見出し画像

永木亮太が起用されない理由を考えてみた

鹿島アントラーズに加入して6シーズン目を迎える永木亮太。だが、今季は彼にとって最も厳しいシーズンとなっている。今季はここまでリーグ戦14試合の出場に留まり、うち先発出場はわずか5試合。最後に公式戦に出場したのは8月のアウェイ神戸戦と2ヶ月前にまで遡らなければならない。だが、先週限定的に公開された練習試合を観る限り、そこまで永木本人のパフォーマンスが落ちているとも思わなかったし、サポーターの中には待望論も少なくない。そんな中でもなぜ永木が起用されないのか。その辺りを考えてみた。

①ピトゥカありきのボランチ構成

今の鹿島のボランチで完全に軸になっているのがディエゴ・ピトゥカだ。今季加入で合流が遅れたものの、コンディションが上がってきた後はあっという間にチームの中心とも言える存在になった。長短のパスで試合を組み立てながら、ゴールに直結する決定的なプレーもできるし、プレーエリアも広く守備も献身的だ。今の鹿島は攻守においてこのピトゥカのリズムに従ってチームが動いているし、それをチームとして許容する流れになっている。

ピトゥカを中心とするなら、そのピトゥカとボランチでコンビを組むのは誰になるのかというのが問題になってくる。最初にピトゥカとコンビを組んだのはレオ・シルバだった。圧倒的な運動量とボール奪取力を誇るレオをピトゥカと組ませれば個の力で攻守に圧倒出来る目論見だったのだろう。

だが、このコンビは結果として上手くいかなかった。原因はバランスとスペース管理の部分。共にプレーエリアを限定せず、積極的にピッチのあちこちに顔を出すことで持ち味を発揮できる両者が組むと、中盤の中央のスペースに誰もおらず、そこを相手に突かれるシーンが頻発したのである。また、優勝争いの局面でもないのに、ボランチを2人とも中堅以上のブラジル人に組ませるのは、将来性の面を考えるとあまりプラスとは言えない側面も考慮したのだろう。(鹿島はポジションの一つは日本人に託すという不文律がある)そこからチームはバランスを保つ意味合いも込めて、ピトゥカのパートナーを三竿健斗に指名、固定していく流れになっていく。

当の永木もレオと同じくプレーエリアを中央に限定させない方が持ち味を発揮できるタイプのボランチだ。そうなると、軸であるピトゥカと組ませるのは相性面で良いとは言えない。優先度はどうしても下がってしまうのが現状であり、同じタイプであるレオとの争いではより個人で局面を解決できるレオの方が序列が高くなっている。

②プレースキッカーとしての需要

それでも、永木にはボランチのいちプレイヤーとしての良さ以外でもアピールできる部分があるはずだ。そうした部分で序列を上げられないかを考えていく。

その一つがプレースキックだ。鹿島加入後、永木は多くのセットプレーの局面でキッカーを任されており、そこから生まれたゴールは少なくない。昨季のホーム横浜FC戦では終盤に永木がキッカーを務めたセットプレーから2得点が生まれ、それがチームの逆転勝ちに繋がったことをザーゴ前監督も高く評価していた。

あとは永木(亮太)だと思います。ほぼ2得点に絡んでいる永木の仕事は、期待しているプレースキックの精度というところで彼が絡みましたし、選手たちがあきらめずにやってくれた。
https://www.jleague.jp/match/j1/2020/101011/live/#coach

もちろん、今も永木のそうした部分についての評価は大きく変わっていないはずだ。しかし、今季は右足なら荒木遼太郎、左足ならピトゥカがキッカーとして台頭してきており、彼らのキックから少なくないゴールが生み出されている。前半戦にキッカーとして活躍した永戸勝也もピトゥカの台頭によってプレースキッカーとしての優先度が下がってしまったように、永木も同じくキッカーとしての需要がそこまで高まっていないのが現状だ。

③ポリバレントさの需要

永木のもう一つの良さとして挙げられるのがポリバレントさだ。本職のボランチ以外にも、両サイドバックや2列目など様々なポジションをこなし期待に応えてきた。そんな永木がベンチにいれば戦い方の幅も広がるのではないか?、そういう思いはあってもおかしくないはずだ。

ただ、チームは現状どのポジションでも人材難になっている訳ではない。サイドバックでは、安西幸輝こそ固定されているが常本佳吾と広瀬陸斗が激しくポジションを争い、左サイドバックのレギュラーだった永戸はベンチ入りすら怪しい状況だ。ベンチ入りメンバーに関して、相馬直樹監督はザーゴよりバランスを重視しているように見える。そんな中で本職のサイドバックの実力者がいるのに、彼らを差し置いてまで永木をサイドバック枠としてベンチ入りさせるほどの決定打には欠けると判断されているのが現状だろう。

では、2列目はどうだろうか。勝っている試合で永木を2列目に入れて試合を締めてもらう。そうした使い方も出来るはずではあるが、今の鹿島は試合終盤になってもリードを守り切って試合を終わらせようとするよりは、明らかに追加点を奪って試合を決めてしまおうとする意識の方が強い。リードした終盤のカウンターの局面で、中盤の選手が自分の管理するエリアを捨ててでも次々に飛び出していくのはそれを象徴している。そうした戦い方をチームが選択している中では、中々守備を固めるような選手起用は選択肢に登ってこないと考えるのが普通である。

まとめ

個人的には永木をベンチ外に置いておくのはもったいない選手だと思うし、今の永木も他クラブなら十二分にレギュラーでやれる選手であると思う。だが、こうして使われない理由を一つ一つ考えていくと、その理由自体が極端におかしいものではないこともよくわかってくる。

なんとか、個々の最大値がチームとして発揮できるような形に持っていくのがベストであるし、それを鹿島には追い求めてもらいたい。

リンク


遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください