行政書士「食える・食えない」論争

「行政書士は食えるのか、食えないのか」という論争(?)が昔からあります。僕が開業した頃(平成15年)もすでによく聞かれましたから、かなり前からある話題のはずです。いまもSNSなどで定期的に見かけますね。いったいどちらなのか、僕も考えてみることにしました。

この話、だいたい2つのことがいわれています。ひとつは「資格をとっただけでは食えないでしょ」というのと、もうひとつは「ちゃんとやれば食える。食えないのは営業が足りないからだ」といった意味の主張です。

「食える/食えない」論争でよく見かけるパターン
①資格を取っただけでは食えない。
②ちゃんとやれば食える。食えないのは営業が足りないから。


資格を取っただけでは食えない説

まず本当によく見かけるのが「資格をとっただけで食えるわけじゃない」という教訓。いわれなくてもそんなのあたりまえなのですが、特に行政書士は業務の幅がとても広く、試験と業務との関連が薄いのです。そのため試験ができても、実際の業務のための法律知識ははじめから勉強することになります。

また、行政書士にはいわゆる「資格ホルダー」が多くいらっしゃいます。ペーパードライバーみたいなもので、資格はあるけど登録はしてない、あるいは登録はしているけど行政書士業務はしていない、という方です。

登録しても業務をしていないのは、すでに他士業で開業していらっしゃるケースです。たとえば税理士さんや司法書士さんなどが、同時に行政書士登録もしているが、メインでは活用されていないといった場合です。こうしたダブルライセンスの方の数も含めると、売上に対する分母が大きくなる結果、統計上は「行政書士は稼げないのかな」という見え方になってしまいます。


ちゃんとやれば食える説

一方、「ちゃんとやれば食える説」も根強いです。まず食えるか食えないかについては「食える」と肯定したうえで、営業、マーケティング、あるいは集客ができていれば食えるのだ、という説ですね。行政書士専業でやっておられるベテラン先生たちは、だいたいこういう論調ではないでしょうか。

ちなみに「食える」の定義はさまざまですが、一人事務所専業で月商80~100万円くらいとしている方が多い気がします。月商が100万円でもさまざまな経費と再投資がいるので、手元に残るのは半分とすこしくらいです。

この説は結局のところ、営業の重要性を説くものです。昔からマーケティング至上主義的というか、「先に宣伝して、依頼を受けたらその手続きについて調べる。そういう順番でやるべきだ」という意見の方はいらっしゃいました。この説は、ビジネスの考え方としては正しいと思いますが、一つだけ問題があります。それは、たいていの手続きは、依頼がきてからあわてて調べたくらいでは「できる」ようにはならないことです。

もちろん「先に宣伝」理論にも一面の事実はあります。「完全な準備」なんて永遠にできないわけですから、「多少の」見切り発車は常に必要です。でもある程度の準備はしないとケガをしてしまいます。

それに、「ちゃんと営業すれば食える」っていうけど「ちゃんと仕事が入ってくれば稼げます」といっているだけではないか?
ちゃんと営業ってなんだろう。


なにを「ちゃんと」やれば「食える」のか?

そもそも「営業」はセンスや、各自の個性によるところが大きく、簡単に標準化できるものではありません。ただ、たとえば単価が10万円の仕事なら、月当たり10件いただければ、当然月商は100万円になります。ということは、この場合の営業を「ちゃんと」やるとは「月に10件受任できるくらい営業する」ことのはずです。

ふたつのよくある説を重ね合わせると、行政書士はたとえば10万円の案件を月に10件やれれば「食う」ことができ、そのためには「実務知識」と「営業」が必要だ、ということになります。

実務知識 × 営業 = 食える

高い実務知識自体が口コミを誘発して、マーケティング効果を発揮することもあるし、反対に、営業を重ねることで多くのケースに接し、実務知識が蓄えられるという面もあるので、実務知識と営業とは表裏一体のものです。

とりあえずこのふたつを車の両輪のようにイメージすれば、行政書士が食えるかどうかは、このふたつを一定水準以上に高められるかどうかにつきるわけです。

どんな業界にも例外はあるもので、行政書士業界にも、才能にあふれる経営者がいらっしゃいます。彼らは瞬く間に売上を伸ばし、法人化し、人を増やし、新たな企画やビジネスチャンスをみつけ、マーケティングを駆使して億単位の売上を築いていきます。これには組織化というまた別の要素があって、単純ではありません。しかし多くの現実の行政書士の多くはひとり事務所か、せいぜい3名くらいの体制であり、非常にシンプルな利益モデルです。


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ここまでで話を終えるつもりでしたが、

「一般論はわかったけど、具体的には何をどうするの?」

と思われるかもしれないので、僕がもし、昨日行政書士になったばかりだったらどうするかを書きます。ようは先ほどの公式にあてはめればよいわけですから、まずは単価10万円ほどの行政書士業務を探します。ネットで1時間もあれば、いくつかの候補を表にまとめて、自分の地域でニーズが見込めるかを検証することができるでしょう。

いくつも見つかった場合は、最初はとりあえず一つの分野にしぼって、あとで増やしていくことにします。なぜなら前述のとおり、実務知識はそれぞれに奥が深いため、ひとり事務所の前提では手が回らなくなるからです。


建設業許可を選択

どの業務にすべきか。僕は手掛けていないのですが、それを棚に上げさせてもらえば、非常に魅力的な業務分野は「建設業許可」です。行政書士が取り扱う分野として認知が確立されてきているし、更新もあり、法人案件なので他業務へのひろがり(産廃業許可など)も見込めるからです。

唯一のデメリットは、業務の難易度が高いことです。正直、建設業許可だけを専門にする先生がごろごろいる世界なので、業務の難易度や奥深さはトップクラスと言っていいと思います。かなりエネルギーが要りますが、十分な助走期間をとって独学するとともに、有名な「行政書士の学校」など、先輩行政書士の開催するセミナーで知識を補うしかないでしょう。


最も着実な営業の方法は「書く」こと

では、実務は計画的に学んで身に着けるとして、「営業」のほうはどうすればよいでしょうか。ネットがいいのか、チラシがいいのか、交流会がいいのか、悩むと思います。別にどれでもいいのですが、これも仮に僕が昨日行政書士になったとしたらでいえば、やることはひとつ。書くことです。つまり、ブログとメルマガをやります。

ブログとメルマガなんて言うと、
「そんな古い方法でうまくいくはずがない。」
「いつの時代のはなしだ。」
と、がっかりされるかもしれません。

しかし、億単位の年商を稼ぎ出す大手行政書士法人も、いまだにどちらも継続されています。彼らが理由なく続けているとは思えませんので、やはりいまだに効果のある手段なのです。要は結果が出ればいいのですから、古いか新しいかは関係ありません。それに、対面での営業はどうしてもセンスに近いものになってきます。ブログやメルマガなどは誰でもすぐに始められますし、アクセスなど目先の小さな目標がみつけやすい特徴もあります。


まとめ

僕の考えをまとめると、行政書士が食えるかどうかは、たとえば建設業許可の業務をしっかり学んで、ブログとメルマガも毎日やり、やがて毎月10件くらいこなせるようになると「食える」と思いますよ、となります。

もちろん行政書士の稼ぎ方は、建設業許可だけではありませんし、許認可手続きだけでもありません。セミナーを開催している先生もいるし、ひょっとするとYouTubeで稼ぐ先生もこれから出てくるでしょう。多種多様です。

僕自身にしても、オーソドックスな行政書士業務はほとんどやらずに、契約書の作成を専門にするという、ある種風変わりな運営を続けています。もともとは法人の設立や車庫証明などをしていたのですが、あるとき契約書業務に出会い、やっているうちにハマってしまったのです。その後は許認可の案件が来ると、他の先生に振ってしまいながら今日に至っています。

このように究極的には自分のスタイルにたどり着けるかどうかなのですが、まずは再現性の高い上記の方法でトライしてみるのが、最も安全で確実な行政書士の稼ぎ方だと思います。

どこかで誰かの参考になれば嬉しいです。


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