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日本のデジタルトランスフォーメーション 【「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言】

2020年7月8日、内閣府、規制改革推進会議及び四経済団体から「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言」が公表されました。

文書へのリンク
「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言~デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~

要点を簡単にいうと、

いわゆる「感染拡大の防止及び予防」のための「新しい生活様式への移行」が求められているなかで、いまどき「書面、押印、対面」が原則というのも問題だ。よって「行政手続」と「ビジネス様式」において、はやく手続きと取引のやりかたを見直そうではありませんか。

みたいな文書です。

どうやってやるのかということが書いてありますが、ようはデジタルトランスフォーメーションに取り組んで、デジタル化を徹底しようということです。

特に僕が注目したポイントは、以下の2点です。


行政手続きの原則デジタル化!

行政手続きについては「制度的対応」として「書面主義、押印原則、対面主義を求める全ての行政手続の原則デジタル化に向けて、恒久的な制度的対応として、各府省に対し、年内に見直しの検討を行い法令・告示・通達等の改正を行うよう求める。」としています。

つまり、はっきりと「書面主義、押印原則、対面主義」をあらためて、デジタル化するという意味のことが書いてあります。

ということはハンコも押さなくてよくなり、わざわざ対面でやらずに電子的に手続きをすすめてもよい、というかそれを徹底しようという意味です。

行政手続きはたくさんありますが、たとえば許認可申請では、「紙」の書類を大量につくり、そこに申請者のハンコをおして、役所の窓口に持っていって提出するのが常識です。例外的対応はたくさんありますが、今後はその例外の方が主流になるということでしょう。

昔は常識だった「紙」の書類ですが、いったんペーパーレスに慣れると、プリントアウトするだけでも信じられないくらい非効率に思えてくるから不思議です。また、窓口に直接持参する手続きなどは、当然ながら窓口の営業時間にあわせなければなりませんし、混雑していれば並ばなければなりません。これが解消されると便利ですよね。個人的にも大歓迎の改革になりそうです。


電子署名の活用促進!

もう一つのポイントとして、民間取引について「電子署名等の電子認証の活用の促進」とあり、「押印が必要な場合においても、書面の電子化のためには電子署名等の電子認証の活用が有意義である。政府がクラウド技術を活用した電子認証サービスの電子署名法における位置づけを明確化したうえで、電子署名等の電子認証の周知、活用が図られるよう取組む。」とされています。

この「電子署名等の電子認証の活用が有意義である。」という極めて具体的できっぱりとした表現が驚きです。なんという踏み込んだ表現でしょうか。ハンコの代わりに電子署名でいきましょうよ、といいきっているわけですから。僕のnoteでも何度かおすすめしている、クラウドサインなどのサービスを、より積極的に活用することが求められそうです。


ハンコの良さと電子化

まとめに代えていっておけば、ハンコはとても便利なものです。デザイン性などの魅力もあります。真っ白い契約書に、美しい朱肉の色で押印されたところをみれば、神聖なおもむきさえ感じさせられます。そしてこの「押印の儀」をあえて乗り越えることが、ある種の通過儀礼としてはたらき、当事者間に契約を強く意識させるとともに証書としての重みが増すわけです。

ここには単なるノスタルジーではなく、デジタルデバイスに明るくない人でも万人が平等に行える作業という点で価値があります。古い史料をみても、押印、花押、落款がわが国を含めた伝統的な文化であることはまぎれもない事実です。

ただそれでも、おそらくそれらとは異なる文脈で、ビジネスの手続きとしての押印は、デジタル化によって効率化させる必要性が非常に高いと思われます。歴史、文化、芸術的側面はリスペクトしていくとしても、経済効率や合理性を考えると、ハンコは「おじいさんのランプ(新美南吉作/1942年)」になりつつあるのです。

「ハンコを押さなければならないから出社」などといった話題が、象徴的に取り上げられましたが、これまでハンコのはたしてきた価値も認めつつ、やはり日本でもデジタルトランスフォーメーションをすすめなければなりません。


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