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【自家製サッカー概論】80 天皇杯決勝 “個の強さ”について考える

 激闘を制した後の涙。
 師走に入ってから二度、目の当たりにした。
 
 一つは、J1昇格プレーオフ。
 東京ヴェルディの選手達がピッチで、インタビューで見せた、頬を伝う光。
 
 そして、先週の土曜日に行われた天皇杯決勝。
 川崎フロンターレの日本一。
 
 これも試合終了と同時に、あちこちで選手や監督、スタッフたちが感情を爆発させ、溢れるものを抑えられずにいた。
 
 両方とも、観ているこっちまで“グッ”となる。本当におめでとうございます。
 
 ……と、言いつつ今回は、天皇杯決勝で気になった点を取り上げてみる。
 
 決勝のカードは川崎Fと柏。
 
 この試合、実況は、注目選手として柏の細谷真央選手を挙げていた。
 日本代表でもゴールを決めているだけに、注目選手に挙げるのも納得だ。
 
 試合は、開始から柏が積極的に出た。
 守備から入り、川崎Fの攻撃をしっかりと止めて攻撃に出たのだ。
 
 その中で秀逸だったのが、柏の左サイド、マテウス・サビィオ選手だった。
 
 とにかく強いし、速い。
 川崎守備陣が止められないのである。
 
 そして、細谷選手も強かった。
 一人で持ち込む場面もあり、前半と延長前半には彼の強さ、速さから決定機を作りだした。
 
 この2人が際立って強さを見せたせいか、川崎Fの守備陣が何とも頼りなく見えた。
 
 サイドで突破され、チャンスを作られる。
 さらに、前線で収められるから、柏の攻撃が連続する。
 
 この状態を観て、
 (これはどこかで柏が点を獲るのでは…)
 
 そう思わされたのである。
 
 と、同時に「フィジカルの強さ」は、ゲームの流れを引き寄せてくれのだなと、強烈に意識させられた。
 
 サイドにボールが送られるだけで攻撃の起点になる。
 前線に収まれば、二人目三人目が動き出し攻撃が連続する。
 
 柏にとっては大きなアドバンテージで、川崎Fにとってはどうしようもない圧力となっただろう。
 
 川崎Fでは家長昭博選手が強さを見せた。
 マテウス・サヴィオ選手がぶつかっても平然とキープしていた。
 
 家長選手が川崎Fの攻撃をけん引している理由がよく分かるのである。
 
 そして結論である。
 
 「Jリーグでも、これくらいの強さを身に付けられないといけない」。
 
 この一言に尽きるのである。
 
 世界と伍して戦うなら、世界基準の“強さ”が絶対不可欠だ。
 
 それを「あの強度は海外に渡らなければ身に付かない」では、ますますJリーグの価値が薄くなる。
 
 今の日本代表選手のフィジカル強度を観れば一目瞭然。
 J選手とは明らかに違うのである。
 
 Jリーグから日本代表選手が一人も出なくなる事態はもう目の前。
 
 そうなる前に、「どうやってJリーグで“強さ”が身につくか」、これをもっと議論すべきではないか。
 
 天皇杯決勝を観て、改めてそう思わされたのである。

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