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蕁麻疹様血管炎 Urticarial Vasculitis

Kelleyの免疫複合体性血管炎をまとめていたときにできた蕁麻疹様血管炎について、知識がなさすぎるのでまとめました。
小血管炎は、免疫複合体が沈着しないANCA関連血管炎と免疫複合体性血管炎の病態に分けられる。後者の詳細は以下のリンク先にまとめてあります。

小血管炎の全体像

免疫複合体性血管炎の代表が、IgA血管炎とクリオグロブリン血症性血管炎があり、そのならびにあるのが、低補体血症性蕁麻疹様血管炎(= 抗C1q血管炎)が出てくる。

蕁麻疹様血管炎と普通の蕁麻疹の違い

概要
蕁麻疹様血管炎は、組織学的に白血球破砕性血管炎の像を伴う、免疫複合体性血管炎にカテゴライズされる血管炎症候群の一つ。
・一般的な蕁麻疹とは異なり、紫外線病変はそう痒に加えて中等度の疼痛、熱感および圧痛を伴うことが多く、皮疹は24時間以上持続する。
・Chapel Hill分類2012年では、低補体血症性蕁麻疹様血管炎(Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis Syndrome)としてい正式に採用され注目された。別名、抗C1q血管炎とも呼ばれる。
・SLEやウイルス感染(B, C型肝炎)や薬剤などの基礎疾患を伴う二次性のものと、そうではない一次性がある。

蕁麻疹様血管炎の分類
・蕁麻疹様血管炎(UV)は3つの症候群である: 正補体血症性UV、低補体血症性UV(HUV, 抗C1q血管炎)、そしてHUVの重症型の低補体血症性UV症候群(HUVS: Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis Syndrome)。
正補体血症性UVは、補体が正常で一般的には予後良好。
低補体血症性UV症候群(HUVS)は、HUVの重症版で様々な全身所見(関節炎、糸球体腎炎、ぶどう膜炎・胸膜炎、腹痛)と低補体を伴う6ヶ月以上の蕁麻疹を伴う免疫疾患。以下は提案されている診断基準だが特異性は低いため、皮膚生検は必須。

■ 低補体血症性蕁麻疹様血管炎症候群(HUVS)の診断基準
必須項目2つ
6ヵ月以上の蕁麻疹
・低補体血症
以下に小項目2つを満たすと
真皮の静脈炎(生検で確定)
・関節痛または関節炎
・軽度の糸球体腎炎
・ぶどう膜炎または上強膜炎
・再発性の腹痛
・C1q低値

Mayo Clin Proc. 1982;57(4):231.

低補体血症性UV(HUV)は上記のHUVSの基準を満たさないもので、多くは全身所見はない皮膚症状だけの蕁麻疹様血管炎。

低補体血症性蕁麻疹様血管炎(HUV)とSLE

・HUVはSLEと重なる慢性疾患であり、低補体、自己抗体、真皮・表皮接合部の補体および免疫グロブリンの沈着(ループスバンドと同じ)が特徴である。
・低補体血症性蕁麻疹様血管炎症例の54%はSLEと診断されている。正補体血症性蕁麻疹様血管炎のなかのSLEはわずか3%(Int J Dermatol 2006; 45: 1057-1061, J Am Acad Dermatol 1998; 38: 899-905)。
・抗C1q抗体はSLEの30%で陽性になり、活動性ループ腎炎では70%が陽性になる(Ann Rheum Dis 64 : 444, 2005)
・SLEがあればループス血管炎と診断される。
・ただしHUVSはSLEに典型的ではない臓器障害を伴う重症型であり、ぶどう膜炎やCOPD、血管浮腫を伴うこともある。

皮膚症状
蕁麻疹様血管炎は一般的な蕁麻疹とは異なり、紫外線病変はそう痒に加えて中等度の疼痛、熱感および圧痛を伴うことが多い。
・皮膚病変は求心性で体幹および近位四肢に好発する。
・一般的な蕁麻疹は通常24~48時間以内に完全に消失するのに対し、慢性蕁麻疹様血管炎では2/3が24時間以上でときに72時間持続することもあり、35%で紫斑や色素沈着残存する。蕁麻疹よりも紫斑が優位に現れることもある。
・血管炎が真皮深層および粘膜下層(毛細血管または毛細血管後静脈)まで及ぶと、血管浮腫を呈することがある(Table1)。

皮膚生検のreviewをみてみると42%で血管浮腫あり
Urticarial vasculitis: a histopathologic and clinical review of 72 cases, J Am Acad Dermatol. 1992 Mar;26(3 Pt 2):441-8.


小項目に出てくる症状について
・関節痛は50%程度、通常は一過性で遊走性。
J Am Acad Dermatol. 1982;7(5):599.
・軽度の腎炎はHUVSで14%という報告。
・目の症状は多めの報告で50%。
Clin Rev Allergy Immunol. 2002;23(2):201.
・腹部症状は1/3程度(腹痛、嘔気嘔吐、下痢)、消化管出血はなし

疑ったときに提出する検査

一般的な血算、生化学、尿検査、HBs抗原、HCV抗体、抗核抗体、ds-DNA抗体、ANCA2つ、RF/抗CCP抗体、免疫電気泳動/免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比、クリオグロブリン、IgG、IgA、IgM、補体(CH50、C3、C4、C1q値)、抗C1q抗体、他の小血管炎も考慮して

Schnitzler症候群
・慢性蕁麻疹とIgM-κ型モノクローナル性ガンマグロブリン血症を呈する、まれな自己炎症性疾患。
・皮膚生検では自己炎症性らしく好中球中心のneutrophilic urticariaを示すが25%でleukocytoclastic vasculitisの所見がでる。- Semin Arthritis Rheum, 37:137‒148, 2007
・蕁麻疹様血管炎と間違えうるので、セットで抑えておきたい。

皮膚生検 (必須)
・皮膚生検は白血球破砕性血管炎で、免疫染色は真皮表層の血管周囲に免疫複合体が沈着し、真皮-表皮接合部に沿って免疫グロブリンと補体が顕著に沈着する。Ⅲ型アレルギーでの免疫複合体性血管炎に分類される所以である。
・低補体血症性蕁麻疹様血管炎では免疫グロブリン・補体の沈着は9割程度、正補体血症性では2-3割程度で認める。
J Am Acad Dermatol 1992; 26: 441-448.
・lupusバンドは低補体血症性蕁麻疹様血管炎でほぼ100%だが正補体血症性ではほとんど認めない。421).
J Am Acad Dermatol 1998; 38: 899-905

治療

・軽症であれば抗ヒスタミン薬やNSAIDs。
・それでもだめならSLEの皮疹に準じた低用量のプレドニン、ヒドロキシクロロキン、ダプソンなどを用いる。
・重症例、特に糸球体腎炎や他の重篤な臓器病変を呈する症例では、高用量のステロイドやリツキシマブなどの生物学的製剤、MMFやTacなどの免疫抑制剤が必要になることがある。
・COPDや心臓弁の異常もHUVSと関連しており、特異的な治療を必要とすることがある。

改めて勉強しましたが、興味深いですね、蕁麻疹様血管炎。


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