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86章-1 SLEの治療(総論+薬剤編)Treatment of Systemic Lupus Erythematosus

Kelley86章

皆が大好きSLEの治療。今回はボリュームが多いので2つに分けます。まずは総論+薬剤編。臓器別は次回(↓)にします。 
https://note.com/takenouchi14/n/na8068b53e179?magazine_key=mc6f8754860ed

全体のキーポイント

  1. 全身性エリテマトーデス(SLE)の治療により、寛解を目指すか、それが不可能な場合は、疾患活動性をできるだけ低くし、再燃を予防する。

  2. 薬による副作用は、特にグルココルチコイドによる毒性は最小限に抑えるべきである。

  3. ヒドロキシクロロキン(HCQ)は禁忌の i’mないすべてのSLE患者に推奨される。

  4. ヒドロキシクロロキンの投与量は実質体重で5mg/kgを超えないようにし、投与時、5年後、その後は1年ごとに眼科的評価を行う。

  5. 重症で主要臓器に病変のあるSLEは、通常、高用量のグルココルチコイド(GC)とシクロホスファミド(CYC)静注によるパルス療法で治療する。

  6. 中等度の重症ループス腎炎では、MMFはCYCと同等の効果があり、副作用プロファイルも優れている。

  7. ループス腎炎の維持療法はMMFまたはアザチオプリン(AZA)のいずれかが推奨される。

  8. ベリムマブ(抗BAFF)は、標準治療にもかかわらず疾患活動性が持続する症例や再燃が頻発する症例、あるいはGCを十分漸減できない場合に考慮すべきである。

  9. 重症例や難治例にはリツキシマブ(抗CD20)を使用することがある。

  10. 妊娠前のカウンセリングと妊娠計画は、妊娠を成功させるために不可欠である。

Clinical Course and General Treatment Strategy- 臨床経過と一般的治療戦略

一般的治療戦略のキーポイント

  1. 中等度または重度のSLEの治療には、最初に集中的な導入療法を行い、その後、あまり強くない維持療法を行う。

  2. SLE患者のうち、長期間疾患活動性がない患者はごく一部である。

Pearl: SLEの患者で長期間活動性がないのはごく一部のみである

Comment: Recent studies have shown that an equal number of patients have continuously active disease, and only a small proportion experience long periods of disease quiescence. 
・SLEは通常、再発寛解型の経過をとる。
・引用されている3つのうちの1つ、J Rheumatol. 2014 Sep;41(9):1808-16.をみてみると
長期寛解の定義はSLEDAI-2Kでの寛解が5年以上で、抗マラリア薬はOK、コルチコステロイドや免疫抑制剤なし。
・平均寛解期間は11.5±6.4年、2.4%が長期寛解を達成 、71.0%が再発・寛解型であり、28.9%が単相性の経過であった。
・また、ステロイド and/or 免疫抑制剤を服用ありの長期寛解は2.1%、平均寛解期間は8.5±2.9年であり、35.3%が疾患の再燃を経験した。
・つまり、ヒドロキシクロロキンのみで5年以上の寛解は稀だということです。
・一般にSLEの患者は年1回程度minorフレア以上を経験すると言われています。
・SLEの持続的な炎症は臓器障害を引き起こし、QOLの低下や死亡率の上昇させます。

治療目標を達成するために必要なこと
(1)疾患活動性と再燃の正確な評価
(2)標的臓器病変の重症度による患者の層別化
(3)寛解を速やかに誘導し再燃を予防するための安全で効果的な薬剤の使用
(4)疾患と治療に関連する合併症の予防と管理

Myth: 主治医と患者の「寛解」という認識はおおよそ一致する

Reality: Indeed, patients considered to be in “remission” by their treating physicians often report a considerable residual symptom burden; important contributors include fatigue, fibromyalgia, depression, and cognitive dysfunction. 
・医師が「寛解」とみなした患者も、かなりの症状をもっていることが多い。
・疲労、線維筋痛症、うつ病、認知機能障害などがあげられる。
・よって、医師は疾患活動性を下げることだけでなく、患者がこれらの症状があるということを認識し、対応する必要がある。
・さらには感染症や心血管疾患のリスク軽減策などの一次予防戦略も重要になる。
・つまりはSLEの治療だけでなく、後遺症や疲労感などにも気を配り、ワクチンや心血管予防などのヘルスメンテナンスを漏れなくする必要があるということです。

Pearl: 医師は患者を自分自身の健康状態や治療内容についての専門家として認識し、治療選択の意思決定に参加させることが推奨されている BMJ 327(7414):542– 545, 2003.

Comment: Health professionals are encouraged to involve patients in treatment decisions, recognizing them as experts with a unique knowledge of their own health and their preferences for treatments and outcomes. 

・患者を尊重して、丁寧に薬剤のリスクとベネフィットを認識して治療決定に参加してもらいましょう。日焼け止めを塗るのも、禁煙するのも、薬を飲むのも、通院するのも患者の判断になります。彼ら彼女らしい人生を主体的に送ってもらうために、creative selfをサポートするのが我々の役割です。自分でオールを漕いで日々の人生を送って持ってもらいましょう。よーそろー。

Generalism Now!から

Drugs Used in the Treatment of Systemic Lupus Erythematosus

全身性エリテマトーデスの治療に使用される薬剤のキーポイント

  1. 維持療法では、グルココルチコイドの投与量をプレドニゾン7.5mg/日未満を目指し、可能であれば休薬すべきである。

  2. 初期にメチルプレドニゾロンのパルス療法を行うことで、グルココルチコイドを温存できる可能性がある。

  3. ヒドロキシクロロキンはすべてのSLE患者に推奨される。

  4. 重要臓器に重度の障害がある場合はCYC(シクロフォスファミド)のパルス静注が推奨される。

  5. MMFは、中等度の増殖性ループス腎炎(PLN)においてCYCと同等に有効であり、副作用プロファイルも良好である。

  6. カルシニューリン阻害薬は難治性LNに使用でき、通常はMMFと併用する。

  7. ベリムマブは、標準治療にもかかわらず活動性が中等度あるSLEに対して承認されている。

  8. リツキシマブは、免疫抑制療法に抵抗性の重症例に試みられている。

  9. ループスに対する新薬の承認は、疾患の不均一性や臨床試験デザインに異論があるため困難である。

グルココルチコイド(GC)

Pearl: 免疫抑制剤を使用する場合は、感染症やその他の副作用が心配のため、GCの用量が0.5~0.6mg/kg/dayを超えることはほとんどない。

Comment: When combined with immunosuppressive agents, the GC dose should rarely exceed 0.5 to 0.6 mg/kg due to concerns for infections and other toxicities.

Pearl: GCの漸減は治療開始後4週間以降に開始し、6ヵ月後に1日最大投与量7.5mgを目標とする

Comment: Tapering of GC dose may start after the first 4 weeks of therapy, targeting a maximum daily dose of 7.5 mg after 6 months. Concomitant use of immunosuppressive agents facilitates tapering and decreases cumulative GC toxicity.
・低用量GC療法(プレドニゾン換算で1日10mg以下)は、ヒドロキシクロロキンが使えないかそれでは不十分な場合に用いられる。
・中等症から重症の場合は、GCは免疫抑制剤との併用が望ましい。
・通常午前中に0.5~0.7mg/kg分1で投与する。
・免疫抑制剤と併用する場合、感染症やその他の副作用が懸念されるため、GCの用量が0.5~0.6mg/kgを超えることはほとんどない。Eularのrecommendationの腎炎でも、パルス後0.3-0.5mg/kg/day depending on severity、となっています。
・GCの漸減は治療開始後4週間以降に開始し、6ヵ月後に1日最大投与量7.5mgを目標とする。できる限り5mg未満を早めに達成するのを目標にします。
・1mg/kg/dayから初めて-10mg/weekで減らしていけば最終的には同じ感じになりそうですが、最初のステロイド量は減ってきていますね。時代は変わってきているのでしょうか。
・免疫抑制剤の併用によりGCの累積用量は減り、副作用も減少する。
・重症で急速に進行する場合や、PSL 0.6mg/kg/日を超える用量が必要の場合は、GCパルス療法を導入する。
・パルス療法はメチルプレドニゾロンの静注パルス療法(250~1000mg/日、1~3日間連続)。これにより寛解を早め、導入期のGC用量を少なくできる可能性がある。
・GCの副作用は早期(気分障害、にきび、筋肉痛、感染症)、後期(代謝性)、晩期(骨粗鬆症、血管骨壊死、白内障、心血管疾患)がある。
・プレドニゾン換算で6~7.5mg/日を超えるGCの慢性投与は、不可逆的な臓器障害のリスクが明らかに増大します。

Pearl: HCQによる網膜症を検出するための、より感度の高い高度なスクリーニング技術(10-2視野およびスペクトル領域-光干渉断層計)により、網膜症は当初考えられていたよりも有病率が高い可能性が示唆されている。そのリスクは長期使用者(10年以上)では10%以上に達する可能性がある。 JAMA Ophthalmol 132(12):1453–1460, 2014.


Comment: Advanced, more sensitive screening techniques for the detection of HCQ-induced retinopathy (10-2 visual fields and spectral domain-optical coherence tomography) suggest that the latter may be more prevalent than originally believed; the risk may reach 10% or more among long-term users (more than 10 years).

・hydroxychloroquine(ヒドロキシクロロキン: HCQ)を中心とする抗マラリア薬は、SLE治療のアンカードラッグである。
・前向き観察研究では、HCQの使用と不可逆的臓器障害および死亡率との間に逆相関があることが報告されている。さらに、先天性心ブロックの予防、抗リン脂質抗体を有する患者における血栓症リスクの低下まで、さまざまな効果が報告されている。
・HCQの忍容性は良好で、軽度の胃腸障害や皮膚障害がある。
・HCQの副作用の最大の懸念事項は網膜毒性のリスクである。
・HCQによる網膜症を検出するための、より感度の高い高度なスクリーニング技術(10-2視野およびスペクトル領域-光干渉断層計)により、網膜症は当初考えられていたよりも有病率が高い可能性が示唆されている。そのリスクは長期使用者(10年以上)では10%以上に達する可能性がある。 
・1日の投与量が実重量で5mg/kgを超え、使用期間が5年以上、特に10年を超える場合は、特に網膜毒性のリスクが高くなる。
・投与時のベース、ベースラインが正常であれば5年後、その後は毎年、定期的な眼科的評価が推奨される。 
・ということで、5年以上のHCQのみでの寛解など、かなり落ち着いた場合は、HCQを減量することも選択肢になります。皆さん減らしているようです。

Pearl: メトトレキサート(MTX)は、軽度から中等度のSLE、特に関節症状や皮膚症状に用いる。

 
Comment: Methotrexate (MTX) is a steroid-sparing treatment in mild to moderate SLE, particularly for articular and cutaneous manifestations.
・MTXは関節症状または皮膚症状で使うことにより、ステロイドを減らす効果が期待できます。
・あるSystematic reviewでは、MTXはSLE疾患活動性指数(SLEDAI)が有意に低下し(OR= 0.44)、GCの平均投与量が有意に減少させています(OR= 0.34) 
Arthritis Rheum 59(12):1796–1804, 2008.

Pearl: 重症のループス腎炎では、CYC(シクロフォスファミド) の静注パルス療法(0.5~1g/m 2)を毎月 7 回行い、その後維持療法を行う。ほとんどの重症例で導入期間中にステロイドパルスを毎月1回行う。

Comment: Severe forms of proliferative LN (i.e., with acute reduction in GFR and/or adverse renal biopsy findings) may be treated with seven monthly pulses of IV CYC (0.5 to 1 g/m 2 ), followed by maintenance therapy (see later in the chapter). In most severe cases, monthly pulses of IV MP may be given during the induction period.
・ループス腎炎にはCYCは使わないと教育を受けてきましたので、使ったことがありませんがここでは重症では使えと書いてあります。実際使っている病院もあると思います。
・CYCの適応は、一番は神経ループスです。神経ループスだけはCYCを使うと、習ってきました。他にも重症血小板減少症(血小板数20,000/mm 3未満)、重症心臓・肺症状、広範な皮膚疾患など、生命を脅かすか難治性の腎外ループス症状に対して使います。副作用は怖いが最強の武器がCYC。
・CYCの患者のリンパ球数のNadirは7~10日目、顆粒球数のNadirは10~14日目。副作用は脱毛症や吐き気、感染症(特に帯状疱疹)。稀だが悪性腫瘍(膀胱毒性やがんを含む)は要注意。
・女性の卵巣機能不全が主な懸念事項であり、その発現はCYCの累積投与量と患者の年齢に依存します。低用量のCYCレジメンは、早発卵巣不全のリスクが有意に低いです。ここで有名なのがEuro-Lupus。
・白人の軽症LN患者を対象としたEuro-Lupus Nephritis Trialでは、低用量CYC静注療法(1回500mgを2週間に6回、mPSL静注750mgを1日3回併用)とアザチオプリン(AZA)による維持療法は、高用量CYC静注療法(8回)と比較して有効性が同等で、副作用も少なかった。 10年後の平均生存率は両群とも92%で、低用量CYC静注療法は、卵巣機能不全が少なく、中等度重症LN患者の代替選択肢となりうる、と書いてあります。
・Europ-Lupusレジメンが低用量、高用量がNIHプロトコールと呼びます。
・この書き方だと超重症は高用量CYC、と読めます。
・Eularの腎炎の治療でも、In patients with organ-threatening or life-threatening disease,intravenous cyclophosphamide (2b/C) should be considered; in refractory cases, rituximab (2b/C) may be considered.と書いてあります。ただ、難治の定義が発揮しないため、NPループス以外で、いつCYCを使うのか、high doseのCYCをいくのか判断が分かれるところです。 血球貪食症候群などlife-threateningであればhigh dose CYCは皆さんいくと思います。

Pearl: アザチオプリン(AZA) 2~2.5mg/kg/日は、感染症のリスクを有意に増加させることなく、長期的に安全である。

Comment: Azathioprine (AZA) inhibits the conversion of purine bases such as inosine to adenine and guanine ribonucleotides. AZA (2 to 2.5 mg/kg/day) is safe in the long term with no significant increase in the risk for infections.
・この長期的に安全性をうたった根拠文献は、、、載っていない。おいkelley!
・いまやスーパーサブ的な立ち位置のAZA。日本ではNUDT15遺伝子が測定できるようになってから安全に使えるようになりました。昔は怖かった....
https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/043222401
・キサンチンオキシダーゼ(AZAを代謝する酵素)を阻害するアロプリノールの併用は禁忌です。
・Aspreva Lupus Management Study (ALMS)では、CYC静注療法またはMMF静注療法による導入療法を受けた患者において、AZA群ではMMF群に比べて腎炎再発が増えています。Nephrol Dial Transplant 27(5):1924–1930, 2012.
・AZAを使うときはおおよそMMFが使えないとき、特に妊娠のときでしょうか。

Pearl: ミコフェノール酸モフェチル(MMF)はループス腎炎、ならびに腎外病変(全身症状、皮膚、筋骨格系、血液)でCYCパルス静注療法と同等の効果がある。

Comment
①Several RCTs have demonstrated equal or even superior efficacy of MMF versus CYC in inducing renal response in PLN(増殖性ループス腎炎).  J Am Soc Nephrol 20(5):1103–1112, 2009.
②Post-hoc analysis of the ALMS data showed that MMF was equally efficacious with IV CYC pulse therapy on controlling extrarenal disease activity, particularly in the general, mucocutaneous, musculoskeletal, and hematologic domains. Arthritis Rheum 62(1):211–221, 2010.
薬理学
・MMFはSLEにおいて CYC並の強力な効果を発揮します。注意点はMMFには強い催奇形性があり、妊娠中の投与は避けるべき、ということです。
・ループス腎炎では、導入療法と維持療法、療法に使えます。増殖性ループス腎炎(PLN)と膜性腎症療法に第一選択で使えます。PLNとはLN classⅢ/Ⅳにあたります。
・増殖性ループス腎炎(PLN)の導入療法では、いくつかのRCTでMMFとCYCが同等、あるいはそれ以上の有効性を示している。
・しかしながら、LNにおける最大のRCTの1つであるALMSでは、MMF(2~3g/日)はCYC(0.5~1g/m 2)の月1回パルス静注(いずれも経口プレドニゾン(最大開始用量60mg/日)との併用療法)と比べて優越性は証明されませんでした。- 6ヵ月後の奏効率は、MMF投与群で56%、CYC静注療法群で53%、事後解析では、黒人およびヒスパニック系患者におけるMMFの優越性が示唆され、ベースライン時に腎機能が不良であった患者のサブグループでは非劣性が示唆されています。
・副作用は少ないためMMFはPLN、特に卵巣機能不全が心配な症例では第一選択薬と考えらています。
・膜性腎症のデータでもMMF治療とCYC静注治療は、ほぼ同等のネフローゼ症候群寛解率が示されており、MMFはMNの第一選択薬として推奨されています。Kidney Int 77(2):152–160, 2010.
・PLNの維持療法について。MMF と AZA を比較した RCT のメタアナでは3 年間の腎寛解だったが、AZA の腎再発率のRR 1.45、白血球減少 RR 7.1であり、PLNの第一選択もMMFになります。
・腎外ループスへの使用。ALMSデータの事後解析によると、MMFはCYCパルス静注療法と同等に腎外疾患活動性、特に全身、皮膚、筋骨格系、血液学的領域のコントロールに有効であった。Ann Rheum Dis 76(9):1575–1582, 2017.

Pearl:膠原病領域でのシクロスポリンの使用量でめったに血中濃度を測定する必要はない。

Comment: Drug concentration is measured in whole blood, but this is rarely necessary in autoimmune diseases, unless CsA is used in doses greater than or equal to 3 mg/kg/day. 
・3mg/kg/日程度であれば、血中濃度を測定する必要はない、とのことです。
・タクロリムスもそうですが、MDA5抗体+皮膚筋炎など血中濃度を上げていきたい、本気バージョンの場合は測定をします。効きが悪い場合は測定して、量を増やしていくこともあります。

Pearl: タクロリムスはループス腎炎に対して、6-12ヶ月後の腎機能改善効果はMMFまたはCYC静注と少なくとも同等である。

Comment: TAC exhibited fast anti-proteinuric action and at least equal efficacy with MMF or IV CYC in inducing renal response at 6 to 12 months. 

Pearl: タクロリムスはループス腎炎の導入療法に対して、TACとMMFの併用療法がCYCの静注療法よりも優れている、という報告がある。

Comment: A recent large RCT in Chinese patients, including both phases of LN treatment (n = 362 and 206 in induction and maintenance phases, respectively) found the combination of TAC with MMF to be superior to IV CYC in the induction phase (overall response rate at 6 months: 83.5% vs. 63.0%, respectively, P < 0.001) 

・以下の理由でシクロスポリンではなくタクロリムスを使うため、シクロスポリンは割愛。シクロスポリンのところのパールは、
・タクロリムス(TAC)はシクロスポリンの10倍から100倍強力なカルシニューリン阻害剤であり、用量依存性の腎毒性や血圧上昇はシクロスポリンより少ない。
・多くのRCTやメタアナリシスによって、難治性疾患を含む増殖性LNおよび膜性LNにおけるTACの有益な効果が証明されている。Autoimmun Rev 15(1):93–101, 2016.
・比較的腎機能が保たれているアジアのループス腎炎において、TACは迅速な抗タンパク尿作用を示し、6~12ヵ月後の腎機能改善効果はMMFまたはCYC静注と少なくとも同等であった。参考文献は3つ、Nephrol Dial Transplant 27(4):1467–1472, 2012. Lupus 21(9):1025–1035, 2012. Nephrology (Carlton) 17(4):352–357, 2012.
る。 80アジア人以外の集団における薬効の検証はまだ行われていない。
・TACの使いどころはマルチターゲット?
・マルチターゲット治療とは、中国人LN患者の大規模RCTでは、導入期ではTACとMMFの併用療法がCYCの静注療法よりも優れていることを明らかにした(6ヵ月後の全奏効率、それぞれ83.5%対63.0%)Nephrol Dial Transplant 25(12):3939–3948, 2010.  Lupus 19(8):935–940, 2010.
・マルチターゲットの解釈の注意点としては、TACの速やかな抗タンパク尿効果や長期安全性・有効性データが不足している点がある。標準的な免疫抑制治療、おおよそMMFに不完全な反応ループス腎炎や、難治性の蛋白尿患者にTACをアドオンする、という使い方が現実的な使いどころだろう。タクロリムスは長期安全性、腎毒性の懸念が拭えないため、何かあったときのピンチヒッター、スーパーサブ的な存在です。

Pearl: ベリムマブは、第一選択治療でコントロールが不十分で、GCの1日投与量を許容レベル(すなわち、最大7.5mg/日)まで漸減できない腎外疾患において考慮すべきである。ベリムマブのRCTや観察研究では、重症の患者や臓器を脅かす患者は含まれておらず、ループス腎炎におけるベリムマブの有効性は現在試験中である。

Comment:  Approval trials and observational studies have not included patients with severe/organ-threatening disease and the drug’s efficacy in LN is currently being tested; thus, with current knowledge, belimumab is not indicated—at least as an induction regimen—for patients with severe forms of SLE.
・ベリムマブは、Bリンパ球刺激因子(BlyS)蛋白に対する完全ヒト型モノクローナル抗体である。値段は高くて注射というデメリットはあるが、副作用のプロファイルの良さから、標準治療にアドオンできるため皆が使いたくなる薬である。
・副作用データ、長期追跡データ(最長7年)によると、ベリムマブの忍容性は良好であり、重篤な感染症のリスクは増やさないってところが凄い。
・最近は、ループス腎炎にも効くというデータがでてきているので皆さん使っていると思います。おそらく。N Engl J Med. 2020 Sep 17;383(12):1117-1128.
・ある人は言う、ベリムマブは高価なヒドロキシクロロキンのようなものである。
・最初の3回はinfusion reactionに注意。

Pearl: RTXは適応外であるが(日本はなぜか保険適応内)、おそらくは有効である可能性が高く、他の治療法(CYC、MMF)が無効であった場合、または再発性ループス腎炎において使用を検討する

Comment:  Nevertheless, due to its off-label status, RTX could be considered after failure of other therapies (CYC, MMF), or in relapsing LN.
・SLEに対するRTXの評価はかなり不遇な背景がある。
・LUNAR試験では、活動性PLN患者144人を対象に、MMF(3g/日)と併用したRTXとプラセボの比較が行われた。 107第52週までに、RTX投与群では15%多くの患者が部分寛解を得たにもかかわらず、両群間で腎反応に統計学的有意差は認められなかった。Arthritis Rheum 64(4):1215–1226, 2012.
・MMFにアドオンした試験であり、MMFがプラセボに対する優越性を覆い隠した可能性が高いと、皆さん考えている。
・GCと免疫抑制剤(CYC、MMF、またはAZA)による治療にもかかわらず活動性のLNを有する300人の患者から得られた観察研究のデータは、RTXの有効性を支持している。Nephrol Dial Transplant 28(1):106–111, 2013.
・つまりRCTで良いデータはないが、おそらくはRTXは効くであろうと思って、最後の切り札で検討すべき薬なのである。

Pearl: リツキシマブ(RTX)は特に筋骨格系(関節炎)、血液学(自己免疫性溶血性貧血、血小板減少)に有効である。

Comment:  Conversely, evidence from numerous uncontrolled studies, including more than 1200 patients with SLE with refractory-to-immunosuppressive therapy nonrenal manifestations, suggests the efficacy of RTX, which is mainly used as add-on therapy to GCs, other immunosuppressive agents, or both. Complete or partial responses were noted in 64% to 91% of patients within 3 to 9 months, particularly in the musculoskeletal (arthritis), hematology (autoimmune hemolytic anemia, thrombocytopenia), and immunology domains. Relapses after a first RTX cycle occurred in 20% to 67% of patients in observational reports and most could be successfully retreated with RTX. As a rule, more than one IS drug need to have failed before RTX administration, except in cases of severe autoimmune thrombocytopenia, due to the drug’s demonstrated efficacy both in lupus and in isolated immune thrombocytopenia. 
・LUNAR traial同様、腎外SLEもExploratory Phase II/III SLE Evaluation of Rituximab(EXPLORER)試験で、免疫抑制薬(AZA、MMF、MTX)とプレドニゾンにたいしての、RTXのアドオン効果(0.5から1mg/kg/日)をみており、これも有意差がなかった、という残念な結果がでている。
・とはいえ、他のデータではリツキシマブ(RTX)は関節炎や自己免疫性溶血性貧血、血小板減少などの血液異常に有効であるという結果がある。免疫抑制療法に抵抗性の非腎症状を有するSLE患者1,200人以上からのデータで、64~91%の患者に完全奏効または部分奏効が認められた。Semin Arthritis Rheum 44(2):175–185, 2014. Clin Exp Rheumatol 33(4):449–456, 2015. J Zhejiang Univ Sci B 13(9):731–744, 2012.
・ただし原則として、重症の血小板減少症の場合を除いて、RTXを投与する前に2種類以上の免疫抑制剤が無効である必要がある。なるほど、2種類以上だめならRTXって書いてありますよ。

Pearl: I型インターフェロン(IFN-α)に対する抗体、アニフロルマブは2つの第II相試験では、プラセボと比較して効果があったが、その後の第III相試験はうまく行かなかった。


Comment:. Two phase IIb trials targeting IFN-α with sifalimumab (anti–IFN-α mAb), and especially anifrolumab (anti–IFN-α receptor subunit 1 mAb) in patients with seropositive moderate to severe SLE, despite standard-of-care treatment, yielded encouraging results, with significantly more patients reaching an SRI response compared with placebo; presence of an IFN signature at baseline was associated with a stronger response in patients treated with anifrolumab. Unexpectedly, however, a subsequent phase III study was reported to be unsuccessful.
Arthritis Rheumatol 69(2):376–386, 2017.
・IFNαに対する別の抗体製剤であるrontalizumabを用いた第IIb相試験も主要評価項目を達成しなかった。 
・アニフロルマブはあまり使ったことがないですが、私の理解ではTULIP-1は上記の通りプラセボと比べて有意差はなく、TULIP-2では有意差があり皮膚に効果があった、と理解しています。今後腎炎などの重要臓器障害に対する有効性がでてくるか、結果待ちです。さてどうなるか。
・今のところ皮膚症状を含めた全身症状が収まらない場合の切り札。IFNを抑えたくなるときってどんなときなのでしょう。
・コロナでIFN-λ3が測定できるようになりましたが、これって使えるんでしょうか? https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/045050602

Myth: ベリムマブ同様、後続のBAFF阻害薬もSLEには有効である

Reality: The trials of subsequent BAFF inhibitors, after the success of belimumab, highlight the challenges finding new effective drugs for lupus. 
・実際はうまくいっていない。
・ブリシビモドは可溶性BAFFと膜結合型BAFFの両方を選択的に阻害する薬剤だが、PhaseⅢ試験(CHABLIS-SC1)でうまく行かなかった。
・同時にtabalumabのILLUMINATE trialもうまくいっていない。
・Kelleyには書いていませんが、Telitaciceptはphase2bでいいデータがでていました, Ann Rheum Dis. 2023 Dec 21:ard-2023-224854。Telitacicept ( BLyS)/APRIL 阻害剤のphase2b、両方阻害することで形質細胞の形成と自己抗体の産生を阻害します。Telitaciceptは過去あまりうまくいっていませんでした(Ann Rheum Dis 2015;74:2006–15. , Arthritis Res Ther 2012;14:R33)が、次のphase3は期待できるかもしれません。

他に載っていたのは3つ

  • ウステキヌマブ: 抗IL-12/23抗体。moderate-severeな腎外SLE患者102人を対象としたphaseⅡRCTで良好な反応を示した。phaseⅢ待ち。results of a multicentre, double-blind, phase 2, randomised, controlled study, Lancet, 2018.

  • エプラツズマブ:B細胞をターゲットとした抗CD22モノクローナル抗体。moderate-severeSLEを対象としたphaseⅡb(EMBLEM trial)でうまくいったが、その後の1500人以上の患者に対してのphaseⅢ(EMBODY)では期待外れの結果だった。Arthritis Rheumatol 69:362– 375, 2017.

  • JAK阻害薬:バリシチニブは、皮膚および関節炎のLupusに効果あり、PhaseⅢ待ちである。Lancet 392(10143):222–231, 2018. JAKはIFNのみならず多くのサイトカインを抑制するので、今後は期待したいところ。

臓器別の治療はまた次回まとめます

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