしたいという親の思惑をはねつけて、いずれその外へと出て行き、世界を引っ張るフレッシュな力を持つ、その始まりとも言える年齢です。そしてその中でも、主人公たちは特別な存在です。

スレッタ、ラウダ、ミオリネ、グエル、シャディク、エラン。

彼らの名前にはある共通点があります。

アド・ステラを導く運命を背負う子供たち


彼らの名前に見える共通点。それはイタリア圏の言葉が隠れていることです。

スレッタ・マーキュリー
Suletta Mercury → Sul(イタリア語で「~の上」)etta(イタリア語で「ちいさい」という意味。女性の名前の最後によく使われ、「ちいさいかわいい子」という意味も含まれたりする)

ラウダ・ニール
Lauda Neill → Lauda(イタリア語で「神をたたえる歌」「賛美歌」の意味)

ミオリネ・レンブラン
Miorine Rembran → ミオリネの名前はどこで切り取ってもMio以外はあまり意味をなさない言葉なのですが、Mioを基本に、Mio(イタリア語で「自分の」)ri(ラジオアイソトープの略。RI検査など医療にも使われる)ne(ネットワークの略。GUNDが最終的に心を繋ぐ技術ならば、それは人間同士をつなぐネットワークの技術とも言える)

グエル・ジェターク
Guel Jeturk → グエルという響きは、グエル公園を作ったEusebi Güell iが有名ですが、人名だとグエイになり、スペルもLが二つになるので、同じスペイン語の天使Miguelが元として、Mi(イタリア語で「私」)guel(ミカエルの名前の直訳「神のようなものは誰か」の誰かを抜かし、「神のような」)

シャディク・ゼネリ
Shadiqq Zenelli → Zenelli(イタリアのカメラの三脚メーカーhttps://www.blackfalcon-photogear.com/zenelli)

エラン・ケレス
Elan Ceres → Ceres(ローマ神話の豊饒の女神。デメテルと同一視される)

と、このように、グエルは怪しいんですが、御三家と主人公たちの名前を分解してみると、イタリア語のエッセンスが入っているのです。特にスレッタとラウダはイタリア語のみで構成され、それぞれグエルが心惹かれた人と大事な弟なので、だからグエルから「私」を意味するMiが失われているのかなという気がするので、グエルもイタリア語が名前に含まれています。
シャディクも怪しいですが、特に過酷な場所でも使われるプロ仕様のものを扱っているようなので、地球に縁が深そうで、将来的に地球の問題を解決していくキーパーソンになるとかなら、その関係なのかな~と。

そして、ざっくり3グループに分けられます。
名前がイタリア圏の言葉のみで構成されている、スレッタとラウダ。
名前がイタリア圏の言葉と他言語で構成されている、ミオリネとグエル。
苗字がイタリア圏の言語で構成されている、シャディクとエラン。

ここでスレッタとラウダはGUNDの情報共有能力が高いという考察を入れると、彼らはその共通点でイタリア語のみで名前を構成されている。
ミオリネとグエルは、多分この能力も低いけれど、スレッタとラウダの先に立ち、歩む存在です。
シャディクとエランはGUND技術によって生まれて、遺伝子操作もされた?グループであり、物語をかき乱すトリックスターと傍観者という立場です。

他の登場人物、
Martin Upmont → マーティンとかですが、西ヨーロッパ系の名前。もしくはMarは英語で「台無しにする」、「損なう」、Tinはフランスの有名な冒険主人公TinTin(タンタン)から取って、合わせて消極的な性格を表す?Montはフランス語で「山」なので、Upは英語の「上がる」で、山を登る。
Nuno Kargun → Nunoはポルトガル語圏の人名。もしくはNuはポルトガル語圏のスラングで「驚き」を表し、noは英語で「ない」なので、驚かない、驚きが少ない性格?Kargはドイツ語で「わずかの」「乏しい」地球でもあまりいい出身とは言えないから?unは否定なんですが、普通頭に付くのでわかりません。
Ojelo Gabel → 由来がよくわかりませんでした…。人名でもなければどこを区切っても単語にならない。どっかでか聞いた感じの名前なのに…。Gabelだけドイツ語のフォーク?
Till Nys → Till英語で「~まで」なんですが、苗字のNYSが「ナイスタチン」という薬剤だとすると、ナイスタチンは土壌細菌から開発されたので、動詞の「耕す」の方かもしれない。https://www.ei-navi.jp/dictionary/content/till/
Lilique Kadoka Lipati → リリッケもわからない。Lipattiとかだと人名として出るんですが、このスペルだと出てこない。Liliと言えばLilithという悪魔、魔女、アダムの最初の妻とされる女性だけど…魔性の女だから?
Aliya Mahvash → Aliyaはヘブライ語の上昇、Mahvashイラン人の女性の名前?その割には彼女の飼育しているヤクは主にチベットの家畜なのですが…ノヤクかな?
Nika Nanaura → Nikaはギリシャ語で「勝利」。Nanauraは分解しても特に意味はなさそうなので日本の姓ですかね。
Chuatury Panlunch → Chuaがベトナム語で酸っぱい、Panlunchがパンランチとすると食べ物系の名前なのかなという感じですが、Turyだけはよくわかんないですね…。

とまぁ、地球寮という近い関係の子たちでも、分解してもイタリア語や古代ローマのラテン語が使われている子がいません。

ガンダムに乗る二人は、
Sophie Pulone → Sophie はヨーロッパ系の女性名で、Sophiaなどに対応しているので、ギリシャ語の「知恵」を意味するものが語源。プロネは…なんなのか…。
Norea Dunoc → Noreaはグノーシス主義に出てくるアダムとイヴの娘です。ソフィがギリシャ語も入っているのでこじつけられないか探しましたが、女神Rheaはスペルが違うので違うかも。Dunocはこれもまたよくわかりませんね…。

イタリア語由来の名前は珍しい、分解すると意味が通じるのも珍しいのです。ただ、もう一人ラテン語の名前を持つ人がいます。

カルド博士です。
Cardo Nabo → Cardo(ラテン語で南北の大通りを指す)Nabo(スペイン語でカブの意味。なんでカブ?なんですが、オーディンの話でカブのスープを振る舞って暖かくもてなしてくれた人に洪水が来るから備えよと予言を与えたというものがあるのでそれかなと)

まぁ厳密にはイタリア語ではなくラテン語なのですが、スレッタ達よりも前の世代でもあるとすると、ラテン語でも問題はなく。そして名前がイタリア圏なので、描写を思い返すと、船の入港状況を聞き、輸送船が一隻と聞くと、「止めろ!入港させるな!」と切羽詰まった感じで言います。あれも、まぁこの状況で怪しいというのもありますが、勘が鋭いと見てもいい。それにGUNDを対話の技術であり、人々の心を繋げる技術であるとしているので、彼女自身が心がわかるようになっていたとすると、そんなオカルティズムで、まだ誰も気づいていないGUNDの可能性を確信するのもうなずけます。

主人公たち6人とカルド博士という始まりの人物。彼らがすべてイタリア圏の名前を持ち、アド・アストラではなくアド・ステラと世界もまたイタリア語の名称を付けられたのは、何らかの意図がある。

それはアド・ステラを新しい星の彼方へ導く役割を持っているから。なんて、こじつけられます。
でも実際、ステラ、とイタリア語が付いているのがなんとも意味深なんですよね。

…まぁこれでいくと、サリウスも同じZenelliなので未来を導く存在だったことになりますが、実際PROLOGUE時点ではそうだったんではないですかね?デリングと違ってカルド博士と交渉するつもりだったようですし、監査組織という強い権力を持つ組織の長がデリングという自分の子飼いを送り込むことに成功していますし。

それからもう一人、悲しいことにスペルがわからないので妄想でしかないのですが、ミオリネの母ノートレットにもその可能性があります。

ノートレットのスペルを仮にNotoretteとすると、Noto(シチリアの町)rette(Rがいらないんですが、etteは古いフランス語で「小さい」を表し、RはMiorineにRがあるので…苦しいな。まぁtteだけでもフランスの女性らしい名前にはなります)

なんでシチリアの町が出てくるんだって感じなんですが、ノートレットはトマトの品種改良をしているのですが、このヘタ付近に特徴のあるトマト、日本のファーストトマトなんじゃないかと話題になっていましたが、そのファーストトマトの原種はアメリカのポンデローザというトマトで、これはどのトマトから品種改良されたのか、はあくまでネット上ですが調べましたがわかりませんでした。

ところがシチリア産トマトで調べてみたところ、ロッソ・シシリアンという品種を見つけました。飛んでいただくとわかりますが、ヘタ周辺どころかトマト全体ですが、カボチャのような溝がいくつもできているトマトで、これはファーストトマトやポンデローザの特徴と一致します。さらにこれはアメリカに渡ったそうなので、このトマトからポンデローザが作られた可能性があります。

ノートレットのトマトは元々がこのロッソ・シシリアンではないでしょうか?そして品種改良をしたらファーストトマトに行きついたとか。そうなると、ノートレットはシチリアと縁深くなり、スペルがNotoの可能性が出てくる。いや、こじつけですなんですけれども。

しかしそうなると、この命名規則に従うと、ノートレットもまた時代をけん引する役割であり、そしてミオリネの母親という親世代に近い立ち位置であり、遺伝子工学という医療技術にも転用可能な知識があるので、ワンチャンカルド博士の娘や血縁者という可能性が生まれます。

デリングは恐らく20代であるヴィムと比べると老け込んでいますし、21年後はまだヴィムが茶髪を保っているのに白髪になっているので、PROLOGUE時点では30代後半から40代前半ぐらいだと思われます。なので、その妻であるノートレットも近い年齢であったとすると、当時60代から70代くらいのカルド博士の子供でも違和感が亡くなります。葬儀で彼女の手を確認できますが、さすがにカルド博士は年齢相応の手をしていますが、ベルメリアの手はあの老け込んだ見た目の割に綺麗な手をしていて、手だけでは年齢を判断する決定打にはなりません。

そしてだとすると、ミオリネが母親がGUND手術を受けて作られた子供ではない可能性が高まります。30代後半から40代だとすると、もうあの宇宙世界では超高齢出産になって、50代60代で子供を産むぐらいの負荷がかかるのだとすれば、諦めていてもおかしくありません。ところができてしまった。だから他の御三家の子供たちと違い17歳という1つ違いで誕生日が遅いのも、本当に予期せずできてしまったから。いや、結婚したのが最近だったという可能性はもちろん捨てきれませんが。

というのも、家族ができていたら、生き残りに復讐される可能性や、軍人上がりがサリウスに取り入って出世したばかりか彼の裏をかいてグループの実権を握り始めるとか、グループ内のヘイトも溜めていたでしょうから、後ろから刺される可能性も十分ある。

なので、PROLOGUE段階では家族はいなかったんではないかなと思います。兵士でない人々を虐殺するデリングの作戦を、ノートレットが支持をしたとも思えませんし。

まぁ、カルド博士の身内なんて真っ先に抹殺されてなきゃおかしいので、可能性は低いんですけど、なんらかの事情があって手放したという可能性もあります。カルド博士は失明するほどの何かがあったようですし、右半身を損傷するような怪我を若いころにしたエルノラを助けていますし、宇宙の危険性についてかなり危惧しているので、フロント開発とかの危険な職業についていた可能性はあります。それか、それこそ宇宙開拓とかですかね。あの世界、新しく月でパーメットが採れることが判明していたりするので、まだまだ火星などの探索も済んでなさそうです。GUNDの研究でパーメットが大量に必要でしょうし。言葉遣いも「止めろ」とか「あんた」とか結構強めの命令口調なので、日々シビアな現場に立っていたとしたらそういう口調が常になるのもうなずけます。

仮にノートレットがカルド博士の娘なら、「Nabo」という苗字が残ったままでは、さすがにデリングが結婚するはずがないので、それこそ養子に託すか信頼できる人間に預けた可能性はあります。

それからノートレットがカルド博士の娘だと、サリウスほどにガンダムをもう憎んでいないのは、妻の母親が開発した技術であり、妻の母もその大切な人々も殺めてしまったという罪悪感も合わさったのだとすれば、自分の幸せを放り捨てて仕事に従事し、それでも自分の側にいてくれるノートレットを深く愛して信頼する、それに対しても理由ができます。

長くなりましたが、御三家の子供たちと主人公二人には、イタリア語やラテン語圏の名前が含まれている。カルド博士も名前がラテン語で、時代をけん引する者がこれらを含んだ名前を有している可能性がある。

なぜ彼らがそんな大役を務めなければならないのか。それは彼らの先祖に由来があるんじゃないかと思います。

重工業、軍事、医療技術、政府


ベネリットグループの御三家ですが、それぞれの社名がジェターク・ヘビー・マシーナリー、グラスレー・ディフェンス・システムズ、ペイル・テクノロジーズで、重工業、軍事、医療技術の会社です。(ペイルは強化人士という改造人間を作っていて、医療技術GUNDに惹かれたベルメリアが選んでいるので、医療系の会社であろうと思われます)

で、重工業であるジェタークは惑星開拓やフロントを作るのに欠かせないモビルクラフトなどの重機を。グラスレーは政府所属の軍隊からの退役軍人の受け皿であり、恐らく政府がカバーできない民間の治安維持を担当。ペイルは宇宙で活動するためのインプラントアプリやワクチンの開発などの医療系全般を。

…この3社、多分それこそアド・ステラに年号が変わったぐらいの宇宙に進出し始めた黎明期から参加し、ぼろ儲けしたあの世界の勝ち組なのでは?そして地球をめちゃくちゃに荒らして宇宙に逃げた、富裕層です。

ノレアが「地球を汚して逃げたスペーシアンがどの口で」と言っていたので、地球が荒廃した原因を作ったのはスペーシアンです。そして荒廃具合なのですが、施設はツタに覆われて荒れ果てていて、なんだか人間がいなくなった世界のようです。デモの人たちも武器は火炎瓶など、車も私たちの見慣れたデザイン。ここだけ文明レベルが私たちと同じです。

実際人が少ないのかなとも感じますし、ロクな武器がないのはパーメットによるエネルギー効率の高さの恩恵を受けられない、パーメットが少ないという資源的な問題なのでしょうが、パーメットは太陽系に偏在する鉱物資源です。つまり量の多い少ないはあれ、太陽系のあらゆるところに存在が確認されている。そんな状況でまず地球で採掘を始めない理由があるでしょうか?

もうひとつ。地球を荒廃させる原因は戦争だけではありません。それはそれこそ、資源の採掘もまた環境を汚染させる原因となります。
鉱物を取るためには深くまで穴をあけ、土を大量に掘り起こす必要がある。現在でもレアアースの採掘は環境に負荷をかけています。本当に資源採掘には環境への多大な配慮が必要なのです。

そしてこれをやっちまったのが昔の政府ではないでしょうか?水星のパーメット採掘業者であるシン・セー公社ですが、「公社」とは政府が運営する特殊法人です。郵政公社なんかがそうですね。今は民営化されましたが。なのでシン・セー公社は今はベネリットグループ傘下なので民営化していると思いますが、元々は政府が運営しているはずです。

ということはつまり、パーメットの採掘は政府が主導となって行っていた可能性が高い。そしてまずは地球でパーメットを根こそぎ採掘したんじゃないでしょうか。あらゆる技術に転用でき、モビルスーツという巨大ロボットを実際に動かせるほどのエネルギー効率を実現するなど、まさに夢の元素です。
しかし多分途中で「環境がマズイことになってきてる」ということに気づき、宇宙の開拓とフロントの開発も始める。そうして環境汚染が進んだ地球と、何も知らない、気づき始めた人々を残して宇宙へと逃げた。この時連れて行ったのは、まさに選ばれたエリートたちであり、最先端の技術力を持った企業でしょうから、それらを一気に失った地球は重機のメンテナンス知識や部品開発のスキルがなくなり、医療技術も途絶え、報復しようにも戦う力や知識を持つ人もいない。

まさに「どの口が」という状況です。

さらには人もバタバタ亡くなったんじゃないでしょうか。パーメットは流入しすぎると人体を損ない、あるいは死に至らしめる危険性もある。多分モビルクラフトもパーメットの効率化が必要だと思うので、パーメット採掘はモビルクラフト開発よりも前に行われなければならなかった。密閉がそこまで強力でない重機で、パーメットは通してしまう防護マスクで仕事をするしかなかったとしたら、パーメット中毒によって死んでしまう人間はたくさんいたでしょう。

原因不明で処理されるけれども、多分データストームが起きないのでパーメットで死ぬこともよくわからない期間は長い。

やっとモビルクラフトができて安全に採掘できるようになったら、なんだか地球の環境がどんどん悪くなっている気がする…。さすがにおかしいんじゃないかと声が次々に上がるところで、政府高官や地方ではなく国の公務員、大企業が一斉に宇宙へ離脱。後に残されたのは、穴ぼこだらけで環境汚染が進んだ地球と、資金も技術も何もない人々だけだった。とすると、アーシアンがあれだけスペーシアンを憎むのはそりゃあそうです。しかも1世紀近く税金を、労働を、捧げてきた!とデモ隊が言っていますし、彼らは「地球居住民」なので籍は宇宙議会連合側が持っているので、まだ搾取してますね。それにモビルクラフトに乗っているので、資源採掘もまだやってます。こちらは鉄鉱石などかもしれませんが、まだ引き続きパーメットは多くはないんでしょうが採れるんでしょう。

それで次に開拓するのが水星って環境辛すぎだろって感じですが、月でも採れるようになったのは割と最近のようなので、月だとかなり深くまで採掘しないとまとまった量は採れなかったのでしょう。代わりに多分水星は比較的表層で採れて、あれだけの宇宙産業を支えるだけの量を採れることもわかったから、それなりに大量に移住したのでしょう。儲かれば割と炭鉱なんかにも人が集まるので。

そうしてヴィムの先代CEOがアーシアン蔑視がやたら激しく、スペーシアン全体としてアーシアンを蔑んでいるのも、そもそも最初から選ばれし者だから宇宙に行けたなら、元々が特別です。まぁ、とりあえず交渉しようとするサリウスからして、サリウスから下の世代はそういう歴史は忘れていそうな気がしますが。その割にはアーシアン蔑視が激しいですが、差別というのは元々、ささいなきっかけにストーリーが付いてきて大事になったり、もはや常識となってしまっているなど、そういう愚かな構造をはらんでいるので、スペーシアン優位の理由を忘れたから差別がなくなる、ということもまたないでしょう。
そもそもスペーシアンが特別というのも、この考察が正しければ間違った認識ですからね。たまたま先祖が辣腕でその後も必要な技術を持っていたから、たまたま宇宙へ行ける政府機関に属していたから宇宙に行けて、今も特権階級の地位にいられる。それだけです。

…なんだか宇宙の政府である宇宙議会連合がものすごいヤバイ組織になってますが、彼らはこうも言っています。「宇宙には新しいルールが必要だ」と。

この新しいルールというのは、シャディクも言っています。彼らが裏で手を組んでいるのかなと思いましたが、恐らくシャディクは地球側です。「プリンス」という呼称をされていましたが、あれは地球のテロリスト、対スペーシアン組織はフォルドの夜明け以外にいくつもあると思いますが、その全体から呼ばれているのだとすれば、シャディクは地球側の組織から旗頭として担がれている王子様です。となると、彼らは宇宙議会連合とは違うルールを定めようとしているはず。

恐らく宇宙議会連合の言う新しいルールは、宇宙がより有利となり、地球を完全に支配し管理するルールで、地球側のルールはその逆です。

宇宙議会連合が政府組織であるとすると、彼らにとって市民ナンバーのない、管理されていない人間が何人もいたり、治安が悪い今の地球は問題です。

地球からは宇宙の支配からの脱却が穏健派の望みで、過激派は宇宙を支配する逆転を狙っている。

シャディクは多分過激派寄りなんじゃないか?と思います。少なくとも今は。言うことを聞くし、無秩序ではないからなのかもしれませんが、フォルドの夜明けはスペーシアンとは言え民間人の被害は極力少なくしようとしていますし、「話し合いがしたい」という主張を信じるのなら、問答無用で暴力行為に訴えるタイプではありません。それに彼らの拠点では民間人と思われるテントや人々が生活していて、貧困層も抱え込んでいるようなので、武闘派と言うよりは彼らの未来を守るために立ち上がった、という感じがします。まぁナジはこういう依頼をされるのは慣れているリアクションをしていますし、これまでも何回かやり取りがあったようなので、完全にクリーンというわけではないでしょうが。(その割にはニカとパーティーまで面識なかったので、連絡役とすらメールだけで済ませてたんですかね)

そんな彼らをわざわざ使っているということは、彼らと志を同じくしているか、彼らを弾避けにするためか。そのどちらかなんじゃないかな~と思います。デリングを本当に葬り去りたかったら、もっと、それこそプラント・クエタを丸ごと爆破するような過激な組織へ依頼をすればいい。多分そういうヤバイ組織も地球にはいるはずです。

まぁフォルドの夜明けとしか取引をしていない可能性もありますが、シャディクは顔も明かさない慎重な人間なので、フォルドの夜明けだけと取り引きをしているとも思えないんですよね。やり取りもビジネスライクで、彼らに思い入れも見られないですし、ナジが交換条件を持ち出し、「それを確認したら連絡する」と、受けるか受けないかは自分たち次第だと優位に立って交渉を終えたら、露骨に「やれやれ」なため息をつきますし。

仮にシャディクが過激派の場合、ワンチャンフォルドの夜明けをジェターク社に潰させようとしてんのかな~とも思ってます。ヴィムがテロの首謀者であると明かされたら、ジェターク社はその責任を取って潰れるか、それとも責任を取ってそのテロ組織を潰すかの二択を迫られますし、そこでフォルドの夜明けの情報をもたらされたら全力で叩き潰すでしょう。いくらフォルドの夜明けがモビルスーツをもらって、ガンダムも持っているとはいえ、ドミニコス隊と正面衝突したら負けるようなので、あれだけの大艦隊を有しているジェターク社が本気で攻め込んだら恐らく勝てない。

そこでグエルが、もしフォルドの夜明けに回収されていたらキーになるのかな~なんて思ってたりします。シャディクとしては、父親だけでなくグエルもテロ組織に手を貸しているということで二倍のダメージを与えようと考えたとして、逆にラウダとしては兄の居場所なんて重要情報をくれてありがとうという感じで、フォルドの夜明けは置いといてグエルを回収することを優先するはずです。フォルドの夜明けは実際いつでも潰せるとしたらなおさら。

というか、サリウスのことを巻き込むだのなんだの言ってますが、一回デリングに煮え湯を飲まされたサリウスが、またも裏切りを許すかって言われたら許さないんじゃね?と思ったりもするので、どうなんですかね?今度はシャディクが踊らされる側になるんじゃないですかね?

というのはさておいて。シャディクは今の段階だと、フォルドの夜明けにそう関心がないとしたら、逆にフォルドの夜明けを潰すために今回のテロを起こした可能性もあります。デリングが死ねば最高、死ななくてもジェターク社を弱体化できるし、フォルドの夜明けを始末もできるし、その過程でさらにジェターク社が弱体化していく。結果的にパワーバランスが狂えば、ベネリットグループはグラスレーが握るか、自ずと解体される。

とまぁ、シャディクの現段階のプランはそんな感じですかね。そして大きな目標としては、スペーシアンとアーシアンの権力バランスの逆転だとすると、まぁ~実現するにしろしないにしろ、おびただしい量の血が流れるでしょうね。そして多分、絶対に上手くいかない。それは現在の権力構造の焼き直しにすぎないので、次はスペーシアンを蔑むアーシアンと、アーシアンを憎むスペーシアンが生まれるだけです。

しょせん私の妄想なので、絶対違うとは思いますが。しかし一応視野は地球と宇宙全体で、ガンダムのことのみに注視しているサリウスよりは広い。
今まで虐げられていた人々が上に立つのだから、負の連鎖が止まると考えるのは、子供が考える青臭い理想像でもあるのですが、アーシアンサイドが過ぎるので、シャディクの裏にいるのがガンダムを作る組織とすると、まーた繋がってきちゃうんですよねぇ…なぜ孤児でしかなかったはずのシャディクを知っているのか、なぜシャディクを使っているのか。それはプロスペラが開発したGUND技術によって生まれたからで、そのバックにいたのもまたそいつらだったから。とかね。

さて、まとめると、ジェターク、グラスレー、ペイルは、アド・ステラ黎明期に力を伸ばした企業で、宇宙議会連合は国連のような政府組織であり、彼らは地球でやりたい放題環境破壊をして宇宙に逃げ、それが今でも続くアーシアンとスペーシアンの闘争と憎しみの連鎖になっている。

とすると、誰かがこの問題を解決しなければならず、御三家の子供たちはまさにその当事者となります。

今のところは、
ミオリネとスレッタはガンダム問題の解決。
シャディクはアーシアンとスペーシアンの差別問題の解決。
が、それぞれの頭の中にある解決しなければいけないリストでしょうか。

となると、ただ単にガンダムの問題を解決して終わりでも、差別構造を解決して終わりでもなく、両方を解決しなければハッピーエンドにはならないはず。

エランは、エラン本人は関係ないですが、強化人士は差別問題とガンダム問題どちらとも自分事の問題。
グエルとラウダはどっちも直接関係ないんですが、親の因果が子に報う形で解決するためにドタバタするんじゃないかなと思います。

またジェターク家が特異点みたいになってますが、実際あの家は色々と問題を発生させもすれば、問題を解決する力もある、そういう騒動の中心になる運命なんだと思います。

先に命名規則について話しましたが、父親であるヴィムも「Vim」というラテン語で「力」を表す名前を持っています。ラテン語は古代ローマの言語なので、彼もまた時代をけん引する力があったはずの人です。

で、力に相当するものなんですが、この人実はその生き方はローマ神話のマルスに相当する人だったんじゃないかな~と思います。

マルスはローマ建国の祖、ロムルスとレムスの双子の父親です。この双子はまたアエネーイスの登場人物たちの子孫なので、ここでもまたアド・アストラとの繋がりが生まれるというか、直球にアド・ステラを始めた一族になります。双子なので母親は一人ですが、元は「イリア」と呼ばれていて、その後「レア・シルウィア」と呼ばれるようになったので、イリアとシルウィアを双子の関係とすると、母親が双子の姉妹だったんじゃないか?という私の考察とは矛盾がなくなります。まぁアエネーイスでは、直球に異母兄弟も出ますし、ロムルスとレムスは最終的に殺しあっちゃうんですが…ラウダは別にグエルが継ぎたいなら邪魔はしないでしょうからここら辺の喧嘩は多分ないから大丈夫というか、二つの物語をもしかしたら合体させてたりしませんかね?物語では語られませんが、ローマ神話では主人公アエネーアースの長男アスカニアスは次男シルウィウスが成人したら順当に国を譲ったりしているので、異母兄弟でだいぶ彼らは年も離れていますが兄弟仲は悪くない。

まぁそれはともかくとして。さらに規則に則るなら、ヴィムも他人の心がわかるパーメットの情報共有能力が高い人間となりますが…グエルに「信じて欲しければ」とか二人が会社のことを持ちだしたら黙ることを知っていたので、もしかしたら持ってたかもしれませんね。カルド博士と同じで、GUNDを装備したらわかる人はわかるようになるとするなら、矛盾もない。

で、このマルスという神は、ローマ神話では戦争の神ではありますが、勇敢な戦士として広く崇められた神で、ド直球に性別記号である♂は元々マルスを表すものです。ただ同一視されるギリシャ神話のアレスは嫌われ者で、同じ戦いの神であるアテネと差別化されたのか粗野な乱暴者として扱われます。

それでこの関係性をヴィムに当てはめてみると、奥さんがいた頃はマルスで、死んでからはアレスになってしまったんじゃないかなと思います。恐らくディランザを開発した頃は、代替わり直後か直前かで、奥さんたちと付き合っていたか結婚したばかりの頃でしょうし、奥さんたちの安全性を考えて手術を許すというのも間違った考えではない。しかし今はご覧の通り、息子たちに恐怖政治を敷き、サリウスからは「ガサツ」と、言い換えると粗野であると言われています。

んでこの「変質」というのも水星の魔女にとっては恐らく大事な要素で、エルノラは髪を黒く染めてプロスペラとなり、ベルメリアは本当は医療を研究したかったのに真逆の方向に行って、エルノラよりも若いはずなのにそれよりも老け込んでしまっている。

ただどれだけ変わろうと人間の本質は変わらないものであり、それはきっと素晴らしい未来を築くことができるのだ。というのもまたメッセージなのかな、と一期終了時点で早すぎますが感じます。

ヴィムは死という事態に出るのがその人の本性であるのなら、子供を深く愛する父親こそが本質。
デリングもまた、妻を愛しミオリネを命がけで守ったことが本質。

この二人はいい親とは言えませんが、本質はいい親だった。でもそうはなれなかった。

エルノラもまた、本来は子煩悩で、夫を愛する女性です。しかしプロスペラになっている今では、娘すらも利用する冷酷さを見せている。しかしエアリアル、その中にいるエリクトには変わらず深い愛情を向けている。だから本質自体は変わってはいない。

その人の本質とは、ありのままの自分です。それらを隠す必要なんてないし、思い通りに生きることこそが、未来をより良く導く原動力である。

子供たちの本質


思春期真っただ中で、彼らはどんどん変わっていく年齢でもありますが、その本質というのは見えます。

ミオリネは一緒に手を取り合った人間の手を離さない、一緒に未来を見ようと引っ張って、その人の盾になって守る一途な人間です。

スレッタは虐げられている人を見過ごすことができない、グエルを叩いた時には呪文を唱えていないので(多分)、本当は「進めば二つ」という呪文がなくても立ち向かえる勇気ある人です。

シャディクは、スレッタが苦しんでいるのに眉をくもらせ、ミオリネの感情をおもんばかって動けなくなってしまう、他者の感情を察して自分も同調してしまう優しい男です。

グエルは、まぁ思い込んだらそれしか見えなくなってしまう短絡的な思考の持ち主でもありますが、逆に一つのことを追求して極める、地道な努力と根気を持った、根性のある人間です。

ラウダは…まぁ彼は多分徹頭徹尾変わらないですね。兄が大事で、ジェタークが大事で、そのためなら自分を犠牲にすることもいとわない、深い愛情の持ち主です。

エランは…まぁまだわかんないんですが。彼自身あけすけに言っているようで、まだ本質を出していない気がするので何とも言えませんが…仮に現状に不満を持っているのだとすれば、飼い殺しにされてもそれに甘んじない、賢さと反発心を持つ結構熱い男なのかもしれません。

それで、それぞれの本質や、今の段階で築かれているそれぞれのパーソナリティを考えると、それぞれの生業が一番それぞれの特性に合っているのかな、と思います。

グエルはヴィムのように人を引っ張って行く大将肌で、シャディクは集団戦に適した作戦立案能力と長期的な目標を立てる能力がある。

ミオリネは地球を目指すように新しい場所を目指すバイタリティがあり、スレッタはそんなミオリネを支えることに喜びを感じている。

エランは、今の時点では何とも言えませんが、強化人士の問題は多分彼自身が解決しなければならない問題なんじゃないかなと思います。

ラウダは、言わずもがなグエルと一緒に、というのが穏当ですが、デリングが色々兼ね役をしているので、これのどれかを引き継ぐ羽目になったりすると面白いな~と思っていたりします。彼は公正な人間であると示されているので、私情を挟まないでジェタークの未来のためになるのなら、一生の何割かの時間を割いてもいいと考えられるのも彼ぐらいなので。その場合、ミオリネとセセリアが同僚でも面白いですね。だいたい監査役が一人って言うのも異常ですから、カテドラルが残るとしたら複数人での運用にするはずです。野放しにしとくとあの世界の民間企業も政府も何しでかすかわからないので、抑止力はしばらくでもいなきゃならんと考えると、それができるのは今のところ自分を曲げないミオリネと、第三者に徹することができるセセリアと、和を乱すことをよしとしないラウダなのかなと。

アニメの未来を語るなんて鬼が笑うでしょうが、大人に翻弄される立場から、世界をけん引し、かつての自分たちと同じ若い世代を守る大人へと成長していく。そういう可能性もまた、あるのだと思います。

まとめ


水星の魔女世界は、今現在は親世代が引き起こした嵐に覆われてしまっているが、本来は子供世代を中心としたオズの魔法使いの世界で、それぞれの主要な子供たちにその登場人物のエッセンスが垣間見える。そしてアド・ステラはアド・アストラの世界で、カルド博士や子供たちにイタリア圏の言葉が確認できるので、恐らくこのグループは世界をけん引する運命を背負っている。そうであるならば、オズの魔法使いの通り、6人の子供たち全員が大切なものを見つけて揃わなければ、ハッピーエンドへは至らないのではないか?

色々と考察してきて、いつも楽観的な結論に至ってしまって、もし誰かが欠けたら立ち直れなさそうなのですが、しかしこれは学生たちの物語で、これからの若い世代の物語で、彼らは性格が悪かったりもしますが一所懸命に生きて足掻いている子供たちです。

だったら最後は「めでたしめでたし」で終わって欲しいなと、そう思っています。

次回は、シュバルゼッテを中心に、あれって本当に呪いを引き継いでいるモビルスーツなの?むしろ呪いを克服するためのガンダムなんじゃないの?というところを考察していきたいと思います。ラウダもグエルも死なせるもんか、ジェターク社が!という考察です。

ちなみに、胡乱がすぎるなと考察本編には入れませんでしたが、ラウダをオズの魔法使いと思う根拠は、パー・アデュア・アト・アルタがオズの魔法使いの本名で、アデュアとアルタの二つとも発音が「AUA」、ラウダも「AUA」っていうところとか、あとアルタとラウダで、綺麗にア行ラ行タ行が、ラ行ア行タ行に移行しているとか。ラウダはイタリア語の単語もモチーフになっているので、ものすごい偶然だとは思いますが。

あと流れ的に入れられませんでしたが、ラウダのNeilの姓がアイルランドの人名で、グエルが獅子がモチーフなので最初ラウダはマーリンで、グエルを王とするキングメーカーの役割なのかなと思ったのですが、グエルの考察を深くするとどうにもこうにもオズの魔法使いの臆病なライオンの方が似合ってるな…他の登場人物もすっきり入れられるし。と、最終的に上記の結論に至りましたが、もう一つアイルランドとかあそこら辺はケルト神話の国であり、北欧神話のセイズと違い、ドルイドは男女どちらでも問題なく活動できるので、ラウダはドルイドもモチーフに入れられてるのかな~と思います。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。