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三次元CAD利用技術者試験 1級 試験対策を解説

私は現在、伝統工芸のデザインを多く手掛けておりますが、前職では日用品、家電、家具、ロボットなどのプロダクトデザインを行っておりました。デザインと言っても手描きでスケッチするだけでなく、2Dや3D-CADで設計製図することも多く、CAD歴24年の「技術の棚卸し」として三次元CAD利用技術者試験を受け、1級に合格できました。24年もやっていれば楽勝かと思いきや、問題のクセが強く、合格率も3割弱というなかなかの難関で、合格ラインギリギリの薄氷を踏む内容でした。受験してみて「独特のノウハウ」があることがわかったので、ここにまとめます。合格を目指す若いデザイナー・エンジニアの方々のご参考になれば幸いです。

三次元CAD利用技術者試験とは

詳細は主催のサイトをご覧いただくとして、この資格はいわゆる「業務独占資格」ではなく、「知識と技能の客観的な証明」のためのもので、この資格を持っていなくてもCADを扱うことはできます。スキル証明の資格にはとかく「不要論」がつきまといますが、それでも就職や転職には有利に働くと思います。

1級を目指すために

1級を目指すためには、まず2級に合格しなければなりません。2級はCBT試験となり、日程も随時開催されています。合否結果は即日出ます。2級に関しては今回は割愛します。1級は7月と12月の年2回開催され、会場備え付けのPCだけでなく、持ち込みも可能です。これについてのアドバイスも後ほど。

その1:出題のクセがすごい!

順を追って説明したいのですが、まず「設問のクセ」について。3D-CADと一口に行っても、航空宇宙産業から土木・建築・日用雑貨・伝統産業まであらゆる場面で活用され、その使われ方も業界によってかなり違いがあります。それを十把ひとからげに「検定」するのですから、実践的な問題というよりも「パズルのような問題」が多いのです。たとえば、この三面図をもとに立体化する設問では、どんな形状を想像しますか?シンキングタイム!

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とくに正面図から見て上の方、ナナメに線が入っているカタチ。どうなっているでしょうか。「あれ?」と思いませんでしたか?矛盾はありませんか?実は正解はコレです。

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正解を見ると「なぁんだ」と思いますが、いっぺん「ハマってしまう」とベテランでもなかなか抜け出せず時間を喰ってしまう罠があります。この手の”直方体にナナメに線が入っている三面図”は、頻出されます。このように、設問には実践的ではない独特のクセがあるので、「試験向けに特化した対策」が必要になります。

その2:PCは持参(持ち込み)がおススメ。マウスも有線で

 キーボードの配置の微妙な違いやマウスの触り心地など「いつもと違う使い心地」は焦りや混乱の原因になります。解答に集中するためにも、使いなれたPCを持ち込みましょう。
 また、会場のWiFiは接続禁止のところもありますので、オンラインでアカウント認証するタイプのCADソフトの場合は、事前にオフラインモードに設定しておくか、ポケットWiFIなど準備しておきましょう。
 マウスも、乾電池式のワイヤレスはお勧めしません。もし途中で電池が切れてしまったら?トラックパッドでCADを動かすのは至難の業です。有線マウスを用意しましょう。

その3:会場には時間に余裕をもって行くこと

 何を今さら、という大人の常識なのですが、この点は他の試験以上に気を付けなければなりません。実際、持ち込みPCで試験開始直前になってアカウント認証できず焦っていた人がいました(その人はあきらめて、途中退場しました……)。こんな時に限って、ソフト立ち上げ時にフリーズしたりするものです。
PCとCADソフトは事前に立ち上げたまま、臨戦態勢で会場入りすることを強く勧めます。私はこれに加えて、予備のノートPCも持ち込みました。さながら弁慶のようなスタイルです。さすがにここまでする人は他にいませんでしたが……。

その4:設問の構成を把握する

設問は大きく分けて4部門に分けられ、合計18問あります。
A設問1~3 文章からモデリング 難度★
B設問4~7 三面図からモデリング 難度★★
C設問8~13 4つの三面図からモデリング・アセンブリ 難度★★
D設問14~18 三面図からモデリング 難度★★★

Aから順に難度が上がるので、順に解いていくのがセオリーです。各部門の詳細は後日解説しようと思います。A~Cは1級なら解けて当たり前ですが、前述のような「ハマり」に注意してください。

その5:スピードがめちゃくちゃ大切

 試験時間は120分ですが、あっという間に過ぎます。過去問を解き、時間配分を考えましょう。仕事でCADを扱っている方でも、普段の1.2倍のスピードで手を動かさないと時間切れになるでしょう。仕事では「正確さ」のほうが優先されるため、納期はあれど「120分で」という時間感覚で描くことは稀だと思います。マウスの動きも最短距離、ショートカットは必須です。

その6:設問を見てから作図する

 とくにD設問14~18は、モデリングを全て完了してから解答すべきではありません。とにかく時間が短いので、ヘタをすると「モデリングできたけど解答する時間が無い」というはめになります。
 とくにD設問は初見殺しというか、どこから手を付ければ良いかわかりにくく、戦意を喪失させるような図面が出題されます。気を確かに持ちましょう。
 設問14~17は、点と点の距離やハッチング部分の面積を求める問題ですが、じつは各設問は「モデリングする順番で出題されている」のです。つまり、まず設問を見れば、モデリングする手順がわかるのです。

その7:「捨ててもいい設問」を割り切る

 大学入試のようなアドバイスですが、「捨ててもかまわない設問」を割り切ることで、むやみに時間を浪費せず、正答率をあげることができます。合格基準は「各分野5割以上の正解、および総合7割以上」なので、13問解ければ合格、言い方を変えれば「5問は捨ててOK」です。

A設問1~3 文章からモデリング 難度★
 これは順に解いていかなければ最後の正答に辿り着けませんし、難度も低いので、全て獲りに行きましょう。

B設問4~7 三面図からモデリング 難度★★
 この設問も、全問落とせません。CとDを捨てる余力を残すためにも、踏ん張りどころです。

C設問8~13 4つの三面図からモデリング・アセンブリ 難度★★
 設問8・9・11・12の4つは、個別のモデリングです。モデリングできればアセンブリもできるはずなので、取りこぼしはもったいないのですが、各パーツの組み合わせ方にクセがあり「ハマッて」しまう場合もあります。そんな時はまず8と9をモデリングして、アセンブリにつまずくようなら先に11・12のモデリングに取り掛かりましょう。

D設問14~18 三面図からモデリング 難度★★★
 これは前述のように「設問を見てからモデリング」が有効な戦法ですが、最後まで辿り着けるかは時間との戦いです。ここまでの設問で充分正解できているならば、14~16まで解答できれば良しとしましょう。とくに18はマスプロパティ(重心座標)を求める設問なので、全てモデリングできていないと解答できません。

その8:トイレには行っとけ

 最後にアホみたいなアドバイスになりますが、行きたくなくてもトイレには行っておきましょう。私は気合を入れるために飲んだエナジードリンクが裏目に出たのか、D設問の時は尿意との戦いでした。集中力を保つためにも、トイレ行っておこう。
 蛇足ですが、試験会場に隣接した公園で政治団体らしき人たちが大声でザ・ブルーハーツのカラオケを熱唱しており、これにも集中力を削がれました。

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