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【自家製サッカー概論】22 「リターンパスの妙」補足 横のワンツー

 今回はリターンパスについての補足である。
 リターンパスの一つに「ワンツーパス」、またの名を「壁パス」がある。
 
 「ワンツー」と聞いて、どんなプレーをイメージするだろう? 恐らく、パスを出した後に「縦に走る」形ではないだろうか。
 
 パスを出し、スペースに走り込み、ボールが出てくる。
 パスを出し走る。このアクションで、相手ディフェンダーを置き去りにする。ワンツーが決まると、お見事! と言いたくなる。
 そんなシンプルながら見応えのあるプレーである。
 
 こうした縦のワンツーは、攻撃を活性化させるし、フィニッシュまで行くと、シンプルながら見事な形が完成する。
 
 この「縦に仕掛けるワンツー」とは別に、サイドから中へ打開する「横のワンツー」というのもある。
 
 これを意識したのは、J2で戦う京都の試合を観ていた時だ。
 大木武監督時代、京都はパスをつなぎ倒して相手ゴールへと攻め込んでいた。
 
 J2の戦いをざっくり単純化すると、パスをつなぐチームに対して、守備側はFWから守備を仕掛けて、ボールをサイドに追い込む。
 サイドバックにボールが渡る瞬間に、一気にプレスをかけてボールを囲む。
 そこで奪ってショートカウンター。ロングボールを放り込まれれば、それを跳ね返して相手に攻撃の形を作らせない。
 
 J2上位で、ポゼッションを行おうとするチーム同士の戦いは、この「サイドへ追い込みプレッシング」が主流だった。
 
 さて、大木監督時代も、このサイドに追い込む守備にてこずることもあった。
 それで、こちらは勝手に、この「サイド追い込まれ状態」の打開を考え始めたのだ。
 
 あれこれと頭を悩ませ、大木監督の囲み取材に臨む。
 その疑問をぶつけ、どんな返答があるのか、監督の言葉を待つと、大木監督はその打開策を実に簡潔に教えてくれた。
 
 「中盤に当てて、中で受ければ逆サイドに展開できるだろ」
 
 え? そんな簡単なことなの? 最初に聞いた時はこんな思いだった。
 
 ところが、それを実際に日本代表戦の中継で確認することが出来た。
 右サイドハーフに本田圭佑選手、右サイドバックに酒井高徳選手が出場していた試合だった。
 
 本田選手はサイドに広がる傾向があり、さらに、中心選手だけに厳しいマークが付いている。
 そんな状況の中、センターバックからサイドに開いた酒井選手にボールが入る。相手がここぞとプレスをかける。
 縦の本田選手にはマンマークが付いている。さらに相手のサイドハーフが猛然と迫って来る。
 
 あ、出す所がない! こちらはそう思った。
 
 だが、酒井選手は落着いて、中盤に当てると中に走り込み、ワンツーを受け、中央へパスを出し打開したのだ。
 実に素晴らしいプレー、実に見事な打開だった。
 
 そして、「代表クラスだと、こうしたプレーが簡単に繰り出せるんだな」と、J2との違いを思い知った。
 
 「縦のワンツー」が攻撃に鋭さを与えるプレーなら、「横のワンツー」は、打開力に威力を発揮するプレーと言えるだろう。
 
 例えば、サイドハーフの選手が、サイドでボールを持った時、ドリブルで切れ込んで打開しても良いが、トップ下などの選手に当てて、リターンを貰ってボールを運ぶプレーもあるだろう。
 
 こうした、シンプルながらも、「気の利いたプレー」。J1でも最近は見ることが少なくなった様な気がする。
 
 サイドで膠着した時に、ドリブルで打開するか、「横のワンツー」で切り込むか。
 そこを意識して観るだけで、「サッカーの観戦力」がランクアップすると思う。
 一度、そんなことを意識して観戦してみてはいかがだろうか。
 

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