2023明治安田生命J1リーグ中間報告
ヴィッセル神戸
1位 13勝5分3敗 42得点17失点
開幕ダッシュに成功した勢いそのままにここまでトップレースを引っ張っている。好調の要因は何といっても、大迫勇也と武藤嘉紀の前線2枚看板。前線で起点になれ、かつフィニッシュ能力の高い彼らはここまで合わせて24得点と、チームの得点の半数以上を記録している。また、前線はもちろん、中盤から後ろの強度も高いのも特徴である。懸念は層の薄さ。スペシャリティのある選手を多く抱える分、彼らの代わりは用意できないため、疲労やケガは大敵である。ただ、親会社の経営状況もあって、ここまでの移籍市場でも目立った動きはない。8月はアウェイ戦が多いが、対戦の中心はボトムハーフ。今季ほとんど取りこぼしのないチームが夏を乗り切れれば、初の栄冠も見えてくる。
横浜F・マリノス
2位 13勝4分4敗 44得点24失点
王者は今季もここまで順調に勝点を積み重ね、上位を確実にキープ。しっかりと優勝を狙える位置につけている。代名詞とも言える「アタッキングフットボール」は今季も健在で、流動的かつオートマチックな崩しに前線の個の力を組み合わせ、ここまでリーグ最多得点を記録している。戦力は充実しており、何かを変える必要もないが、直近の公式戦3試合勝ちなしなのは気になるところ。一方で、小池裕太と小池龍太が離脱して永戸勝也のバックアップがいない状況だった左サイドバックは、長崎からU-22日本代表の加藤聖を獲得して、穴埋めに成功。ただ、ボランチでは藤田譲瑠チマが海外移籍で、層には若干不安が残るが、その中で韓国代表MFナム・テヒも獲得した。8月は浦和との上位決戦、好調なG大阪、そしてまだクラブとして勝ってないアウェイの横浜ダービーと、重要な試合が続くことになる。
名古屋グランパス
3位 11勝6分4敗 30得点20失点
2年目を迎える長谷川健太監督の下、ここまで安定して上位をキープ。3大タイトルを全て狙える可能性を残している。安定した守備からのカウンターがここまでは機能しており、昨季までチームに足りなかったフィニッシャー役をキャスパー・ユンカーを担えているのが大きい。今夏は積極的に動いており、前線には中島大嘉、ウイングバックに久保藤次郎を加えて、さらに前田直輝が復帰。メンバーが固定されつつあるポジションに、選択肢を増やした格好だ。しかし、ここにきてマテウス・カストロが中東移籍と、大打撃。クラブは代役として、広島の森島司にオファーを出している。8月は天皇杯から中2日で迎える国立での新潟戦を皮切りに、鹿島・浦和・C大阪と上位対決が続く。特に、ユンカーが出場できないアウェイ浦和戦は大きなキーになりそうな試合だ。
浦和レッズ
4位 10勝7分4敗 27得点17失点
新監督の下でスタートした今季は、ACLを制覇して、リーグ戦もここまで優勝を狙える位置につけており、まずまず順調なシーズンを過ごしていると言える。特筆すべきは守備の安定感。守護神西川周作と助っ人センターバックコンビが固める中央はリーグでも屈指で、失点はここまでリーグ最少タイである。反面、攻撃陣は火力不足を感じさせる部分が散見され、ここまで最多得点が大ベテランの興梠慎三の4得点というのは少し寂しいところ。ただ、クラブもその点はわかっており、安部裕葵とタイ代表のエカニット・パンヤ、そして元日本代表の中島翔哉とアタッカーを次々に獲得。8月はACLのプレーオフも控えており、過密日程を戦うことになる。その中で、天皇杯から中3日で迎える横浜FM戦は優勝争い生き残りを懸けた大一番だ。
セレッソ大阪
5位 11勝2分8敗 30得点23失点
小菊体制3年目の今季は、波がありながらも上位陣に食らいついている。ポゼッションを基本軸としながら、ショートカウンターとクロスでゴールを狙うスタイルは変わらず。今季はそこにレオ・セアラ、ジョルディ・クルークス、カピシャーバといった助っ人陣がフィットしてきたのが強み。一方、自分たちの土俵で戦えないと脆さを見せてしまうこともあり、ボトムハーフからの取りこぼしも少なくない。夏の移籍市場では、主力の加藤陸次樹を広島に引き抜かれ、頭数に入っていた中原輝や原川力も移籍。加藤と中原の穴は渡邉りょうと柴山昌也をそれぞれ引き抜いたことで埋めたが、キム・ジンヒョン、奥埜博亮、為田大貴、清武弘嗣と主力に負傷者を抱える現状では、依然として台所事情としてはやや厳しいものがある。8月はボトムハーフとの対戦がメイン。取りこぼしをせずに、名古屋との上位決戦を迎えられるか。
鹿島アントラーズ
6位 9勝6分6敗 28得点20失点
岩政監督2年目の今季は、文字通り紆余曲折なシーズンを送っている。シーズン序盤の4連敗に始まり、そこからの5連勝、再びの勝ちなし×2、と波が大きい中で、なんとか上位を窺えるギリギリの位置にいる。戦い方の幅を広げようとしているが、最も安定しているのはブロック守備からのロングボール攻撃であり、センターラインの個々の出来が良くも悪くもチームの勝敗を左右している。夏の移籍市場では常本佳吾が海外移籍したものの、甲府から須貝英大を引き抜いて穴埋め。さらに、フロントは柴崎岳らの補強に動いていることを示唆している。上位に食らいつくためにはもう落とせない中で、8月はホームゲームが3試合。ここでしっかり勝点を稼ぐことがマストだ。
川崎フロンターレ
7位 9勝5分7敗 27得点23失点
近年、Jリーグにおける覇権争いの先頭に立ってきたクラブは、今季大いに苦しんでいる。海外流出した主力の穴を埋めきれず、さらに主力にケガ人が続出、計算できる面々のパフォーマンスも上がらず、と踏んだり蹴ったりの状況だ。特に、攻撃陣の火力不足の影響は大きく、困ったときに個人で打開できるマルシーニョやレアンドロ・ダミアンの不在はここまで大きく響いている。ただ、そんな状況でも上位争いに首の皮一枚で残っているのは流石と言うべきか。移籍市場でも、ここまで余剰戦力の流出のみに留まっているが、ケガ人の復帰に期待しているとも言えるだろう。もう負けられない8月は、3か月負けなしのホームゲームが3試合控えている。優勝争いをかき乱すことができるか。
サンフレッチェ広島
8位 9勝4分8敗 24得点21失点
スキッベ体制2年目の今季は5月あたりまでは昨季の勢いそのままに順調に勝点を積み重ねていた。だが、そこから攻撃の軸であった満田誠が長期離脱したのを皮切りに、離脱者が続出。主力とバックアップのレベル差が大きいチームはその影響をモロに受け、一気に調子を落としていき、現在は5試合勝ちなしと沼に入り込んでしまっている。強度の高さがベースになっているため、まずはメンバーが戻ってくるのを待つしかないのだが、その中でクラブは毎節のように入れ替わる最前線にユース育ちの加藤陸次樹を加え、軸を一つ作ることに成功。しかし、名古屋からオファーを受けている森島司の動向次第では、戦力ダウンは避けられない情勢だ。現状、残っているコンペティションはリーグ戦のみであり、ACL出場権争いに加わればいいところというのが実情だが、まずは再開初戦の湘南戦に勝って、勝ちなしの沼から抜け出したい。
サガン鳥栖
9位 8勝5分8敗 29得点26失点
川井監督2年目を迎える今季も戦績は安定しないが、大型連敗することなく残留争いとは無縁の中位をキープ。毎年のように主力を引き抜かれることや、クラブ規模を考えれば十分に健闘していると言っていいだろう。ポゼッション&ハイプレスのスタイルは変わらない中で、今季はサイドに擁する長沼洋一と岩崎悠人の質的優位をシンプルに活かすシーンが目立っており、また小野裕二を始めとしたベテランFW陣がフィニッシャーとしてそれなりに数字を残している部分が光っている。その中で、個で守れる存在であった田代雅也をお隣の福岡に引っこ抜かれたのは痛恨だろう。再開初戦はその福岡とのダービーマッチ。相手のJ1復帰後は勝ててないだけに、ここで雪辱を果たしたい。
アビスパ福岡
10位 8勝5分8敗 21得点26失点
J1復帰3年目となる今季は4連敗も経験したものの、直近は3連勝で10位にまで順位を上げ、J1定着を確実なものとしつつある。今季はホームでの勝負強さが光っており、8勝のうち6勝をホームで、さらにうち5勝は80分以降に決勝点が生まれており、まさに「魔境ベススタ」となっている。層が厚くないため、主力にケガ人が続出すると一気にチームとして落ち込んだが、徐々に復帰しており、また井手口陽介や佐藤凌我といった新戦力も欠かせない戦力となりつつある。夏の移籍市場では、センターバックの駒を充実させるべく鳥栖から田代雅也を強奪。再開初戦の鳥栖とのダービーの後は、ボトムハーフとの対戦が続くためにここで勝点を重ね、トップハーフに殴り込みをかけたい。
北海道コンサドーレ札幌
11位 7勝6分8敗 41得点40失点
ペトロヴィッチ体制6年目の今季は、なんというかいかにも「ミシャっぽいチーム」になっている。オールコートマンツーで高い位置からプレッシャーを掛けていくスタイルは変わらずで、ボールを持てば素早く前線のアタッカーに預けて勝負させる。今季はそのアタッカー陣が好調で、浅野雄也と金子拓郎はここまで共に8得点とストライカー不在を嘆いていたミシャに答えを出すかのように結果を出し、ここまでリーグ3位の41得点を記録している。だが、出入りが多いのが今季の札幌の特徴であり、3失点以上の試合がすでに5試合と、失点数もリーグワースト3位となっている。その中で、攻撃陣の主力だった金子の海外移籍は5試合勝ちなしのチームにとっては大きな痛手。右からのカットインを持っていた彼の穴を埋められないようだと、後半戦も苦しい戦いが続くことになる。北海道とは違った、暑さとの戦いにもなるアウェイが4試合控えている8月でどこまで踏ん張れるか。
FC東京
12位 7勝5分9敗 26得点31失点
アルベル監督の下、昨季築き上げたベースを基に飛躍へと繋げるはずのシーズンだったが、開幕から調子が上がらず、戦い方も右往左往することに。その中で、アルベル監督を解任して後任にピーター・クラモフスキー監督を据えることに。クラモフスキー体制では以前のポゼッション志向からよりダイレクトなスタイルに方針を変更。ブロック守備からボールを持てば、素早く前線に預けて手数をかけずに攻め切る方向性となった。その中で、前線で起点となり、かつ11得点と結果も残しているディエゴ・オリヴェイラのパフォーマンスは特筆ものである。リーグ戦は厳しくなったが、カップ戦で生き残っているクラブは、サイドバックに白井康介と、前線にジャジャ・シルバを加えて戦力アップ。安部柊斗の海外移籍の穴も、C大阪から原川力を獲得して埋めている。8月はタイトルの可能性が残る天皇杯は大事な試合になるし、また横浜FM・神戸というトップ2との連戦はリスタートしたクラブにとって試金石になるはずだ。
ガンバ大阪
13位 7勝5分9敗 27得点35失点
ダニエル・ポヤトス新監督を迎えてスタートしたが、序盤戦はとにかく苦しんだ。ポゼッションスタイルの導入に着手し、ボールはまずまず持てていたが、中々ゴールに結びつかず、その間にミスやセットプレーで失点すると、ズルズルいってしまう。そんな試合が多く、開幕14試合でわずか1勝という低空飛行ぶりだった。だが、第15節の新潟戦で今季2勝目を掴むと、そこから4連勝を含む7試合負けなしで下位から一気に脱出。スタイルが嚙み合いつつあり、残留争いの心配のない位置まで浮上してきた。今夏は若手の海外移籍を除けば大きな動きはないが、戦力的にも新戦力がフィットしてきたことで整ってきており、補強の必要性は感じない。この勢いでどこまで登っていけるか。中断明けは川崎F、横浜FMと強敵相手のアウェイ連戦が続くが、ここを乗り切れるようだと実力は本物だろう。
アルビレックス新潟
14位 6勝6分9敗 22得点29失点
6年ぶりのJ1を戦う今季は、ここまで残留争いに巻き込まれることなく、まずまずのシーズンを過ごしている。J2を席巻したポゼッションスタイルはJ1でも通用しており、J2時代とメンバーが大きく変わらない中で、一定の結果を残せている。気になるのはフィニッシャーの不在。確固たる得点源がおらず、7得点を記録していた伊藤涼太郎が海外移籍でいなくなってからは、余計にその色が強まっている。それを踏まえてか、群馬から長倉幹樹を獲得。アタッカーの頭数を増やして、後半戦に臨む。また、勝ちなしの相手に勝利をプレゼントしてしまう悪癖があるのも見過ごせない。今季だけで、鹿島・横浜FC・G大阪・京都に低迷から抜け出す勝点3を献上してしまっており、逆に自分たちが勢いに乗り切れないでいる。8月唯一のホームで迎える湘南戦こそ、確実に3ポイントを掴み取りたい。
京都サンガF.C.
15位 7勝2分12敗 24得点31失点
J1復帰2年目の今季は、波の大きなシーズンを送っている。開幕2連敗スタートから3連勝で巻き返したと思ったら、そこから連敗で逆戻り。6連敗の泥沼にはまったものの、そこから連勝で残留争いから一歩抜け出す、というような状況だ。強度の高いサッカーで相手を押し込んでいくスタイルは変わらないが、先制しないと打ち手が限られてくるのが弱いところ。事実、今季先制されながら勝点を掴めた試合は横浜FCからの2つの逆転勝ちのみである。それでも、ここ最近は競った展開に持ち込めれば、終盤はクロスやセットプレーからジョーカーに置いているパトリックのパワーで押し切るというパターンができており、パトリックはここ6試合途中出場ながらもチームトップの9得点と結果を出している。夏の移籍市場では長身FWの原大智と固定できなかったGKにク・ソンユンを加えたものの、右サイドバックの主力だった白井康介を引き抜かれたのは痛恨だろう。中断明け初戦はホームに柏を迎えるため、ここで勝てれば残留争いから完全に脱出できるし、負けると再びその沼に足を踏み入れかねない、重要な試合だ。
横浜FC
16位 3勝6分12敗 15得点41失点
1年でJ1に戻ってきた今季は、序盤から大苦戦。4バックにシフトして、ハイプレスの色を強めていったが、強度が足りずに守備が崩壊。開幕10試合勝ちなしの泥沼だったが、第11節の新潟戦で昨季慣れ親しんだ3バックに戻すと今季初勝利。そこからは守備は人数をかけて守り、カウンターで少ないチャンスを活かす戦い方に切り替え、なんとか勝点を積み重ねている。だが、その中で6得点と結果を残していたエース小川航基が海外移籍。得点源を失った中で、現在は7試合勝ちなしと厳しい状況が続いている。夏の移籍市場で巻き返しの補強をしたいところだが、サウロ・ミネイロに移籍の噂こそ出ているものの、現状外国籍枠はフルで使っており、プラスアルファを簡単に望むのは難しい部分がある。残り試合は残留を目標に戦うことになるが、3バックに変えてからは1敗しかしていないホームで勝点を積み重ねたい。8月のホームゲームは全て上位勢との対戦だが、大物食いを起こせるか。
柏レイソル
17位 2勝8分11敗 18得点33失点
ネルシーニョ体制でスタートした今季は、開幕から昨季の勝ちなしの嫌な流れを引きずり、開幕6試合勝ちなし。第7節の鹿島戦で初勝利を挙げて持ち直すかに思われたがその後も低空飛行を続け、第13節で横浜FCに敗れるとネルシーニョ監督を解任。コーチから昇格した井原正巳監督に託したが、その後も現在に至るまで10試合勝ちなしと、監督交代の効果はここまで見えていない。今季はボールを持てる面々を多く獲得し、よりポゼッション志向を強めるかに思えたが、ハマらず逆にカウンターで最終ラインが晒されるシーンが増え、攻撃面でもエース細谷真大の一発とマテウス・サヴィオの打開力頼みになってしまっている感は否めない。守備陣の立て直しに浦和から犬飼智也を補強したが、残留争いから抜け出すためにさらにセンターラインに1枚助っ人を加えて、個の力で攻守の課題を解決してもらうのも手か。再開初戦は京都との直接対決になる。ここで勝てば、残留争いに相手を引きずり込める。必勝戦だ。
湘南ベルマーレ
18位 2勝7分12敗 26得点44失点
山口智監督3年目の今季、序盤戦はまずまずの滑り出しだった。開幕戦でマンツーマンのハイプレスがハマり、鳥栖に快勝。大橋祐紀と町野修斗の2トップも好調だったが、大橋がケガで離脱すると雲行きが怪しくなり、4月から泥沼に突入。5連敗と4連敗を含み、現在まで15試合勝ちなしで降格圏の最下位に沈んでいる。強度を押し出し、ハイテンポのサッカーを好んでいるが、全体的に火力やクオリティ不足が響いており、相手を上回れずに次第に劣勢を強いられる展開が続いてしまっている。さらに、この状況で得点力でチームをけん引していたエース町野修斗が海外移籍。残留に向けては厳しい状況だが、この夏で3人の即戦力を補強。センターラインの新戦力が結果に直結するパフォーマンスを見せられるかに、残留の成否は大きく関わってくるだろう。8月は同じく勝ちのない状況に苦しむ広島戦から始まる。まずは一刻も早く勝ちなしの嫌な流れを断ち切り、生き残りへの足掛かりとしたい。
遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください