見出し画像

【昭和講談】幕間の思索③ 「高低読み」と「強弱読み」という考え方

 普段、何気なくしている「お喋り」ですが、この秘訣について、大道芸の口上風に申し上げれば……、

「人の話し方には、『大小高低緩急強弱』の八つと、それに『間』を加えた、九つの基本がある」と、なる訳です。

 以前に、日本語の特徴として「英語の特徴は強弱、日本語は高低」と、英語と対比しながら紹介したことがあります。
 この「日本語の『高低』が、日本の芸能に深く影響している」のでは、と思うのです。

 発声での日本語・英語の違いをよく表していると思う言葉の一つが「コーヒー」です。
 「coffee」。アクセントは「co」という所なので、正しく発音しようとすると「コフィ」「カフィ」、他にも「コッフィ」みたいな感じになります。これが、日本語的「高低読み」だと「コーヒー」になる訳です。

 昔々、漫画トリオのコントで、ウェイターに何度も「coffee」を発音させ、「二番目のやつを頂戴」なんていうのがありましたが、日本人の「コーヒー」発音のおかしさをズバリとついていたのではないでしょうか。


 話を元に戻します。この「coffee」と「コーヒー」の発音の違いが、まさに、「強弱」「高低」という「発声の観点の違い」によるものだと思うのです。

 ちなみに、関東と関西では、「コーヒー」の高音部が違ってきます。「コー」の方が高いと関東、「ヒー」の方が高いと関西。

 「コーヒーが入りましたよ」

 この「コーヒー」のどこを高くするかで、地域差が出るというのです。
(でも、「coffee」も調べたらアクセントによって「英」「米」の違いがあるらしい……)


 さて、話はここからが本題です。
 日本語は高低を基本とする、としながらも、昨今は、英語の発音に似せようという流れがあります。
 「バイオリン」が「ヴァイオリン」、「キャット」を「キャッツ」とか、カタカナの表記で変化がみられる様になりました。
 英語流の「強弱読み」が日本語の発声の方に浸食し、その表記も発声に合わせ変化する様になったのでは、と推察しています。

 そうなると、「これが日本語の『高低読み』ですよ」というものを出したくなるが、実はそれこそ、日本の話芸に、この「高低読み」が残っている訳です。
 ですがここでは、もっと身近に、こういう声も差し出したいのです。

「石焼き芋~♪ 焼き芋♪」

 石焼き芋の売り声です。ご存じの方も多いと思います。
 さて、この売り声、その時の気分次第で、どういう抑揚にしようと声出す人の勝手にできる訳なんです。

「いし~焼き~いも♪ 焼き芋♪」
「い~し~や~き~いも♪ 焼き芋~♪」
「いし焼き~い~も♪ や~き芋♪」

 自由自在です。読み手によって口調の変化が可能。「浪曲の節」や「落語の語り」が名人によって違うのに聴き入ってしまう、その魅力を読み解くヒントに、この「高低読み」の特徴があるのではないかと思っています。

 発声が自由だと聞くと、「石焼き芋の売り声の正解」や「正統的石焼き芋の売り声」なんてものが欲しくなりますが、そんなものはありません。
 あるとすれば「焼き芋がよく売れる売り声」です。

 逆に、良く売れる売り声があれば、他の焼き芋屋も、それをマネするでしょう。そうやって残った口調が偉いということで、今に残る話芸、舌耕芸もそうやって「残ってきた声」だということです。

 さて、まとめに入りまして、講談に話を移行していきましょう。
 「昭和講談」でも、もしよろしければ、「石焼き芋~ 焼き芋」の売り声よろしく、「高低読み」を意識して読んで頂ければと思っている次第でございます。

 次回の演題は、漫才の神様と呼ばれた漫才師、まだ「萬歳」と書かれた時代に名前を売った「砂川捨丸」でございます。
 どうぞ皆さま、お読み頂ければ幸いに存じます

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?