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契約書は、ググってコピペで作れる? 【ひとり起業/副業のための契約書の作り方】

あなたが契約書をつくるとき、ネットでみつけたテンプレート(ひな型)で契約書をつくれるかどうかは、重要な問題です。はたして契約書をググってコピペして作成することはOKなのでしょうか?

まず法的にはどうかというと、なにかをコピー(複製)するので、著作権が気になるところです。ただ、契約書のテンプレートは著作物の定義「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号)」にあてはまりにくいため、原則として著作権法違反にはならないと考えられます。

そこで、もうひとつのポイントとして、コピペでつくった契約書はクオリティとしてどうなのか? について考えます。


ググってコピペで契約書はつくれる

結論から言えばコピペでも契約書は作れます。というより、プロでも契約書をまったくのゼロから、最初から最後までその都度考えてつくるわけがなくて、どんな契約書も多かれ少なかれ、別の契約書を参考にして作られています。

結局はコピーかどうかよりも、契約全体の意図や、「なぜ」その条文にしたのかという「理由」が重要です。だからコピペそのものは、ほぼ問題ないのです。


大問題が3つある

とはいえコピーにはやっぱり「弊害」もあります。よくやってしまうのは誤字脱字などの「ミス」もコピーされてしまうこと。それに、自分に「不利」な内容や自分がまだ「理解していない内容」も、コピーしてしまいかねないこと。あとは、テンプレート的なものだとやはり内容が「抽象的」になってしまうことです。

テンプレートのコピーのデメリット
ミスもコピーしてしまう(誤字が受け継がれる)
・自分に不利な内容、理解していない内容もコピーしてしまう(いつのまにか不利な契約書になる)
・内容が抽象的になってしまう(肝心なことが書いてない)

逆に言えばこれらのデメリットを克服すれば、コピーでも問題なく契約書はつくれることになります。

では、これらを克服するにはどうしたらいいのでしょうか?

ひとつは(1)テンプレートをしっかり選ぶこと。もうひとつはやはり、しっかりと読んで理解した上で(2)編集、修正することです。


ベストなひな型を使わないと無理

前提として、良いひな型を使うことがとても重要です。「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、ここの重要性は強調しすぎるということがありません。テンプレートは慎重に選ぶべきであり、ここで絶対に妥協しないでください。

テンプレートはどれでもいいわけではありません。選ぶ際の基準は、条文の正しさだけではなく、自分のシチュエーションとのマッチ度合です。

僕も契約書のひな型(テンプレート/文例)を公開していますが、売主のために作成しているのと、想定シチュエーションをかなりこまかく設定しています。これによって、ご自身の目的に合っているかどうかを判断しやすくなっていると思いますし、条件が合う人にとってはかなりフィットしやすい内容になります。なおかつ、机上の空論ではなく、現実のビジネスで培われた実例から作成しています。


アレンジのポイントと重要性

そして、どんなにぴったりの書式を選んだとしても、アレンジは必要であり重要です。アレンジのコツについては、テクニックが密集している部分なので、細かく話していきたいところですが、ひとまず超重要なポイントを3つ挙げましょう。

(1)名称、仕様、固有名詞
まず当然ながら当事者の正式名称は、自ら書き込まなければならないですし、契約書のなかに商品名、サービス名、業務の内容、製品の仕様などが出てくる場合は、それらはテンプレートには書かれていないわけですから、やはり自ら加筆していく必要があります。

(2)金額、年数、期間
それだけではなく、金額や価格などの記載もオリジナルなものになるので必須です。たとえばひな型では「〇か月以内に通知する」「〇年以内は引き続き有効とする」のように、任意の期間が空欄(ブランク)になっています。こうした部分は自社の実情、交渉の具体的な内容、そのビジネスや業界の商慣習などによって変化しますから、自ら決定して記入しなければなりません。

(3)足し算と引き算
またあるいは、テンプレートにはサンプルとして書いてあったけれども、実際の取引には不要な項目であれば、条文ごと削除することもあります。そして条文を削除すると、条文番号がひとつずれますから(たとえば第2条の次に第4条が来る状態になるので)、以降の条文番号をすべて修正する必要もあります。

たとえばテンプレートに、「製品の使い方について研修をします・」とか、「必要な備品を貸与します。」などと書いてあったとします。実際にその予定がある場合はいいのですが、そんな話はしてないとか、そんなことはやるつもりがない場合にこうした条文だけ残してしまうと、実際には契約上の義務を果たしていないこと(=契約違反)になってしまいます。

テンプレートはあくまでも一般論として抽象的に業務内容が書かれていることが多いです。実際の業務内容がもっと複雑で具体的だった場合に、抽象的な内容にとどまっていると、せっかく契約書を締結しているのに肝心なことが書いておらず、わからない、つかえないということもあります。

結局、実態と合っているかどうか、十分に具体的かどうかは、自らアレンジして契約書を完成させるしかありません。


普通の人がちゃんとした契約書をつかえるようにしたい

よく選んだテンプレートを、アレンジして使え。などと、結論はとてもありきたりになってしまいました。ただ、契約書作成(自作)のハードルは、近年どんどん下がっていると思います。少し勉強するだけで、あなたにも契約書がつくれるようになる可能性は十分にあります。

契約書チェックを支援するサービスも出始めています(AI-CONなど)し、その性能も素晴らしいです。それに経済産業省の契約書ひな型などをはじめ、インターネット上の情報はいうまでもなく飛躍的に増えています。先に挙げたようなデメリットもありますが、自分で作成する人のための環境はほとんど整いつつあるといえます。

僕もnoteでひな型を公開しているのは、もっと「普通の人がちゃんとした契約書を使えるように」なればいいと思っているからです。

たとえば一人で起業した方や、自宅で副業している方、スタートしたばかりのフリーランスの方でも、もっと適切な契約書を活用してビジネスすれば、多くの不要なトラブルを減らすことにつながりますし、堂々と本来の業務に集中できるはずだと思うからです。

どうしても弱い立場になりがちなフリーランスや小規模事業者が、理不尽な取引関係を不当に強いられないためにも、契約書がもっと活用されることを願います。

これからも有益な契約書のアレンジ方法をお伝えしたいと思います。


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契約書のひな型をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


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竹永 大 / 契約書のひな型と解説
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