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学校での民間アプリ利用について

学校教育における個人データの取り扱いについていくつか書いていますが、本件に書いてある論点にもいくつか触れているので簡単に紹介します。 武田(2022)では、学校で使われる情報サービスの分類を試みています。GDPRのコントローラー、プロセッサーの概念と、サービスの所在(学校か事業者か)、データ利用者、規約の所在、サービスのカスタマイズ性による分類です。 本件のような民間の情報サービス利用は「利用型」に分類されます(専有型もほぼ同じです)。学校はデータの使われ方になにも口を出

    • 生成型教科書

      この投稿は執筆時間を1時間に制限して書いているため、一貫性のあるストーリーというよりは、考えの集積になっています。将来的には、このトピックについてもっと多くのことを言うことができると思いますが、このアイデアを世に出して、初期の含意をいくつか伝えたいと思っています。 ChatGPTが人気を博して以来、人々が創造的に生成AIを活用する方法を見て常に驚かされています。この数ヶ月間、毎週新しい生成AIの使い方について読んでいることは本当に驚きです。たとえば、サイバーセキュリティを学

      • 生成的教科書 - 簡単な例

        昨日の私の投稿の「生成型教科書」にご関心をいただいたようですが、コメントを見るかぎり、私がアイデアを十分に説明できたか自信がありません。 「生成型教科書」というアイデアは、教育的なコンテンツの代わりになるものではなく、ChatGPTのような大規模言語モデルから情報を引き出すために学習者が使用できる一連のプロンプトを提供することです。以下は、その意味を明確にするための簡単な例です。 伝統的な教科書の一部の例として、OpenStaxの「心理学入門」のページから「睡眠」に関する

        • 著作権法の「柔軟な権利制限規定」が想定しているAI

          2022年後半に、MidjourneyやChatGPTなどの生成系AIが話題になりました。生成系AIが生成したものが、機械学習モデルを構築するために入力した著作物の著作権侵害に当たるかどうかが問題になることがあります。日本の著作権法上の取り扱いはどうなっているでしょうか。 文化庁の著作権法の一部を改正する法律 概要説明資料(平成30年)のAIによる深層学習のイメージは図のようなものです。ここでは著作物から作成された深層学習モデルは画像の判別に用いられています。機械的に処理を

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          2本

        記事

          AI、インストラクショナル・デザイン、オープン教育資源(OER)

          2022年には、人工知能にいくつかの重要な進歩が見られました。ここでの「重要な」は、研究室とarxiv.orgのプレプリント上の研究が、多くの人が使用するようなツールとして公開されたことです。多くの人が、Dall-E、Stable Diffusion、Midjourneyなどのテキストから画像へのツールがとてもおもしろいということを話題にしました。しかし、大規模な言語モデル(Large Language Model: LLM)、特にChatGPTは、中学校の英語教師やGoog

          AI、インストラクショナル・デザイン、オープン教育資源(OER)

          ChatGPTの仕組み

          ここではChatGPT (https://chat.openai.com/) の技術について、公表されている情報を元に解説します。「ChatGPTになにができるか」「どんなインパクトがあるか」は使ってみればわかりますが、教育など影響の大きい分野でのChatGPT(人工知能)の利用をを考えるためには、技術や仕組み、その限界を知っておいて損はないかと思います。 ChatGPT概要ChatGPT は、OpenAIによって開発された自然言語を生成する言語モデルです。ChatGPTは

          ChatGPTの仕組み

          堀部政男情報法研究会シンポジウム:個人情報保護法の改正と大学関係者にとっての課題

          日時: 2022年4月23日(土) 13:00〜17:00 URL: https://www.kokuchpro.com/event/e6d482a2be28dd2f339ae304395e8729/ 【開催趣旨】 令和3年個人情報保護法改正は、学術研究例外規定が精緻化され、すべての大学の責務が増えているのだがあまり関心がもたれていない。このシンポジウムはそのあたりがテーマである。 堀部先生は過去の経緯から中央大学における個人情報保護の規定についてのお話であった。堀部先

          堀部政男情報法研究会シンポジウム:個人情報保護法の改正と大学関係者にとっての課題

          教育研究の知見の統計的統合とエビデンス

          「教育研究の知見の統計的統合は何をもたらすのか」(山森他, 2021)が公開されています。エビデンスに基づく教育実践や教育政策(Evidence based Education)が話題になる中、教育研究の立場からの論点整理です。内容をざっくりまとめてみます。 教育研究の知見の統計的統合は、メタ分析(メタ分析のメタ分析=スーパーシンセシスを含む)のことです。教育研究においてメタ分析が注目された背景には「エビデンスに基づく教育」の推進およびその是非の議論があります。また、Hat

          教育研究の知見の統計的統合とエビデンス

          学術研究における個人情報保護法適用除外規定の見直しについて

          令和3年(2021年)のDX法による個人情報保護法の改正で、学術研究機関も個人情報保護に関して責務を負うことになりました。大学の研究に影響力の大きい改正ですが、施行が「2022年5月18日より前」となっていて、大学は早めに対応が必要かと思います。以下の説明はかなり簡略化していて、個人情報保護法の知識が前提ですので、必要があれば他の資料等で補ってください。おそらく近日中に個人情報保護委員会から学術研究に関するガイドライン案とパブリックコメント募集が出ると思うので、そちらも注目

          学術研究における個人情報保護法適用除外規定の見直しについて

          LMSログの保存と匿名加工について

          FIT2020のイベント企画「一人一台端末による学びを支えるデジタル学習環境」の講演で、「LMSログを保存する場合には氏名等を落として匿名加工しなければならないか?」という質問がありました。 そのときは、LMS運用や授業そのものの改善のためにLMSログを利用する場合は生データで問題なし、安全管理のために仮名化は有用、研究利用には本人同意とIRBの承認が必要という話をしました。 この件についてもう少し整理して書いておきます。 まず、LMSのデータ利用の目的は以下が考えられ

          LMSログの保存と匿名加工について

          大学授業の一部を遠隔授業でおこなうこと

          COVID-19に対応した授業を計画する大学に向けて、文部科学省が「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」を発行しました。遠隔授業の部分は、「メディア授業」についての大学設置基準や過去の告示の確認と、面接授業(いわゆる一般の教室での授業)の一部を遠隔授業(多様なメディアを高度に利用して行う授業)で実施可能という内容です。後者が今回の通知の重要点と思いますが、そこが強調されているわけではなく、また過去の経緯や制度にくわしくないとわかりづらいと思うので、以下で要

          大学授業の一部を遠隔授業でおこなうこと

          AXIES研究会「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」

          AXIESの研究会「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」に参加しました。改正著作権法が昨年施行されましたが、35条で新設された公衆送信補償金制度については公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の発足以降もなかなか話が進んでいないようで、やっと著作物の教育利用に関する関係者フォーラムによる論点整理が公表されたところです。今回の研究会ではフォーラム共同座長の竹内比呂也先生(千葉大学副学長)の講演を中心として新35条の意義や今後のあり方について議論されました。当

          AXIES研究会「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」

          【聴講】高度情報技術を活用した全ての子供の学びの質の向上に向けて~

          「国立教育政策研究所「教育革新」プロジェクト フェイズ1 シンポジウム ~高度情報技術を活用した全ての子供の学びの質の向上に向けて~」(2020/2/3)を午後から聴講しました。 「教室に高度情報技術をもちこむ前に~協調学習の原理と高度情報技術の効果」では、Jeremy Roschelleさんはリモート参加で、白水始さんと齊藤萌木がコメントするスタイルです。Roschelleさんの研究(テクノロジーをつかった協調的な学び、収束説)を白水&三宅の建設的相互作用説によって再解釈

          【聴講】高度情報技術を活用した全ての子供の学びの質の向上に向けて~

          リクナビ事案について

          リクナビを運営するリクルートキャリアが、就活学生のデータ等から内定辞退率を予測して、38社に有償で提供していました(サービス名はDMPフォロー)。このデータ提供について、以下のようなさまざまな問題点が指摘されています。 1. 同意取得方法に問題があった。  - 包括的な目的の提示ではなく具体的な利用目的が必要であった。  - プライバシーポリシーが個人で理解できるようなものではなかった。  - 同意せざるを得ない状況で同意を強要されていたとも考えられる(優越的地位の乱用)。

          リクナビ事案について