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ゴール期待値と鹿島アントラーズ

早速だが、皆さんはゴール期待値というものをご存じだろうか?

ゴール期待値というのは、シュートチャンスにおいてそのシュートがどれだけ決まりやすいかというものを0〜1の間で表したものであり、1に近ければシュートはより決まりやすいと言えるシュートになるし、逆に0に近ければ決まりにくいシュートと言えることになる。

これを1試合全てのシュートにおいて割り出して合計していければ1試合に何点入りそうだったかというのをシュート期待値で表すことができるし、さらにこれをシーズン通した平均で見ることもできる。また、守備においても同じような計算ができるので、失点においてもシュート期待値は用いることができるわけである。

今回はこのシュート期待値を用いて、過去4シーズンの鹿島アントラーズを振り返っていきたい。ちなみにデータはFootball Labから引用している。

ゴール期待値

まず、ゴール期待値から見ていくが、その前に考慮しておきたい部分がある。それは誰がシュートを打っているのか、ということ。上述した通り、ゴール期待値が高ければ高いほどゴールが入りやすくなるわけだし、そのゴール期待値が高まるように攻撃を構築していくのが理想的なのだが、さらにその上でより決定力の高い選手にシュートを打たせる、ということを実際の試合では考えていくべきなのである。ゴール前のチャンスを迎えているのが、チームのエースストライカーなのか、たまたまそこに居合わせてしまったサイドバックなのかでも話は変わってくるし、上田綺世のようなエースだったら多少ゴール期待値が低くてもシュートを打てば、ゴールが入る可能性が高まることが望めるかもしれない、というわけである。

では、各年のゴール期待値とチーム内シュート数トップ5を見ていきたい。

2019シーズン

※数字は左から、「1試合平均のゴール期待値」「1試合平均のゴール数」「左記2つの差分」「順位」

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2019&data=expected
https://www.football-lab.jp/kasm/ranking/?year=2019

リーグ3位、ゴール数はリーグ4位タイに終わったこのシーズン、ゴール期待値は実際値の方が上回っており、健闘した部類と言える。シュート数で見ても、トップ3とその成功率はまずまずの成績を残しており、失点数が1試合平均で1を切っていたことも考えると、思うようにチャンスを構築できていなかったことがリーグ優勝逸の原因とも捉えられるだろう。

2020シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2020&data=expected
https://www.football-lab.jp/kasm/ranking/?year=2020

昨季とは打って変わって、ゴール期待値の方が実際値を大きく上回っている。原因はシュート数ランキングを見ると明らかで、トップ2のシュート成功率が明らかに低いのだ。このシーズン18ゴールを奪ったエヴェラウドでも成功率は11.7%と、実際はもっと奪えていたことがわかる。チャンスを作りながらも決めきれないことが成績にも影響していることがデータからも窺えており、ザーゴが頭を抱えていたシーンの理由がわかるような形となってしまった。

2021シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2021&data=expected
https://www.football-lab.jp/kasm/ranking/?year=2021

昨季よりゴール期待値は落ちているにもかかわらず、実際値は上昇しており、数字上は改善したと言える。その影響として大きいのが、上田綺世の覚醒だろう。広いシュートレンジと高い決定力を持つ彼がレギュラーに定着したことで、昨季よりもシュートが決まりやすくなったという数字にダイレクトに影響している。シュート数2位のエヴェラウドの大スランプがなければ、さらに数字の向上が見込めたシーズンでもあった。

2022シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2022&data=expected
https://www.football-lab.jp/kasm/ranking/

さて、今シーズン。ゴールの実際値こそ期待値を上回ってはいるが、大問題なのがそもそもゴール期待値が1試合平均1.1と過去最低レベルなこと、要するにゴールが奪えそうなチャンスがそもそも過去シーズンに比べて圧倒的に作れていないということだ。さらに、シーズン通して稼働した面々のシュート成功率があまり高くないことを考えると、実際値が上回っていたことに影響したのはシーズン半分までしかいなかった上田綺世の存在だろう。

こうしたことを考えると、今季の鹿島はチャンスを作ることもそれを決める側にも課題を少なからず残していたことが窺える。来季に向けてシュートチャンスを増やせるような攻撃の構築、またシューターとなるターゲットをどのように用意するのか(現有戦力を活かすのか、補強で埋めるのか)、その両方の課題解決が上位進出に向けては必須課題となってくる。

被ゴール期待値

一方の、被ゴール期待値においても振り返っておきたい。これは相手のシュート期待値に基づいて、1試合においてどのくらい失点しそうだったか、実際どのくらい失点したのかの比較を測る数字になっている。

※数字は左から、「1試合平均の被ゴール期待値」「1試合平均の失点数」「左記2つの差分」「順位」

2019シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2019&data=expected

2020シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2020&data=expected

2021シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2021&data=expected

2022シーズン

https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2022&data=expected

ここ4シーズンで比べていくと、被ゴール期待値は大体0.9〜1.3の間で推移しており、昨季が一番低かったことがわかる。昨季についてはおそらく町田浩樹の存在が大きく、彼の存在がそもそもシュートまでいかせないシーンを多く作っていたのではないだろうか。そう考えると、今オフに強いセンターバックの補強に動くのも納得がいく。

また、期待値よりも実際値の方が下回っている時はクォン・スンテが正守護神だった時のシーズン(2019,2022)である。いかにこの助っ人の力で失点を減らしてきたのか、ということが窺える結果となった。

まとめ

こんな感じで振り返ってきたが、ゴール期待値はあくまで数字上のデータに過ぎないし、フットボールはそれだけでは計れない不確定要素も多いスポーツだ。一つの参考にしてもらえば幸いである。

リーグ優勝を果たしているようなチームは、大体1試合平均2ゴール以上であるし、失点は1試合平均で1を切っている。ここを目指していかなければ、目標である結果を達成するのは難しい。そこを踏まえて、来季に期待したい。


遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください