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伝統がひた隠す事実


「夜この町を歩く時は気をつけろよ」


こんな言葉を言われてからもう10年が経とうとしている。


今から11年前、25歳の私は日本の伝統文化の未来を危惧し、日本財団から任意団体として助成金をもらい、支援者と一緒に陶芸関連のイベントを企画したり、バイヤーとなって新しい販売先の開拓や陶芸職人へ販売の営業方法を教えることに尽力していた。

さらにまだ職人自体がデザインに精通していない時代、私のような若手デザイナーであっても仕事にありつける時代だったことは本当にありがたいことだった。

直火ができるお皿や職人技術を肌で感じることができる茶器セットなど、多い時には1日で10万円以上の売り上げを達成したイベントもあった。


この頃の伝統文化を支える産地といえば、バブル期を経験した親の次の世代が、その頃の景気を知らずに物が売れない時代を生き抜かなければならなかった。


まさに彼らは必死だった。


そんなある日、私にとって大事件が起こる。

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