鈴木優磨よ、埼スタで勝たせろ
最高の後押しを受ける老練なホームチーム
埼玉スタジアムでの浦和レッズ戦はJリーグの中でも最も難しいアウェイゲーム、と言っていいだろう。理由として大きいのは、スタジアムを真っ赤に染め上げるあの大サポーターの存在だ。声量で、ビジュアルで、圧倒し、レッズにとっては大きな味方に、相手チームにとっては強大なプレッシャーとなる。埼玉スタジアムで勝点3を持って帰るには、単に相手よりサッカーの質で上回るのとは別の苦労が必要だと、個人的には思っているくらいだ。
その上で、今のレッズは手堅い。ベテランの域になってなお成長を続ける守護神西川周作がゴールマウスを守り、センターバックコンビはアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンの北欧助っ人コンビが今季から君臨。共に対人に滅法強く、また組み立てでも高い貢献度を示しており、Jリーグでもトップレベルの質の高さを誇っている。そこに加え、サイドバックにも酒井宏樹や明本考浩といった攻守に強度の高さを発揮できるプレーヤーを擁しており、こうした個々の強さをベースにここまでリーグ2位の失点数の少なさを誇っている守備陣に加え、さらに攻撃陣には一瞬のスキを仕留めてくるベテラン興梠慎三らが待ち構えている。ロースコアの勝負になっても焦れずに、勝機を活かしてくる。そんな浦和は今のJリーグの中でも相当に厄介なチームであろう。
苦手意識を払しょくしたい大一番
その浦和に鹿島は勝たなければならない。リーグ戦7試合負けなしが続いているものの、ここ2試合はドローに終わっており、上位を追いかけ、これ以上離されないためにも、この試合は是が非でも勝点3の欲しいゲームである。そんな中、消化試合の差はあれど、勝点3差で上にいる浦和は叩いておきたい。元々、盛り上がるカードではあるが、鹿島にとってはこの試合がリーグ前半戦の中での大一番、と言える試合のはずだ。
だが、近年鹿島はアウェイ浦和戦を苦手にしている。ルヴァンカップでこそ勝っているものの、リーグ戦で最後に勝ったのは6年も前の話。昨季も幸先よく先制はできたが、PKから同点に追いつかれると、結局そのままドロー決着。勝点3を得るには至らなかった。そんなカードで今節の鹿島は勝利を目指すミッションに挑むことになる。
かつてのエースのように
そんな中で注目したいのが、エースの鈴木優磨である。今季はここまで8ゴール4アシストと結果を残しており、自身がシーズン前に目標にしていた「ゴールとアシスト合わせて25」という数字が十分達成できるペースである。また、昨季から変わらずチームをけん引しており、今季鈴木優磨のゴールやアシストで勝ってきた試合は数知れず。また、それ以外でもチームの精神的支柱になっている部分も大きく、完全に鹿島の顔の1人となっている。
過去、アウェイ浦和戦ではエースのプレーが鹿島に勝利をもたらしてきた。代表的なのは、かつて背番号33を背負って長髪をなびかせながらピッチを走り回り、現エースである鈴木優磨が目標にしてきたあの男だ。2016年はまず先制点を奪い、チームに7年ぶりのアウェイ浦和戦勝利をもたらすと、その年のチャンピオンシップでは2ゴールの大活躍で優勝に大きく貢献。さらに、翌年のアウェイゲームでも決勝ゴールを奪っており、2015年のナビスコカップ決勝でのゴールも含めれば、彼が埼スタでゴールを決めた試合は全て鹿島が勝っている、という勝負強さぶりを見せつけている。
もちろん、鈴木優磨が今まで埼スタでの勝利や勝点奪取に貢献していなかったわけではないし、他の面々の働きぶりだって重要だ。だが、こういう大一番であればあるほど、チームの顔となるエースのプレーぶりは勝敗に直結してくる。今の鈴木優磨の立場はそうした立場になっており、それは欧州に移籍する前とは確実に違う立場にいる。その状況の中で、鈴木優磨が活躍できれば、それが鹿島が勝利に近づくキーの一つになるのは間違いないだろう。だからこそ、この試合は鈴木優磨に期待したいのだ。鹿島のエースの神髄を見せてほしい。
さあ、6年ぶりの勝鬨を
埼スタで浦和に勝つ、これは確かに難しいミッションだ。だが、それ故に達成した時の喜びは勝点3というポイント以上に大きなものがある。真っ赤なスタジアムが静まり返り、その一角で違う赤色が喜びを爆発させる。相手の強大さを認めるがこそ、アウェイチームにとってはその瞬間を味わうことが最高のカタルシスになっているのだ。発展途上にある今の鹿島にとって、その経験は間違いなく大きな財産となるだろう。
苦汁を舐めるのはもう十分だ。金髪の背番号40に引っ張られたチームが新たな栄光を掴むため、まずはこの埼スタ超えの難関に挑む。