見出し画像

8月16日。
大学でお世話になった教授が亡くなった。
まだ40代の若さで、あまりに突然だったから、しばらく何をしていてもそのことしか考えられないくらい衝撃が大きかった。

お酒が好きな先生で、いつか飲みに行きましょうね〜なんて話をしたこともあった。
わたしにできたことなんてないかもしれないけど、やるせなさと悲しみが胸の中でどんどん膨らむ。

8月18日。
葬儀は身内のみとのことだったけど、一般焼香の受付はしていたので斎場へ向かう。

香典を渡すときはどうすればいいんだっけ、身内の方にはどうやって挨拶すればいいんだっけ…。
先生が眠る部屋に入るまではそんなことを考えていたけど、いざ入ってみると突然現実味が湧いて、悲しい気持ちが押し寄せてきた。

顔色もよく、元気そうな先生が写った遺影がある。
その目の前には、もう目を覚ますことのない先生がいる。
焼香台に涙が数滴こぼれては、すぐに蒸発して消えていく。

先生はどんな思いでその生涯を締めくくったの?
空の上では、いまなにを思っているの?

部屋から出るとき、ご家族が「ありがとうございました」と声を掛けてくれた。
頭の中に入れてきた葬儀のマニュアルはなんの役にも立たず、蚊の鳴くような声で「とんでもないです…」としか言えない。

まだまだ可愛い盛りのお子さんは、マスクが涙で濡れているのが分かるほどだったと友人が言う。

部屋の壁いっぱいに飾られた供花。
その数とひとつひとつの大きさは、突然大切な友人・同僚・教授を亡くした人たちの悲しみを顕していた。
先生、本当にたくさんの人に愛されていたんだね。

10月3日。
先生が亡くなった日からちょうど四十九日。
四十九日は、この世に残っていた魂が次の世に旅立つ日、と言われているらしい。

先生の魂がまだここにあるうちに、お礼を言わせてくださいね。

わたしが高校生のとき、初めて北海道に来てドキドキしながら大学受験をした日。
面接室の扉を開けると、男性がふたり。
右側に座っていた先生は、受験生を不安にさせないようにと朗らかな笑顔で待ってくれていました(分からないけど、そんな気がします)。

先生が大学に入学させてくれたおかげで、今の人生があります。
あの日、あれから、わたしの人生を変えてくれてありがとうございました。

いろんなことが巡り巡って、いつか先生や先生の大切な人に恩返しができますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?