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有利か不利か? 今すぐわかる「秘密保持条項」の読み方

「秘密保持条項って、どうなっていればOKなの?」
という疑問はありませんか? 

秘密保持条項のシンプルな読み方を説明します。

秘密保持条項の2大ポイント

ビジネス契約書に良く登場する「秘密保持条項」。秘密保持条項とは、大切な企業秘密が漏洩する等した場合のリスクに備えるための契約条件を示すものです。

この条項があったからといっても秘密が守れるかどうかはまた別(実際に秘密情報を守れるかどうかは主に物理的な管理上の問題)ですが、とはいえ、この条項が無いともしも契約の相手方で情報漏洩があったと思われる場合に、それをこちらから「なんてことをしてくれたんだー」「賠償しろー」みたいに主張することが難しくなってしまいます。

何が秘密か? を決める

秘密保持条項はとても良く知られた条項ですが、そのしくみを知っている人は少ないはずです。

秘密保持条項が結局なにを意味しているのかというと、まず「秘密情報の定義」をしているのです。つまり、「この契約でいうところの秘密情報はこれとこれですよ」ということをあらわしています。あなたにとっては重要な企業秘密でも、相手も同じ認識だとは限りませんから、相手にちゃんと情報の重要性や貴重さを知らせておかなければなりません。

具体的な定義は契約の都度、任意に変えることができます。たとえばWeb制作を受託するときにやりとりされる情報と、業務提携を検討するために必要になる情報とは、情報の種類も範囲もまったく違うはずだからです。

秘密にすべき対象が分からないと秘密を守りようがない。ゆえに、秘密保持条項で秘密情報を定義します。

どう守るか? を決める

さて秘密情報が定義できたら、次は当然、その秘密情報を守る必要があります。そこで条文で、相手方に秘密を守る義務を課していきます。(この義務は相手方だけに課される場合もあれば、お互いに課す場合もあり、それも秘密保持条項で決まります。)

たとえば「秘密情報の内容を誰にも言ってほしくない」のであれば、漏洩や開示を禁止する、という意味の条文が必要です。同様に、情報をコピーされたくなければ複製の禁止を、出かけるときに社外に持ち出してほしくなければ、持ち出しの禁止といった規定を足していきます。

さらには他者への譲渡を禁止してもいいし、契約終了後には返還してくださいと定めることもできます。必要だと思うことは漏らさず定義したほうがよいでしょう。

これらの秘密保持義務は「義務」ですから、「やらなければならないこと」なわけで、義務を課された側にとっては「負担」を生じるものです(お互いに義務を負うこととした場合はお互いにとって負担になります)。いったん契約してしまったからには、実際に漏洩などがないように気を付けていないと、契約に違反してしまいます。

有利か不利かを判定する

できれば自分の負担は軽ければ軽いほどよいし、逆にいえば、相手の義務(相手に負わせる秘密保持義務)は、より厳しくてもよいわけです。その視点で秘密保持条項をチェックすると、自社と相手方がどれくらい義務を負担するかで、自社にとって有利か不利か(あるいは平等か)が判明します。

負担の重さは、秘密保持義務の内容によりますが、先ほど説明した「秘密情報の定義」によっても変わります。なぜなら「秘密情報」に指定される情報の範囲を「広く」すれば、それだけ多くの情報が秘密情報に該当するわけですから、それを守る負担は増します。逆に秘密情報を「狭く」規定すれば、負担は減ります。

広く定義する

たとえばこれからあなたがある会社と業務提携の交渉をするとしましょう。具体的な交渉の過程で、自社の営業に関するデータを相手に見せなければならなくなったとしたら、当然、それらの情報には企業秘密が含まれるから、秘密保持の対策をとりたい、と考えるでしょう。その場合には、できればいっそのことこちらから出す情報は「すべて秘密情報に指定したい」と考えるはずです。

よって秘密情報を定義する際は「○○の営業に関する情報」「○○事業の顧客に関するデータ」のように具体的に特定するとともに「その他、口頭によるものも含め当事者間でやり取りされる一切の情報」のように、幅広く解釈できるような規定をします。

狭く定義する

逆に、あなたが情報を開示される(情報を受け取る)際は、秘密情報の範囲は狭い方が有利です。たとえばあなたがソフトウエアの受託開発業務を受注した場合、相手からたくさんの情報の提供を受けて仕事をしていくことになるでしょうから、ありとあらゆる情報について秘密保持義務を負ってしまうと負担が大きくなります。

その際の秘密情報は限定的で少ない方がいいし、秘密保持義務も極力シンプルなほうが、負担が減りますから、秘密情報が具体的に特定できるように心がけ、自分が何に対してどのような秘密保持義務を負っているのかがクリアになるようにしたほうが有利になります。

ポイント
・「秘密情報」を具体化しよう
・秘密保持義務を負う範囲が適切かを検討しよう


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