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企業人事小説:部下を持つ①

はじめまして、イーリード株式会社の大橋と申します。
私は、社労士事務所での修行を経て、事業会社数社で人事部を経験し、そして現在は人事コンサルを生業とする、イーリード株式会社の代表をしています。

これまでとてもたくさんの人と出会い、様々な経験をさせてもらいました。
その経験から学んだことは、部下を持つことの難しさ、そして喜びでした。

部下を持つ人の中には、部下の失敗でイライラしたり、こちらが意図していない動きをする部下に振り回されるなど、とても面倒くさいと感じる人もいるかもしれません。

だからかどうかはわかりませんが、最近は管理職になりたがらない人が増えたと聞きます。

一方で、部下の成長に目を細めたり、部下と共に大きな仕事を成し遂げた喜びを口にする人もいます。

そこで、人事部での業務を舞台に、部下との関わりを小説チックにまとめ、部下を持つことの意義を考える一助になればと、noteで私の経験を公表することにしました。

小説家ではありませんのでつたない文章であることはご勘弁ください。
部下を持つ、または将来部下を持つ予定の方々のお役に立てれば幸いです。

新卒採用戦略編

突然の辞令

「山田さんには、今度新卒採用チームを見てほしいと思ってね」
そこは新宿の高層ビルの一角、3月の澄み切った空気は、遠く北関東の山々を綺麗に映し出している。眼下では、Nゲージほどの大きさに見える山手線がゆっくりと動き出した。そこだけを切り取ってみれば、山田の感じている緊張感とは裏腹に、ゆったりと時間が流れているような景色を醸し出している。

山田泰助、立川産業に勤める人事部課長、38歳。3年前、IT企業から転職してきた中途入社の社員だ。山田の経歴は人事部でのそれが長い。20代の一時期、給与計算アウトソーシング会社の営業をしていたが、事業会社に転職後は、人事畑を歩いている。山田の現在のミッションは、中途採用課の課長である。
山田の勤める立川産業は、創業50年を超える老舗の専門商社。商材は医療用及び飲食店で使用する消耗品を主力としており、関東を中心に隠れたBtoB優良企業として業界内に認知されている。
社員数は約1200名。社員の多くを「新卒」として採用してきた。新卒採用をしてきたのは、新卒から鍛えたほうが愛社精神が育つであろうくらいのことが主な理由だ。それに、まだ世間を知らない若手の方が使いやすいというのも現場で教育を担当する古参社員の意見だ。しかしながら、時代は好景気の売り手市場。社外に選択肢が増えたことで転職する社員が後を絶たない。そのため、退職補充を目的とした中途採用を強化すべく、山田はヘッドハントされた経緯がある。


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