マスケラを狩る者<序章>


親愛なる大統領閣下:Dear President Harry S. Truman

日本に対して原子爆弾の投入を検討されていることを知りました。
多数の連合国の兵隊たちを、残酷なる死から御救いになるためのご決断をされようとのこと。まことに慧眼であります。

しかしながら、今一度お考えください。

先の大戦でドイツが使用した化学兵器の数々は、歴史的に評価されたでしょうか?新しい兵器を投入すれば、それに伴う様々なリスクが生じます。

原子爆弾を投入すれば、日本との戦いが終わったとしても歴史的に人類に初めて大量殺戮兵器を使用した責任や、人種差別的であるとの誹りを免れません。

ソ連はまだ原子爆弾の実用化には至っていないことは、先の報告書でも明らかになっております。まだ猶予はありますし、むしろドイツの技術を利用してロケット開発の方に重点を置かれた方が、後々アメリカの有利に展開します。



中華民国の国民党と共産党の争いも共産党が勝利するようソ連が工作しておりますし、これ以上国民党への支援もすることもありません。

そのうえ朝鮮を差し出せばソ連は満足します。

ベルリン譲ったのだと私が進言すれば、さすがの強欲のスターリンですら納得してくれます。

ソ連も日本全土を争って連合国同士が血を流すことは望んではおりません。



北をソ連に抑えさせ、南からはアメリカ合衆国が攻め込めばよいのです。彼らはどこにも逃げられません。思う存分日本人に真珠湾の復讐を遂げることが出来るのです。

それはアメリカ人として正当な権利です。放棄することはありません。



原子爆弾の使用を思いとどまることが、人道的なアメリカ合衆国を演出することになり、終戦後のイニシアチブを握ることに寄与しますことをご理解ください。


私が保証します。


あなたの腹心の友 Mより

Jury 16, 1945
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この書簡にトルーマンはうなずき、【Operation Downfall】と表された書類にサインをした。




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