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松村優太の期限付き移籍について


現状使われない理由

「正直、(なぜ主力組から外されたのか)分からなかったのが正直なところ。でもウダウダしてても仕方ない。辛抱の時間だったですけど、毎日練習はあるし、毎週試合は来るし、自分の100%を出すことだけは続けていこうと自らを奮い立たせました」

パリ五輪行きのラストチャンスをつかめるのか?稀代のドリブラーの本領を見せてくれ!/松村優太(鹿島アントラーズ)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.41】

「世界のトップレベルの選手も全てのシュートが入るわけじゃない。チャンスを増やしていけば、自ずと結果につながってくると思う。試合の中で自分のリズムを作ることを強引にやったりしていけば、もっと周りが見えてくる。そう信じて取り組んでいます」

パリ五輪行きのラストチャンスをつかめるのか?稀代のドリブラーの本領を見せてくれ!/松村優太(鹿島アントラーズ)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.41

この記事を読んだ時に、この先ポポヴィッチが監督でいる中で松村が出場機会を得るのは、正直かなり難しいだろうなと思っていた。自分が使われてない中で、なぜ使われてないのかについて突き詰めずに、自分のストロングをアピールすることを押し通そうとするところは、現状の鹿島のスタイルではあまり受け入れられないだろうな、と思ったからである。

松村が現状使われていないのは、2列目としてのタスクをこなせていないからという理由に尽きる。今の2列目の選手に求められているのは、時間を作ることと、他の選手が時間を作っている時は裏を狙っていくこと。組み立てにそこまでこだわりを持っているわけではないし、早い段階で縦につけていくことが多い今の鹿島では、優磨や2列目の選手がキープすることで味方の押し上げや味方の動き出す時間を確保することが重要になってくる。その時に、キープすることを考えるとプレーとしてはどうしても空中戦だったり、相手を背負ってのキープだったり、ゴールに背を向けて身体を張るプレーが求められる。それができているのが仲間であり、師岡であるということだ。

松村はまずそうしたプレーが得意ではないし、何よりそうしたプレーに対して積極的ではないのが現状の立場になっている理由としては大きい。得意ではないのはしょうがないにしても、ずっと大外に張りながら裏へのボールを待っているとなると、チームに迎合する姿勢としてはどうなのかという部分は否めない。裏を狙っていくことは適合しているのでは?、という点もあるが、今の2列目に求められているのはボールを引き出しながらも、裏も狙うというところ。ただひたすらに仕掛けるか裏抜けするために、高い位置に張り続けるというのは決して求められているプレーのそれではない。

得意なことだけで

では、なぜ松村はそれでも高い位置に張り続けているのか。それは、それが彼にとって一番得意なプレーであるし、一番良さを活かせるからだろう。松村の良さはそのスピードとテクニックを活かしたドリブル。それを発揮するために、一番それが出しやすい位置取りをしているというわけである。

ただ、問題としてはそれで必ず結果が残せるのか?ということである。松村のプレーは必ずしもチームに求められていることを考えれば優先順位の低いものだ。それでもそうしたプレーをチームで受け入れていくなら、それをメリットとするくらいに結果を残せなければならない。ただ、松村のドリブルからチャンスが生まれたり、それがゴールに結びつく可能性は決して高いとは言えないのが現状だ。ここが松村の評価が上がらない一因ではある。

それでも、松村の良さを活かしていくべきなのでは!?という意見もある。それはそうかもしれないが、松村の良さを活かすということは、チームのスタイルに揺らぎを生むことになるし、その揺らぎは多すぎるとチームとしての戦い方に統一性を生み出せなくなってしまう。

現状、鹿島の攻撃陣の中で揺らぎを生み出しているのは優磨とチャヴリッチである。彼らはチームのスタイルの中で比較的自分のやりたいことや得意なプレーをやることが許されている。彼らと松村の違いは、結果を残しているかどうか。優磨は言うまでもなくチームのエースとして決定的な仕事を多くしているし、チャヴリッチも多くはないプレータイムの中でゴールを奪っている。彼らぐらい、彼ら以上の結果を残せないとなると自由が認められている枠に松村は入れず、いつまでも自分のやりたいプレーだけで評価されることはないだろう。

そうでないなら、チームが求めているプレーに自分を適合させていくしかない。それができているからこそ、師岡はシーズン序盤の立ち位置から一気に主力級にまで序列を上げ、藤井は一時期のベンチ外から再びプレータイムを伸ばしてきている。藤井に関しては、自分の得意な大外からのスピードを活かした仕掛けをプレーのメインにしているという点では松村と似ている部分があるが、藤井が良くなったのはボールの引き出し方。低い位置に降りてでもパスを引き出し、チームの繋ぎに参加することができるようになったり、自分の仕掛けを繰り出す回数が増えたことで、良さを出しやすくなりそれが監督からの評価にも繋がっている。

鹿島で若手をどう育てるのか

ただ、今回の松村のような事象は今に始まったことではない。自分の得意なプレーを発揮しやすい環境では良さが出やすいが、チームのスタイルの中でそれに適合しながら良さを出していくことを求められると、途端に適合に苦労して結果としてプレータイムが伸びず、バックアップに留まって、出場機会を求めて移籍してしまう。そうした選手はこのところの鹿島では残念ながら増えてしまっている。

こうしたプレイヤーが増えているということは、鹿島において若手を育てるということが上手くいっていないことに繋がってしまっている。事実、鹿島の高卒選手で今も主力に定着しているのは関川が最後。関川のように試合に出続ける中で自分の実力を磨き、プレイヤーとして成長し続けてくれればいいが、試合に出るための要素が足りずに、そもそも実力を磨く場が得られていないという現象が起こってしまっているのだ。

そもそも、試合でしか実力を磨けていないというのが問題であるという部分もある。日頃の練習で試合に出るためのアピールだったり、そこに必要な実力を十分に身につけられていないということでもあるためだ。これはここ数年監督が変わっていても同じ現象が起こっていることを考えると、クラブとして問題があると言えるだろう。もちろん、監督がコロコロ変わっていて、その度にスタイルも変わっているので、それに適応する苦労が余計にかかっているというのも問題ではあるのだが。

おそらく、ポポヴィッチ体制でもしばらくこの現象は続くことになるかもしれない。ポポヴィッチに求められていることは、若手を育てていくことよりも、目の前の勝点3を掴み取って、クラブにタイトルをもたらすことの方が優先順位としては高いし、そうしたマネジメントを採っている。

これを考えると、この問題はクラブとしてどう解決するのかを考えていかなければならないだろう。いくら出場機会をコンスタントに与えられているところの違いがあるとはいえ、鹿島より他クラブに行った方が成長できているとなれば、鹿島で若手を育てる意味は?、というふうになりかねない。ユースなどの育成組織から優秀な選手たちが次々に出てきていることを考えると、是非ともクラブとしての解決策を見出したい。

遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください