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FC東京戦のとある場面について

今節、FC東京に敗れてリーグ戦6試合勝ちなしとなった鹿島アントラーズ。試合としては、良くも悪くもその前の試合からあまり内容が変わっておらず、依然としてしんどいな、というのが現地観戦と見返して思った感想である。そんな状況で試合全体を振り返るのもあれなので、今回はある場面を切り取って考えてみたいと思う。

そのシーンは83分、鹿島が左サイドからのコーナーキックを得たシーンだった。このシーンの前にアルトゥール・カイキと樋口雄太に代えて、エヴェラウドと松村優太の投入を準備していた岩政大樹監督は、このコーナーキックのところで交代を完了させようとしたが、カイキから待ってくれという要望が入り、結果として岩政監督はそのカイキの意見を受け入れて交代を一時キャンセルしたのだった。

その結果、コーナーキックでゴールを決めることはできず、さらにそのままプレーが切れないままFC東京の攻撃に移り、最後は安部柊斗に豪快なミドルを叩き込まれて、鹿島は失点を許してしまった。

流れとしてはこういうことになる。

鹿島がコーナーキックを獲得

第4審判が岩政監督に交代をこのタイミングで行うか確認を取る

岩政監督はこのタイミングで交代すると返答

交代が実行されようとする

ピッチ内にいるカイキが待ったをかける

岩政監督がそれを受け入れ、交代のキャンセルを決断

何が問題なのか

まず、このセットプレーでカイキを下げなかったことでゴールが生まれなかったことやその流れから失点してしまったことについては、個人的にはあまり重要視していない。カイキを下げていればゴールが入ったかもしれないし、失点していないかもしれないが、そんなのは結果論に過ぎないし、その逆もまたあり得る訳なので、そこをどうこう言っても仕方ないからだ。

問題は岩政監督が自身で一度は下した決断を、ピッチ上の選手の要望によってあっさりとひっくり返してしまったことにある。岩政監督はカイキのヘディングが強いことも、代えようとしていたキッカーの樋口雄太のプレースキックの精度が高いことも十分承知していたが、それでもこれまでの試合展開や選手の疲労具合、投入しようとしていたエヴェラウドと松村への期待値も考慮していた上で、代えることを選んだはずだ。

一方、カイキにしてみればこれまでヘディングの強さで多くのゴールを生み出していて、セットプレーは自身にとって絶好のゴールチャンスである。決められる自信もあったからこそ、交代を待ってくれという要望を出したのだろう。これはこれで理解できる話だ。

だが、監督がエヴェラウドの方がゴール期待値が高いと判断したのなら、それを貫き通さなければならなかった。なぜなら、あそこで選手の要望を聞き入れてしまったことで、今後ああいう時に交代を拒否すれば監督は受け入れてくれると選手たちには印象を与えてしまうし、逆にそこで要求を今度は監督が受け入れなければ「カイキは許されるのに、なんで俺は許されないんだ」という話になってくる。サッカーチームは試合において、監督が一番権力を持ち、その分決断に対しての責任を負うという構図は一度崩してしまうと、チームとして成り立たなくなってしまう。「監督は指示するだけでプレーする訳じゃないんだから、言うこと聞かなくてもよくね?」がまかり通ってしまうのだ。これは組織として健全な形とは言えないだろう。

組織に必要なこと

こういうシーンを見ると、個人的には岩政監督はチームマネジメント苦労してそうだなー、という印象を持ってしまう。確かに理論派であるし、その上で選手の自主性も尊重してくれるし、インプットもやりがいを持ってやれるようにしてくれる部分があり、選手たちからそういう声が聞こえることも少なくない。だが、監督としてはかなり若いし、何よりJクラブの監督は初めてであるという、まだ監督としては若葉マークの付いている状態だ。「プレーヤー岩政大樹」や「解説者岩政大樹」のことをよく知らない外国籍選手たちは特に後者の方が印象としては強くなってしまうことは否めない。

そんな中で岩政監督は下手に自分の型に押し込もうとするより、型は広めに設計しておいてその中では自由にやってもらって構わないというスタンスを採っている。その方が選手たちにストレスをかけずにより自分の力を発揮してもらいやすくなり、勝利に繋がる可能性が高くなるというアプローチなのだろうが、どこまでを許容してどこからが許容されない自由なのかを明確にしておかないと、今回のようなことは起こり得てしまうだろう。そうして今回みたいなことが続いていくと、チームとしては成り立たずただの個々人の集合体になってしまう。その状況で勝ち星を得ようとするのは、とても現実的なことではない。そもそも相手と同じ土俵に立つことすらできていないのだから。

サッカーにおいてピッチに送り出す前の意思決定は監督によって行われるべきで、そこには意志を纏っていないといけない。意志のない決定に人は付いていこうと思わないし、最終の意思決定者がブレるとそれは組織としての連続性を欠くことになってしまう。改めて岩政監督には勝つこともそうだが、強い意志のもとで判断を下し、それを全うしてほしいと思う。結果の良し悪しはその判断がベースになるし、そこが固まらないままチームとして良いのか悪いのかわからない判断の下で動き続けるのはやめてもらいたい。それが私の鹿島にお願いしたいことである。

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タケゴラ
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