トリックスターかもしれない
後出しですが、トランプ氏が勝つんじゃないかなと感じていました。
民主党から共和党へ戻るのは何度も見てきたし、共和党のなかで誰もトランプ氏を止められなかったこと。また民主党の中がヒラリー氏とサンダース氏に割れたこと。
なによりもトランプ氏のアジテーション能力は、トリックスター的に見えたからです。
何かを成す人は、人の心を掴み動かす能力に長けています。
文章にすると穴があったとしても、語り口調や勢いで納得させられてしまうことも案外多いものです。
人種差別的な発言は、移民の国アメリカでなくとも慎まなくてはならないはずですが、彼はそれを本音というカタチで出してみせた。
つまり型を破ったわけです。
既存の政治に飽き飽きしていた人たちは、彼ならこの閉塞した状況を打開してくれるかもしれないと、彼に賭けてみようと思うのもムリないかなと思うわけです。
ボクたちは安定を望みながら、心の何処かで変化を期待しているのです。
明日は今日より少しだけ豊かになればいいなと考えるのは、安定でなはく変化を望んでいるからなのです。
しかし、今日も明日も一年後も十年後も同じ収入と支出が続くとなったらどうでしょう?ひょっとしたら収入は同じでも支出は増えるかもしれない。
そんな変化は誰だってイヤです。
おそらくヒラリー氏は、そういう「いい変化」をしますというイメージを強くアピールできなかったのではないでしょうか?
とはいえ、ボクは個人的にはヒラリー氏に大統領になってもらいたかったのです。
だってやっぱりアメリカは、なによりもフェアネスを重んじるんだと示してほしかった。
と同時に、女性が大統領になることが「いい変化」に感じられないほどアメリカは苦しいのだなとも感じました。
人種差別や人種隔離政策を採った国は、近代から現代に於いては滅ぶのが必定なので、やっぱりそういうことはやってはいけないし、少なくとも政治家がそう導くのは一時しのぎにしかならないのは分かりきっているのです。
しかし歴史は同じ顔をしてやってこないから、また繰り返すのでしょう。
ヒトラーも本気でユダヤ人を迫害するはずがない。我々は充分ナチス党に貢献していると、当時ユダヤ人たちは考えていたのです。しかし彼は稀代のトリックスターとなったのです。
世界経済が混沌としている現代も、案外第一次世界大戦や第二次世界大戦の前夜に似ているのではないかと、ここ数年ずっと考えているのですが、ひょっとしたらボクたちは新たなトリックスターの誕生を見ているのかもしれません。
トランプ氏の勝利を祝うとともに、そんな世界が来ないよう祈ります。
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