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鹿島アントラーズの監督交代について考えてみた

「ザーゴさんが解任されたな」

「唐突だったな。解任されてもおかしくない戦いぶりだとは思ったが、日曜の試合後に2日間何もなかったから、そのままでいくのかと思っていたぞ」

「確かに、次の徳島戦まで練習できるのは3日しかないからな。後任の相馬さんは準備期間として中々に厳しい」

「とはいえ、さっきも言ったように解任されてもおかしくない成績ではあった」

「全然勝ってないからな。ただ、この解任によってチームの目標設定をどこに設定してるのかは気になるな。まだ優勝を諦めてないから解任してブーストかけたいのか、このままだと残留争いに巻き込まれるから解任して立て直したいのか」

「どっちもありそうだけどな」

ザーゴのここまで

「ザーゴのここまでについてはどう思う?」

「良い人なのは間違いないな。内田篤人引退の時の振る舞いとか見てると」

「肝心なのはサッカーの中身の方だ」

「基本的には90分通じて、主導権を握ってアグレッシブにプレーするのがザーゴが目指すスタイルだ。そのために前線から積極的にプレッシングも仕掛ければ、ボール保持も大切にする。自分たちがずっとボールを握り続けて、相手陣内に押し込み続けてサッカーやるのが理想形だ」

「その実どうだったのかという話だ」

「形は作ったな。前線から相手の陣形に合わせてでもプレッシングするようになったし、後ろはボランチを降ろしてでも数的優位作って組み立てることはどんな試合でもやろうとしていた」

「問題なのはそれが機能していたかどうか」

「まあ機能していたら、こんな成績にはならんわな。ボールを中盤まで運ぶことはまずまず出来ていた。だが、そこから相手ゴール前に運ぶまではとにかくカオスになっていたな。右サイドで荒木や広瀬なんかが絡むと、『おっ、ポジショナルプレー出来てるやん』って思わせるシーンもあったけど、左サイドではあんまそう思わせなかったし、右サイドでも再現性があったわけでもなかった」

「狭い局面に持ち運んで、そこでゴチャゴチャした展開で取られちゃうってシーンは何度も見たな。ロングボールで裏狙うとか、逆サイドに展開するとか、やろうとはしてたがあんま上手くなかったし。犬飼とか町田がどこまでいくねん!って持ち運びをしてたのは、それでいいのか感あったしな」

「もっとも、一番問題だったのは守備の方であるわけなんだが」

「最後まで守備のノリが悪いとどうにもならんチームだったからな」

「基本的にどんな試合でも前線から攻撃的にプレッシングを仕掛ける姿勢に変わりはない。ただ、相手と布陣が噛み合っている時はいいんだが、噛み合わなくなると途端にしんどくなってたな。今季に入ってからは練度自体も大分落ちてきてた」

「中途半端にプレッシング掛けては外されて、フリーの逆サイドに運ばれたり、裏突かれたりするのが目立ったからな。浦和戦なんかはそこをやられまくっていた」

「だったら、いっそ撤退して守ればいいのではとも思うがな」

「引いて守るのは俺たちじゃない!って思ってるのか、引いたところで守り切れないしジリ貧になるだけ!って思ってるのか知らんが、最後までそれをする気はあんまなさそうだったな」

「チームは昨季ザーゴを呼んだ時にリフォームだって言ってたな。結果としてはどうだったんだ?」

「まあこういうサッカーしたいんだろうなって言うのは分かったし、そのために必要な枠組みも最低限は作ったな。だが、プレー原則とかゲームモデルって意味ではおよそ理想とは程遠いな」

どうしてこうなった

「問題はどうしてこうなったのかっていう点だ」

「まあ編成がザーゴのお好みに合っていたかというと、必ずしもそうとは思えんな」

「対人に強くて繋げるセンターバックとかか」

「そんなスーパーマンみたいなやつはJリーグにいない!っていうのはあるけどな」

「あとはエヴェラウドと上田の共存、2列目のアタッカー問題だな」

「たぶんチーム内でここまで上田の存在価値が伸びてくるとは思ってなかったんだろう。あのタイプが2人いると、そこをシンプルに使った方が良いって思うのは自然なことだが、それはザーゴの目指すポゼッションの部分とは合ってない。ただ、エヴェラウドは助っ人でエースだし、上田は可能性もあるし若くて伸ばしがいがある。どっちかをベンチには置いてはおけないだろう」

「2列目の選手もみんな上手くて良い選手なんだが、戦術兵器みたいなドリブラーがいない。そいつがいると、逆サイドに振った時に一気に切り崩してくれるから、戦い方の幅が広がるんだけどな。松村はそれを担ってくれそうだが、まだ時間がかかるだろうし」

「あとは、ザーゴが来る以前の問題だな。このチームには個人戦術に長けた選手がいないから、プレー原則を一から鍛えないといけなかった」

「ザーゴにとっては、これくらい教えりゃ分かってくれんだろっていうのも理解できていなかったっていうのは悲しいな。組み立てとかは方法論教えとければ目的理解してくれんだろって思ってたら、どんな時でも愚直にやるだけだったっていう。そりゃ上手くいかんだろ」

「その辺理解できていたのが内田なんだろうが、ケガで稼働できずに引退してしまった。彼みたいに個人戦術の高い選手を揃えて彼らの集合知で勝つのが鹿島だったが、そうした選手は最近すぐに海外行ってしまう。だからこそ、スタイルを構築する必要に迫られてザーゴを呼んだんだけどな」

「ザーゴを呼ぶ前にそれが分かっていながらも、それでも惰性的に同じやり方で続けてしまったツケが来てる感じはあるな。そこで確固たる結果を残し黄金期到来出来てればよかったんだが、そうもならなかったし」

「たぶんザーゴとしてみれば、このメンツでも勝つことは出来るが、理想のスタイルをやるには人がいない!ただ、自分はやりたいスタイルがあるし、それを求められて呼ばれてるんですけど!どうすればいいの!?ってずっと思ってたんだろうな」

「ピッチ外からはスタイル作ってくれ、でも結果も出してくれ。今季は30周年なんだ、タイトルはマストだぞ。そう言われてるわけだしな」

「ザーゴが思うより我慢強く見守ってくれるわけでもなかったというのは頭の痛いところだな。だが、クラブの事情を考えればあんまりのんびり出来ない事情も分かる」

「みんなそれぞれの思惑があって、各々それも理解できるが故に、上手くっていないのが余計にしんどいな」

今後どうなる

「問題なのはこのあとだ」

「ザーゴを解任したとて、クラブが目指すスタイルとしては変わりないんだろう。だが、浸透のスピードは上がってこないだろうし、結局のところ今までのスタイルとごちゃまぜにして、ちょうどいいところで妥協しそうだけどな」

「それで勝てるのか」

「厳しいだろうな。たぶんもっと投資していけば勝てるだろう。だが、今の状況でその資金もないだろうし、クラブの価値として他の大都市圏のクラブや強豪クラブに勝てるのかも微妙なところだ」

「ブラジル以外、欧州から呼んできてもっと改革をドラスティックに進める可能性は」

「やってくれればいいが、それはそれでギャンブルだな。そもそも最初からそれが出来ればよかったのでは?とも思うが、それが出来ずに着地したのがザーゴだったのではないかとも思うし」

「今までずっとブラジル路線で来てたチームに急に舵取り変えろっていうのは難しいしな」

「鹿島は勝ってナンボのチームだ。ホームタウンの規模とか考えても、今のチーム状態があるのがそもそも異常な部分もあるんだが、それもこれも今まで勝ってきたから成り立っている部分も大きい。ピッチ外の取り組みも色々行っているが、それもある程度の成績残したうえでこそ成立する部分だろうからな」

「勝てなくなると、チームの財政事情も厳しくなる。財政事情が厳しくなれば、チーム人件費を削らざるを得ない。そうなれば、チームとしての力を保つのが難しくなる。必然的に目標設定も下方修正しなければならなくなるということか」

「最悪のケースではあるし、ネガティブすぎんだろ!とも思うけどな。だが、Jリーグ屈指の強豪から、地方の古豪クラブに成り下がる可能性は否定できない」

「そうした時にみんな付いていけるのか?っていうのはどこかで問われてくるのかもしれないな。もっとも、サッカーなんて見たい時に見ればいいし、やめたくなったらやめていいんだけどな。その辺は自由だ」

相馬さんどうよ

「まあ、眼前としては相馬さんが監督になってどうなるかだな」

「町田での振る舞いを見てるに、たぶんザーゴとやることは大きく変わらないだろう。むしろ、やることが絞られてくるかもしれないから、逆にシンプルになって上手くいく可能性はある」

「相馬さんは町田の時は極端すぎるくらいに陣形を縦横に圧縮して、その中での連続性や切り替えの速さで主導権を握ろうとしていたからな。守備ではとにかく圧縮してサイドに追い込むこと、攻撃では奪ったらその圧縮した状態のままボールを素早く運んでゴールを目指すこと、攻守が切り替わる時は圧縮して人が多いんだからそれを活かして即時奪回に動くこと、この辺は鹿島でも浸透させそうだな」

「イメージで言うと、シメオネが率いているアトレティコ・マドリードに近いかもしれん」

「まあそこまでは振り切らんかもしれんけどな。今の鹿島は色々出来るメンツが揃ってるし、J2には正確なサイドチェンジが供給できるやつも戦術兵器も少なかったから成り立っていたが、J1にはそれが出来るのがゴロゴロいる」

「その辺含めても相馬さんがどうバランス取っていくかは見物だな。ザーゴのスタイルは相馬さんとしても親近感を覚えるものだっただろうし、たぶん今までの鹿島のスタイルとのミックスを考えればある種最適解の人材かもしれん」

「それでいいのか、今後10年20年勝てるのかっていうのはずっと言ってきてるんだけどな」

「なんにせよそこだな。あと、またクラブOBに火中の栗を拾わせる形になってしまったのはちょっとまずい。クラブのスタイルを継いでいくためにOBを積極登用するのは良いが、こんな押し付け方だと別れ際が難しくなるし、駒を減らしていくことにもないかねない」

「石井さんも大岩さんもクラブに戻ってきそうな感じもないし、現実問題難しいだろうからな。相馬さんでもしダメだった場合に、簡単に相馬さんを切れるのかっていう葛藤は間違いなくある。今後これを繰り返していくかもしれんって考えると、まだ夢物語だが岩政さんとか満男さんとか篤人さんにも同じことはとてもじゃないけどやってほしくないので、監督にはさせられないなって思ってしまう」

「あと、相馬さんは上手くいく時はノリがいいけど、上手くいかないとドツボにハマったまま、中々抜け出せないからな。川崎Fの時もリーグ戦8連敗したし、町田の時も最終年は残留争いに巻き込まれた。」

「最初で流れに乗れないと、中々キツいことになりそうだな」

「まあ今季はとにかくリーグ戦でこの下位から抜け出して、安全圏に浮上してもらうのがマスト。あとは、カップ戦でタイトル取れれば満点。相馬さんに求める目標設定は現実的に考えたらこの辺だろうな」

「クラブは全タイトルを目指すって言い続けるだろうけどな。まあそれを言わなくなったら鹿島が鹿島である価値がなくなってしまうので、その辺は上手いこと受け止めてあげたいが」

「なんにせよ、こっから鹿島がどう振る舞うかは見守っていかないとな」

「現時点でカオスの香りしかしないがな。上手いこといく気もするが、大爆死する可能性も捨てきれん」

「それも含めて見守るというのが私の業というわけだ。むろん、そんなこと他の人はやらんでもいいし、誰に頼まれたわけでもないのだが」

「用法・用量を守って楽しむのがサッカーということか。それはそうだな。では、さらばだ」

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