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【ノンフィクション】知り合いがマルチに引っかかっちゃってさ

*予想以上に話が長く、また結論から言うと後味が悪いです。でも圧倒的に事実なので、田舎にもマルチって流行ってんだなーみたいな視点で見てくれると幸いです。


知り合いって言っても、まあ詳しくは姉の友達なんだけどさ。その人は小中と姉と一緒の学校で、時には同じクラスにもなったりして、弟から見ても仲は良かったように思う。何度か姉と話してるのを見た感じ、優しい人だなって思ったよ。

数年前、成人式に参加した姉との会話の中にその子が出てきた。ビックリするほど可愛くなっていたらしい。写真を見ると、確かに中学の頃の面影を残しつつ、どことなく幸が薄そうで、それでいて儚げな美人という印象を抱いた。

「友達の弟」という関係性はとても微妙な距離で、自分が相手を認識していても、相手はこっちを認識していないことが多々ある。当時の俺はそんな目立った感じでもなかったから、姉と友達との会話の中に出てくることもなかっただろうしね。

だからTinderでマッチングした時も、姉の友達だ、と俺はすぐに気づいたけど、あっちは俺が友達の弟だということは認識していないようだった。そこに寂しさは感じない。むしろ中学の時のイモっぽい自分を知られてなくて喜んだくらいだ。

彼女は写真を数枚載せていて、どの写真も相当に可愛かった。成人式を騒がせたのも分かる。ただ、職業と趣味の欄に「投資」とあるのが少し引っかかった。職業の欄に「投資」とあるのは別に不思議なことじゃない。投資銀行で働いている可能性もあるし、まあ専門ではなくても投資関連の職は珍しくはない。しかし趣味の欄にも「投資」とあるのはなんだかきな臭い。

メッセージを送る。この時点では怪しさよりも好奇心や期待感が勝っていた。当たり障りないスモールトークをした後、「なんでそんな可愛いのに出会い系やってるんですか?」と質問した。こんなのやらなくても、余裕で彼氏はできると思う。すると彼女は「投資の”仲間探し”ですかね」と答えた。

その時点でほぼほぼクロだなと確信した。この人恋人じゃなくてカモを探しています、そう運営に報告しても良かったけど、知り合いがマルチに引っかかってしまった、という現象に出会うのが初で、物珍しさに会話を続ける。

マルチ商法に誘うテンプレートのような会話。あまりの胡散臭さに逆にマルチではないのでは?とまで思ってくる。特に”先輩方に繋げる”という部分。”先輩方が商材をごり押す”の間違いだろ。

正直、一応マッチングアプリということもあるし、もしかしたら俺のことが本当にタイプだったんじゃないか、という一縷の望みもかけていた。けどまあそんなわけはないよな。


・・・・


ラインを追加してすぐ、「少しお話しませんか?」と電話のお誘いが来る。とんでもない積極性だ。今日マッチして夜には電話している。明後日には婚姻届にハンコを押してるんじゃないか?

電話の開口一番、「優しそうな声してますね!」とかまされる。そんなことないですと謙遜すると、「こんな優しかったら投資も上手いんだろうな~」とわけの分からない理屈をこねられる。投資業界では声の優しさと投資の上手さは比例するのかもしれない。

そのまま投資の話にいくかと思いきや、名前や兄弟構成、住んでいる場所などを根掘り葉掘り聞かれる。後ろでカタカタと音がする感じ、パソコンに基本情報でも打ち込んでいるのだろうか。まさか同じ区域で中学校同じとこに通ってましたよ、なんならうちの姉あなたの同級生ですよ、と言うわけにもいかない。適当に嘘を交えながら自己紹介をした。

一通り自己紹介した後、じゃあ今度は私の番ですね、と彼女は話し出した。なんでも投資は知人の紹介で半年ほど前から始めたそうで、投資が上手くいってるためそろそろ会社を辞めようと思っている。私に投資を教えてくれた○○さんは本当に優しい方。詳しいことを説明したいが、まだ始めて半年なので上手く伝えることが出来ない。明後日辺り暇ですか? ○○さんから是非投資のお話を聞いてほしい。

適当にふんふん頷いていると、気が付けば三者面談の日程が決まりかけていた。慌てて「人見知りなので厳しいです」と嘘をつく他ない。まずはサシで直接会いましょうと提案すると、今私は投資のセミナーを受けに仙台にいるので、直接は会うのは厳しいですとの返事が。

実はTinderはマッチングした人との距離を見ることが出来る。

グーグルマップで確認すると、ここから仙台までは152㎞。決して8㎞ではない。


おそらく彼女は、本当に申し訳ないけど、そこまで頭が良くない。投資に導いてくれた方を盲信する姿や、半年間投資を行っていても上手くサービスについて答えられない姿。上記のようにすぐに相手が気づいてしまうような嘘をつくのもそうだし、そういうとこまで気が回らない感じに、なんだかすごいショックを受けた。

複雑な気持ちのまま話を進めると、数日後zoomで顔合わせをすることが決定した。「出会えて良かった」という言葉に、曖昧に笑い返して電話を切る。写真上で笑う彼女の姿は、以前ように可愛いとは到底思えない。


・・・・


電話した次の日、「今日の夜空いてる?」と急にLINEが来る。予定していた顔合わせの日時より随分早い。まあでも特に用事もないしな、と二つ返事で了承する。

用意されていたルームに入る。久々に女性と喋るせいか、なんだか気恥しくて視線が合わない。いや、彼女の視線もずっと斜め下に落ちている。何かの資料を確認している、そんな印象を受けた。

挨拶もそこそこに投資の説明を受ける。始めて半年だから上手く説明できないかも、と前置きして彼女は話し始めた。以下投資に関する説明を抜粋。

・大金をかけて作ったEA(Expert Adviserの略、AIが投資の自動売買を行うプログラム)というシステムを活用している

・年利2%で回していくやつだから、100万だったら5年後に310万、10年後だと1200万になっている。←月利2%の間違い?

・(投資をしている団体は)昔は会社だった。今は投資のチームという形態

・今の時代、完全オンライン化しているから契約書とかもない。チームでやってるし、(FXの)口座開設をしてるってことは本人確認が済んでるから契約書がいらない、と先輩に言われた。実際半年やってて支障はない。ペーパーレスの時代だし

・システムの会社(運用?開発?)はマレーシアにある。一度LINEのビットマックスを使って日本円を(おそらく仮想通貨に)還元して、マレーシアの通貨に変換する

会社という枠組みがない、ならお金の管理とかどうしているんだ? 契約書も存在しないならそれはもう口約束でしかないのでは? 円を複雑な手続きで海外に送金しているのも、絶対に足がつかないようにしてるだけなのではないか?

引きつっていく表情に気付く様子もなく、彼女はどこかウットリした表情で話を続ける。

「こういう投資の話って身内の紹介の方が逆に信用あるっていうか、アプリとかで大っぴらに”皆さんどうですか!”とかの方が、逆に怖いと私は思いますね。そうやって色んな人を入れて手数料で稼いでるわけだから、私に何のメリットもないのに逆に危険だなーって思って。でやるなら誰かの紹介でやりたいって思ってた時に、ちょうど運良く声かけてもらったんです。」

そもそも新しい人をいれるメリットってなんですか、と質問する。システムを買わせた料金の1割をマージンとしてもらえたりするのだろうか。

「身内のコミュニティを広げて、みんなで稼いで、みんなで社会を創っていこうよ、起業していこうよって感じです。身内の中でお金稼ぎました、身内の中でこうつながりが増えましたなると、労働力とかも抑えられますし。つながりは深いので、なんでしょうね、ビジネスをやりやすいと思う。うん、そういうメリットで、どんどん新しい人を入れて言って、みんなで稼いで行こうよっていうビジネスモデルです。」

あくまで”起業”が目的だと主張する。だったらアプリで拡散しても別に変わらないじゃないか、という言葉が喉元から飛び出しそうになる。まあ、新しい人は欲しい、けど大っぴらにすると問題になる。だから紹介制でカモを集い、閉鎖的なコミュニティを”身内”という言葉で覆い隠しているだけだろう。


なんとなく全貌がつかめてきたが、zoomは予想以上に長引き、彼女がなぜ投資を始めたのか、投資で親友を誘った話など、まだまだ続く。書くと長すぎるのでいったんここで終わりにする。ちなみにこの後は彼女とカフェで直接会って話す予定だ。信奉する○○さんとやらにも会えるのだろうか。

ミイラにならないようにだけ気を付けたい。後編でまたお会いしましょう。

読んでいただき本当に本当にありがとうございます! サポートしようかな、と思っていただいたお気持ちだけで十分すぎるほど嬉しいです。いつか是非お礼をさせてください!