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2023シーズンのJ1と鹿島アントラーズ

本命不在のシーズンに

今季のJ1で優勝候補の大本命に推せるチームはいない。開幕前はそんな状況である。

もちろん、横浜F・マリノスと川崎フロンターレという昨季の1位・2位が戦力的にも完成度的にも一歩抜けた存在であるのは間違いない。だが、前者は昨季リーグMVPの岩田智輝が、後者は日本代表の谷口彰悟が海外へと移籍していったのが大きく、補強もしているがその穴が完全に埋まったとは言い難い状況である。そう考えると、この2強とそこに追いつこうとする第2集団との差は現状では縮まっていると言える。上位クラブの戦力ダウンという状況をリーグ全体で考えるとリーグのレベル的に決して喜ばしいことではないのだが、今年優勝の可能性は昨季よりも多くのチームに広がっている状態だ。

2強を追う第2集団として挙げられるのは、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズ、セレッソ大阪、FC東京あたりだろう。広島はスキッベ監督の下、新たなアグレッシブなスタイルを身につけ、昨季はルヴァンカップのタイトルも手にした。選手層が厚いわけではないが、主力は全員が残り、成長著しい若手もいる。鹿島は後で触れるとして、C大阪も昨季はシーズンを通して中位より上の第2集団の立ち位置をキープ。ここもソリッドなチーム作りができており、伸び盛りの若手も多い。ベテランになった香川真司や清武弘嗣といった存在が期待通りの稼働率を見せられると、面白いことになるだろう。FC東京はアルベル監督の2年目のシーズン。昨季土台として築いたものをベースに、仲川輝人や小泉慶といった即戦力を加えて、戦力アップに成功している。

その他にも、新監督の下で巻き返しを図る浦和レッズ、大きく主力が入れ替わった柏レイソルといったチームは一気に飛躍の可能性を秘めているチームであり、徐々に強者とそうでない者との差が現れるようになってきたJリーグではあるが、まだまだ実力伯仲の部分が大きいと今季も言えることになるだろう。

鹿島にとってはチャンスのシーズン

そんな中で、鹿島にとっては今季はチャンスとも言えるシーズンである。自分たちは主力の流出を最低限に留めた中で、課題になっていたセンターバックに計算ができる上に日本トップレベルである植田直通と昌子源を加えることに成功。攻撃陣に藤井智也、知念慶、垣田裕暉らが加わったことを考えると、戦力アップしたと言っていい状態になっている。その上で、追いかけるべき対象である上位2クラブは戦力を落とした状態で開幕を迎えることになる。単純な戦力差なら、シーズンを迎える前にその差が縮まっているのだ。リーグタイトルの可能性はそれだけ上がっていると言ってもいい。クラブの訴える「タイトル奪還」という目標はそこまで非現実的なものではないだろう。

だが、それは昨季のリーグ全体を通した4位という順位から言えることであり、リーグ後半戦だけに絞ってカウントした2ケタ順位という結果では、とても鹿島にリーグ優勝の可能性を現実的に見出すのは難しい部分がある。おまけに、キャンプの練習試合では3連敗を喫している。必ずしもシーズンの結果と一致するものではないので気にする必要はないが、チームの成熟度合いはまだまだ道半ばということが窺える状況だ。

ただ、そうした風にチーム状況を捉えても、今季はレギュレーション的にチャンスである。なぜなら、今季は降格枠が最下位の1つのみ。つまり、ビリにならなきゃ落ちることはないのだ。これを後ろ盾にして、チームとしてスタイル構築に時間を費やす、ということも判断としてはそこまでぶっ飛んだものではないのである。

このように、今季の鹿島は優勝を狙う上でもチャンスであるし、スタイル構築を進める上でもチャンスのシーズンでもあるのだ。そうなると、もちろんその両方を目指して戦っていくことになるだろうが、もし択一の判断を迫られた時に監督がどちらを選択するのか、そしてそれを強化部はどう受け止めるのか。この部分は今後の鹿島を占う要素の1つになるだろう。

スタートダッシュは狙っていない?

昨季の鹿島は開幕5試合を4勝1敗と好発進、スタートダッシュに成功した。今季のチームもそれはもちろん狙っていくことになるだろうが、今季のチームはそれをそこまで重要視していないのでは、と個人的には思っている。昨季はレネ・ヴァイラー監督不在の中で開幕したため、ヴァイラーにいい形で引き継ぐためにそれなりに結果が必要だったが、今季は岩政大樹監督が昨季から引き続いてスタートから指揮を執るシーズンであり、新たなスタイルの構築に継続して取り組んでいる中での開幕だ。昨季とは置かれている状況が違うわけである。

もちろん、今のチームはまだ不安定な状態ではあるし、開幕から連敗続きだと流石に土台の部分がグラついてくるリスクはある。それでも、今季のチームが目指すのはスタイルの構築が進み、シーズンの一番重要な最終盤に最大値が発揮できるような状態になっていること。そこまでに右肩上がりで行けるような状況であれば、序盤で期待したような結果が出ないことにそこまで動揺することはないと考えている、と思っている。

一番大事なことはシーズンが終わった時に、一番上に立っていること。そのための道のりがいよいよ始まっていくことになる。様々な可能性を持った鹿島アントラーズの2023シーズンの行く末に注目したい。

遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください