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竹美映画評⑩ ラームチャラン様の田舎臭さに屈しなさい ("Rangasthalam"、2018年、インド)

私は、2018年1月からのにわかインドファンでございます。つまり、テルグ映画からインドに興味持った層なのね。

2018年1月に「バーフバリ」に全てを吹っ飛ばされた私は、当然毎日動画を漁るわけですが、まあ、好みの見た目の男優を見つけるわけですよ。私の場合は、五月の時点でラームチャランをかわいいかわいい言ってた…当時は誰も知らず…ところが8月に、まさかのラームチャラン主演映画「マガディーラ 勇者転生」が日本公開ですよ…大興奮ですよ〜するとね、ようつべで過去のラームチャラン映画を観るわけですよ…セリフ一つも分かんないのに、分かるの!

あまりにストーリーがテンプレート化されているからよ!!!!

ところが、「ランガスタラム」という作品が気になって音楽ビデオを毎日観ていたのにも関わらず、一向にようつべで鑑賞できない。今年1月にハイダラーバードに行ってDVD探しても見つからず、後日、結局怪しいアップロードサイトで見たわよ〜これがまた大当たりの映画でした。

時は八十年代、インドのアーンドラプラデーシュの田舎、ランガスタラム村。そこに暮らすポンプ技師、チッティバーブ(ラームチャラン)は、耳が悪いが無邪気で朗らかな青年。そこへドバイに出稼ぎに行っていた兄マヘシュが帰って来る。再会を喜ぶ兄弟。そこで「村長」(ジャガパティバーブ)の横暴を目にした兄は、村長選挙に出て相手を負かし、村を取り戻そうとする。よく分からないまま大好きな兄に協力するチッティだったが、次第に周りの支援を取り付け始めたマヘシュがある日何者かに殺されてしまう。怒り狂ったチッティ達は犯人を捜し出して復讐しようとするが、ランガスタラム村の更なる闇を目にしてしまうのだった。

動画で歌と踊りを見る限りは、楽しくて明るくて何も問題のない村の生活が描かれるのだが、英語字幕で歌詞を知ってびっくらこいた。ランガスタラムとは劇場、という意味らしいわ。歌の歌詞は、

ランガスタラム、ランガスタラム
ここではみんな操り人形
聞こえない歌に合わせてダンスを踊り、ルールも知らないゲームで遊ばされる

ちょ、ちょっとこの重さは!!社会派映画となれば俄然観るにも力が入るわよ~これが南インド映画の面白さの一つらしいの。

本作の後半では、カースト差別の問題が中心的に取り上げられている。『アンヴェードカルの生涯』にもあった印象的な言葉、国民の大半が被差別者なのだ、という言葉が重く聞こえる。

チッティはマヘシュに補聴器をもらうのだが、最初は「こんなもん、いらねえや!」と付けようとしない。ところがそれが遠因となってマヘシュの危機に気がつかなかった。それまでのチッティの世界は、よく聞こえない言葉に対して、ぼんやりとした言葉を適当に返しておけば、あとは顔色見れば大体分かる、という安逸なものだったの。でもマヘシュの死後、補聴器を付けることで彼は社会と繋がってしまう。もはやお気楽な青年ではいられなくなってしまったのだ。チッティの顔は苦いし、ラストシーンの表情も硬い。

それまでの「ラームチャラン映画」ならば、彼が地元のヤクザ集団を撃退してヒロインを勝ち得る典型的なヒーロー映画だったのだが、本作だけは何故か、ラストが全く楽しくない。ラジニカーント映画「カーラ」のように、ラストに後味悪いものを残すことも、社会批判表現の一つである。

ラームチャランは、まつ毛が長く、日本のファンの間では、ヒゲの生えた美少女と呼ばれているが、何というか、垢抜けない顔してるのよ…昭和期の田舎中学生みたいな。それなのに、テルグ映画界のメガスターの息子であるがゆえに、典型的なヒーロー映画やアイドル映画ばかりをやってきた。その中では「マガディーラ」は昔のパートで演じたバイラヴァには、彼のもっさりとした持ち味が活かされてはいたけれど…「マガディーラ」のヒロイン・ミトラ姫のタイプはサッカー部のチャラ男だったのに、バイラヴァは、元空手世界チャンピオンが田舎に引っ込んで農作業してる、みたいな感じ。ミトラ姫は気に入らなかったみたいで、空想の中で本当のバイラヴァを消し去るw

私、ラームチャランのあの田舎臭い持ち味が完璧に活かされた映画は、後にも先にも「ランガスタラム」しかないんじゃないかなあと思う。

期待作だった2019年1月公開の次の作品「Vinaya Vidheya Rama」(通称「VVR」)は…また元のアイドル・ヒーロー映画に戻っちゃった!とファンの間からも衝撃の声が…。「VVR」は、川口市でやっていたインド映画自主公開イベントで観たんだけど…休み時間になった瞬間に全員から「もうね~これはチャラン君を見る映画だからいいのよ~」と笑い声が聞こえた。愛されているのね…どなたかが仰っていた通り、監督の撮りたいラームチャランのミュージックビデオになっていた。ストーリーもびっくりの不連続だったし、笑わせちゃいけないシーンで笑わせ、「んなわきゃねえだろwww」が連発されており、テルグ映画としてはすごくよかった。

さすがにラームチャラン当人もうわーと思っちゃったのか、謝罪文出してたわね…テルグ語と英語で…あたしどちらも画像で保存しているから、テルグ語勉強して解読するわよ…待ってろよ!!!

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