後ろの席のギタリスト

眠れぬ夜はまた来るけど
二度と来ない昨日に変わるさ
世界でひとつのHeartを
両手でにぎりしめて
オマエだけは
Stay Free...

高校の時、後ろの席だったヤツが教科書の端に書いていた言葉。
それがKATZEの『STAY FREE』という曲の歌詞だと知るのは、もう少し後のことだ。

「KATZE・・・知らないの？」

何それ？と訊いた俺に、そいつはそう訊き返した。
お互い、学校をサボりがちな者同士。
久々に顔を会わしたのに、相変わらず愛想のないヤツだ、と思った。

「学校祭・・・バンドでコピーやるんだ。見に来れば？」

見に来てよ、と言わないところが気に入らなかった。
でも、学校祭の日、ギターを弾いているヤツの姿を見たら、かなりカッコ良かった。

感化された俺は、すぐにKATZEを聴いてみた。
めちゃくちゃカッコ良かった。
こりゃ好きになるわ、と共感した。
そして、ヤツが書いていた言葉が『STAY FREE』の歌詞だった事をそこで初めて知った。

KATZEは1988年にデビューして1991年には解散している。活動期間は短いがアルバムを4枚出している。俺はその4枚を一気に聴いた。
1枚目から4枚目まで、どんどん印象が変わっていく。
それが凄まじく魅力的に感じていた。

解散後に発売された『GOD SAVE THE ROCK'N ROLL』というライブアルバムは感動的なアルバムだと思う。

KATZEを教えてくれた”ヤツ”とは、その後はあまり会う事が無かった。
こちらがサボっていたせいもあるが、ヤツが全く学校に来なくなったような記憶もある。
だから、KATZEの話をする事も無かった。

いや、たぶん顔を会わせていても、ヤツとはKATZEの話をする勇気がなかったかもしれない。
今頃知ったのか？などとまた冷たく言われそうだ。

でも、もしかしたら、もっと仲良くなれるキッカケになったのかもしれないな・・・。