鹿島アントラーズは今後どうしていくべきなのか考えてみた
「なんとも壮大なテーマだな」
「だからこそこの形式になったというわけか」
「読んでもらいやすいし、書きやすいからな」
「真似事と言われてもこう書くメリットはあるというわけか」
現状の課題認識
「そもそも今の鹿島で問題になっているのはどういうことだったのか」
「今までは個々の力だったり集合知を最大限に活かすやり方だったな。そのため、スタイルの定義は最小限に留めて、各々が自由に流用出来る部分を多く取っていた」
「だが、海外移籍含めインアウトが活発になっていく中で戦力維持が難しくなってきたし、それと同時にJリーグ全体で戦力が均衡化してきて、鹿島が優位性を前ほど示せなくなってきた」
「そこに欧州から再現性持ってサッカーやろうぜ!の流れがやってくる」
「こうなると、以前のような結果は出せない!しんどい!ってことになってしまう。ただ、世界市場の中での日本サッカーの立ち位置だったり、鹿島の財政状況的に選手を買い集めて、質と集合知で勝負!っていうわけにはもういかなくなってる。」
「じゃあ我々も世界の潮流に乗っかって、ゲームモデルとプレー原則をしっかり定義して、再現性を追い求めるムーブでいこう!それを根付かせよう!これが今の鹿島のオンザピッチでのミッションになってる」
気づきのチャンス
「ただ、こうした課題感が叫ばれているのは今に始まったことじゃない。ここ数年ずっと言われ続けていることだ」
「ということは、この課題感を認識できていないのか、課題だとは思っていないのか、課題としては捉えているものの解決できていないのか、の3択になるな」
「おそらく、クラブとして本格的に課題解決に動き始めたのはザーゴを招聘したあたりだろう。だが、その前にも課題として気づくチャンスが2度はあったと筆者は見ている。」
「2度か。いつだ?」
「1度目は2017年夏にセビージャとやった親善試合の時だ」
「安部裕葵が無双して、勝った試合か」
「ああ、だがこの試合の前半はボッコボコにされた。後半、まだプレシーズンでセビージャが大きくメンバー入れ替えてきたから勝てたようなものだ。」
「まあその半年前にレアルとあんな試合してたら、もうちょっと戦えるはずだろって思わなくはないな」
「その試合の後に、筆者はこんなこと言ってる」
「それで、2度目はいつだ?」
「2018年のクラブワールドカップ」
「レアルとリベンジマッチ!だったけど殴られて、南米王者にもボコられたアレか」
「まあ前回と違ってアウェイだった、三竿健斗や鈴木優磨といった主力がケガでいなかった、というのもあったが前回より確実に完敗だったな」
「んで、筆者はこんなこと言ってた」
「あんま言ってることが変わってないな」
「そうなんだ、だがこれを解決するアクションはザーゴ招聘まで待たなくてはならなくなる」
ザーゴ招聘のわけ
「では、なぜザーゴ招聘に至ったのか、というところだ」
「2019シーズンはリーグ戦で一時首位に立ちながらも優勝を逃し、天皇杯でも神戸に決勝で敗れたな」
「天皇杯決勝の時点では大岩さんの退任は決まっていたからそこは関係ないだろ。大きかったと思うのはリーグ戦で最終盤に大失速したことだ。ケガ人が出ると途端にチーム力がガタ落ちしたし、何よりピークが最終盤の前に来てしまっていた」
「たぶん、ここで来年多少補強したとてこのままだと同じムーブになると思ったんだろうな。だからこそ、ザーゴを呼んでゲームモデルとプレー原則を仕込んでもらおうと思った」
「その時に設定した求めるゲームモデル、スタイルはハイプレスからのショートカウンター、に設定したわけか」
「レッドブルグループのクラブで指揮を執っていたザーゴに声をかけたのもそういうところからだろう。しかも、鹿島にゆかりのあるブラジル人でJリーグでのプレー経験もあって日本もそこそこ知っている。最高の人選だったはずだ」
ザーゴが上手くいかなかった理由
「でも、結果としては上手くいかずに2年目始まって早々に解任、となってしまった」
「理由はいくつかあるが、ザーゴの目指すスタイルとクラブとしてやってほしいスタイルに齟齬があったところは見過ごせないな」
「クラブとしてはもっとハイプレス!ストーミング!に振り切ってほしかったし、ザーゴとしては丁寧に繋ぐことも大事にしたかった」
「これに関してはクラブの状況認識が甘いように思うな。ボールをある程度繋げなければ、ストーミングの先には過労死が待っているし、レッドブルグループの系列でもナーゲルスマンが率いていたライプツィヒのようにポゼッションもちゃんとやるチームだって普通にある」
「レッドブルグループ=ハイプレス=繋ぎにはこだわらない、という認識だったということか。だが、そんな繋げるように沿った編成にしてはしていなかったし、選手たちの戦術理解も思ったほど進まなかった」
「別に今の編成でポゼッションやろうと思えば出来ると思うけどな。これで選手の質が足りない!はちょっとわがままが過ぎるように思う」
「まあフロントとスタッフ陣の意思が噛み合っていなかった以上、選手たちとの意思疎通も完璧ではなかったのかもしれないがな」
「あと、ザーゴは戦術家ではなかったのだと思う。彼はどちらかというと思想家に近い。」
「どういうことだ?」
「ザーゴにはこういうサッカーをやりたい!っていう明確な画がある。そこに妥協もあまりしたくない。だが、それを実現するにはどういうプロセスが必要で、どういう落とし込みをすればいいのか、っていう部分はあまり上手くない。」
「つまり、ザーゴのやりたいことを理解して、それを実現できるようにトレーニングの中に落とし込める人間が必要だったというわけか。ただ、鹿島にはそれがいなかった、と」
「そういうことになるな。いずれにせよ、チームを変えてくれってタスクをあまりにもザーゴ一人に押し付けすぎた感はある。解決方法が属人的過ぎるし、それでもし上手くいってもザーゴがいなくなってからはどうすんだ?って問題に必ずぶち当たることになる」
「まあグアルディオラとかクロップとかシメオネとかのレベルは世界でもほぼいないし、まずJリーグには来ない。全ての監督がああいうスーパーマンではないということだ。」
原点回帰での誤算
「で、ザーゴを解任した後は相馬さんがコーチから昇格する」
「元々、ザーゴの後を相馬さんが継ぐのは既定路線な感じはあったが。こういう形だったのは完全に予想外だが」
「相馬さんはソリッドなチームを作ろうとしていたが、段々といわゆる鹿島っぽいチームになっていったな」
「この辺はある意味流石だし、OBのなせる技とも言えるだろう。だが、そうしてでも結果的に30周年でマストにしていたタイトルは獲れなかった」
「リーグはまだしも、カップ戦は可能性十分にあったし、なんなら今までの鹿島でも優勝できるような土俵と認識していたからな。ゲームモデルをゲームプランでカバーしやすくなるのがカップ戦であるし」
「しかも、負け方が良くなかった。ルヴァンカップも天皇杯も敗退した時は完敗だった。たぶんもう一回やっても今のままじゃ勝てないだろ、って思うくらいには」
「ここがクラブとしては誤算だったんだろう。今のままじゃリーグ優勝には足りなくてもカップ戦優勝できるくらいの力はある、だからここにさらに戦力上積み出来ればリーグ優勝にも手が届くのではないか、って思ってた節があるように思えた」
「だからシーズン終盤になってやたら積極補強の姿勢を打ち出していたわけか」
「だが、それでは埋めきれない差があることにことに気づかされてしまった訳だ。カップ戦はベスト8で終わってるからな、惜しいとかのレベルじゃない」
「こうも結果にハッキリ出てしまうと、ごまかしは効かないからな」
来季以降の目標とすべきこと
「それで、今オフの監督交代、強化部のトップの交代に繋がるわけか」
「監督の部分で言えば、レネ・ヴァイラーを呼んだのは妥協なく改革するって意思の表れにも見えるし、ブラジル人や日本人では適任者がいなかったというようにも見えるがな」
「そりゃザーゴみたいなのは、そうゴロゴロと転がってないからな」
「まあなんでレネ・ヴァイラーなのかは謎だがな。新しい強化部の体制が呼んだのだろうが、どの関係で呼んできたのかは分からんし、実績も決して超一流というわけでもない」
「でも、自分たちのスタイルに合っているであろう監督を呼べた、ムルジャ・岩政さんと監督の意図を上手いこと理解して選手たちとの橋渡し役になってくれそうなコーチも揃えた。ここまでの動きとしては悪くないように思える」
「たしかに、ザーゴの失敗を繰り返さないようにしようという意図は強く感じられる。でも、懸念しているのはレネ・ヴァイラーに全てを託そうとしてはいまいか?ということだ」
「監督一人が全てを変えてくれるスーパーマンではない、ということか。上手くいこうともいかなくても、レネ・ヴァイラーの後も考えなくてはいけないし、こちらとしてももうちょっとスタイルを明確に定義していきながら、監督の目指すものと擦り合わせていく必要があるからな」
「属人的に成り立つスタイルは対象人物がいなくなると途端に脆くなるからな。鹿島が確立しなければならないのは、誰が監督でも誰が選手でも誰がスタッフでも成り立つスタイルだ」
「誰が出ても鹿島は鹿島、とはよく言ったもので、改めてこれを目指さなくてはいけないということか」
「ただ、それを目指すにしてはまだ不安な点は少なくない」
「監督やスタッフ陣への依存度が強いという懸念は聞いたが、人選自体は悪くないと思うのだが」
「まず補強の方向性だ。すでに戦力が飽和した状態で長いこと戦ってしまったし、この2年で積み上げが上手くいかなかったこともあって、すでに主力がそこそこ出ていってしまっている」
「しかも、どう使ってもちゃんとやってくれそうな面々だというのは痛いな」
「さらに、獲得している選手も本当に新監督の目指すスタイルと合っているのか、リクエストに添えているのかというのは疑問だ」
「なんとなく、思ってたんと違う!になりそうな気はしないでもないな」
「結局、もう一度戦力整理を必要とする可能性も捨てきれない。そうなると、さらなる別れを覚悟しなくてはならないし、その穴を埋め切れるとは必ずしも言い切れない」
「こういう部分でトライ&エラーを繰り返していると、周りから見てクラブの魅力も下がってしまうしな」
「まあ、もしここで間違えていてもすでに手遅れではあるので、こればっかりは沿えているよう祈るしかない」
「あとは、鈴木満が鹿島の強化のトップではなくなった、という事実はかなり重い。ある意味で、ジーコと並ぶレベルで鹿島の象徴だったからな」
「個人的にはジーコスピリットとか鹿島らしさ、っていうのは満さんがいるからこそだったという部分は大きいと思っている」
「ここまで色々言ってきたが、それでもここ数年リーグ戦では必ずトップ5には入っているのが鹿島だ。そのレベルを維持できている、というだけでも普通のクラブの強化部だったら高評価されているはずだ」
「だが、それでも変えたということは、上手くいく可能性もある反面、躓いたら底なし沼、という可能性もある。逆に言えば、そういう覚悟を持ってでも、変革を求めたということだ」
「そろそろまとめといこうか」
「一連の流れでクラブが変わりたいという意思は見えたし、前回の反省も活かそうとしているようには見える」
「だが、監督を始めとした一個人への属人的な依存の可能性は懸念材料として残っているし、選手構成も必ずしも希望に沿えているかは分からない。本当にタイトルをすぐにでも狙える体制なのか?そうでないなら、どんな未来図でタイトル獲得までに辿り着こうとしているのか?そういった疑問は残ることになるな」
「まあとりあえず、まあ来季の鹿島の求めたいのはゲームモデルの確立とそれに伴うプレー原則の整備になる」
「何が基準となっていて、こういうプレーは許されて、こういうプレーは許されない。その辺がハッキリしてくれば、それに基づいて分析と改善が出来るからな」
「特にプレー原則の部分だな。今の鹿島は結果的に上手くいけばなんでもあり、になっている。これではその場しのぎにしかならないし、積み上げもクソもない」
「たぶん、こういう部分がちゃんとしていれば多少結果が出なかろうとグラつくことはないし、これまでの経験上だと鹿島の戦力ならそこまで大コケすることはないはずだからな」
「ラストチャンス、とまではいかないが、今の鹿島にこれ以上しくじっている暇はないのも事実だ」
「来季こそ変革が成功することを期待したいな」
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