映画『モータルコンバット』の感想など

ただ書き留めておきたいので書く。

映画『モータルコンバット』を、「ゴアシーンがあるTVゲームの映画化で真田広之がとても格好いいらしい」ほどの認識で観に行った(のでどれほど原作へのリスペクトに溢れているか等については語れない、申し訳ない)。エンドロールから泣けてきて、映画館を出てからも、しばらく涙が止まらなかった。

悔しくて。嬉しくて。

『モータルコンバット』には多数のアジア系の俳優が出演している。日本人である真田広之、浅野忠信以外に、インドネシア人のジョー・タスリム、シンガポール系イギリス人のルイス・タン、中国系シンガポール人のチン・ハンら、多彩な国籍、出自の俳優がおり、それぞれがキャラクターの母国語で話すシーンもある。冒頭の江戸時代初期のハサシ・ハンゾウのシーンでは、真田広之の(ボランティアらしい…)監修もあり、かなり丁寧に日本文化の再現が試みられている。冒頭7分が公開されているからぜひ観てほしい。

https://www.youtube.com/watch?v=nbzOvWFpBIw

私は気づいたのだ。それまでハリウッド映画のトンチキアジア描写にハハハと笑ってきたけど、実は私は傷ついていたし、悔しかったのだと。アジア人がそれぞれ個性ある俳優として出演し、リアルなアジアの描写がある映画を求めていたのだと。『モータルコンバット』はそれだった(トンチキアジア描写については無理解からくるものと、メタ的なモチーフとしてあえてやっているもの等、様々な態度があり十把一絡げにはできないが、ここでは省略する)。


『モータルコンバット』はMCUができなかった(やろうとしなかった)ことを成し遂げたのだと言う人もいた。アジア人にとっての『ブラックパンサー』だという人もいた。どちらも私は正しいと思う。

『モータルコンバット』のよく考えられているところはそれだけではない。カノウの《お友達》はどんなマッチョ野郎かと思いきや、いかした中年女性だったり、作中、女vs男のカードが複数組まれていたりと、偶然ではなく「ちゃんと考えられた」映画なのだ。

最終決戦でコールが作戦を考えるとき、ソニアは敵側の女性戦士と戦わされるのかとウンザリげな顔をする。だが因縁の相手カノウとの対戦と知った彼女は嬉しそうに笑う。いいシーンだと思った。

英語がネイティブでも、アジア人だとエキストラにすらもなれないことがあると聞く。非白人系の才能ある人が、今日もオーディションの帰り道に悔し涙を流しているのかもしれない。もう涙すら出ず諦めているかもしれない。クン・ラオ役のマックス・ファンはインタビューで「10年後は普通にアジア人が映画に出ているようになったらいい、そうしたい(要約)」と語った。『モータルコンバット』はその重い扉に手を掛けたと言えると思う。本当にありがとう。

二回目を観終わった私は、なんだか謎に沸き起こるポジティブな感情に突き動かされ、こうツイートした。

まんまとまた観に行ったのですが、会えないならば、こちらから会いに行くわい待っとれ!と謎に熱い気持ちが湧いてきて、異様にポジティブに観終えました。ありがとうモータルコンバット。作品で恩返しできるようになります。英訳されるほど売れよう。

きっと会いに行くので。


ここからは作中の感想。思いついたままに書く。

・冒頭のBGMがシームレスにつながっているのが劇中へのブリッジとなっていてとてもよい。

・ハンゾウと息子ジュウベエが「ずいずいずっころばし」を唄って来るのがいい。奥方の手の土を払うのがいい。顔を寄せたときキスすんのか?日本だとあんましないのでは?と思ったが、奥方へ感謝の言葉を述べるにとどまったのでガッツポーズした。

・両腕破壊→心臓抜き取りとゴア強度をしだいに上げていくのがいい。すべてはフローレス・ビクトリーへの助走なのだ。あのシーンで目を剥くクン・ラオがすごく格好いいし(登場シーンも信じられないほど格好いい)、そのあとの血飛沫がかかった顔もいい。

・リュウ・カンが夕陽を背負って出てきたとき「おいおい随分目元の涼やかな兄ちゃんが出てきたじゃん、大丈夫かねハハッ」と思った。からの「バッキバキなんだが!?!?!」は誰もが通る様式美であってほしい。リュウ・カンが動きはじめに帯を払う動作が美しい。人身売買をしていた男を殺して印を奪った、と話すところで目をぎらつかせるのも彼の複雑さを表していてよい。

・みんな好きだと思うが食事シーンが好き。アジア勢がお箸使っているのにほっこりとした。レーザー出たときにみんな「ひゃあっ」ってなっているのが可愛らしくていい。

・ライデンはやることが雑だし、イライラしたり喋りすぎたり人間味があるのがよい。過去のライデン寺院でライデン像がそこかしこに立っていたのに噴いた。偶像崇拝が過ぎる。

・ジャックスとソニアの関係性が恋愛でなく友情であるのがいいと思う。最近はこういう男女の描写が増えてきたように思えて嬉しい。

・主人公はやはりトンファー(的な武器)であるべきだと思う。

・「1対1ならこっちが有利」に「ん?そうだっけ?」と思う。

・私がMKをプレイしていたなら、「get over here」でたぶん号泣していたと思う。かえすがえすも日本がMK後進国であることを悔しく思う。あと真田広之の重心の低さがやばい。

・サブ・ゼロがケージのドアをガシャンと閉めるところが絶望と闘争本能に溢れていてすごくいいと思った。マスクで目だけの演技だが感情が伝わってくるのが素晴らしい。彼の通奏低音はやはり絶望なのだと思う。

・本作における真田広之の素晴らしさはどれほど言葉を尽くしても語りきれないが、彼がこの作品に情熱とスキルを傾けてくれたことをほんとうに嬉しく思う。ありがとうございます。お体を大事にしてください。

・続編を作ってください。お願いします。

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