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契約書の基礎固め #1 口約束も契約

契約書の「基礎」を確認するための記事です。契約書についてこれから詳しくなりたい方はぜひ読んでください。重要なポイントが「一気に」学べます。

契約書の基礎を短時間で身につけたい人のために

「どこから学べばよいかわからない」「契約書がチェックできるようになりたいけど、読んで何が分かればいいのかもわからない」

といった疑問にこたえます。


本記事の内容

・そもそも契約には何種類あるのか?
・なぜ契約書が必要なのか?
・法的に必ず必要な契約の種類はなにか?

そもそも契約には何種類あるのか?


民法上の契約は13種類あります。贈与,売買,交換,消費貸借,使用貸借,賃貸借,雇傭,請負,委任,寄託,組合,終身定期金,和解 (549~696条)といい、これらが「典型契約(てんけいけいやく)」と呼ばれています。

ただし実際に世の中でつかわれている契約書には、「業務委託契約書」とか「ライセンス契約書」のように、民法のものとは違う名前(タイトル)がつけられています。この意味でいうと、もはや契約書には何種類と数えることができないくらいたくさんの種類があることになります。

必ずしも契約するときに典型契約でなければならないという決まりはなく、むしろどのような契約を結ぼうと原則としては当事者の自由です。一方で、たとえば業務委託契約といってもたいていは請負、委任、売買のどれか(あるいはこれらの混ざったもの)にあてはまります。典型契約と現実社会の多数の契約とは、くっきりと分かれているわけではなく、相互に補い合って存在します。

口約束も契約になるのか?

口約束も一種の契約になります。というか典型契約はほとんど(贈与、売買、交換、賃貸借、雇用、請負、委任、組合、終身定期金、和解)が意思表示だけで成立する「諾成契約(だくせいけいやく)」です。つまり「申込み」と「承諾」の意思表示の合致があれば有効に成立します。

なぜ契約書をつくるのか?

証拠が大切になるからです。「口約束でも契約」だから、もはや契約書を作る必要はないともいえます。にもかかわらず契約書が作成されるのは、契約書は「証拠の王様」とも呼ばれるほど、証拠として大事にされているからです。

裁判でたとえ「ハンコが勝手に押された」とか、「契約書の内容をよく確認していなかった」などと契約の成立を否定しようとしても、そのような主張が認められる可能性はかなり低いでしょう。(私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。民訴288条4項)ただし、証拠といえる程度に明確な解釈のできる契約書にする必要があります。内容もとても大切なのです。

書面でなければならないのか?

原則として書面でなくてもOKです。契約の形式は「契約自由の原則」(①締結の自由 ②相手方選択の自由 ③契約内容決定の自由 ④契約方式の自由)により、原則として自由な方法で締結ができるためです。

ただし例外的に「一定の方式によらなければならない」=書面じゃないとだめな契約があります。たとえば「保証契約」、「任意後見契約」、「定期借地権設定契約」、「事業用定期借地権設定契約」、「定期建物賃貸借契約」、「取り壊し予定の建物の賃貸借契約」などは、契約書をつくることが契約成立の要件となっているためです。これらの契約は口約束のみでは成立しません。あと「贈与契約」は一応諾成契約ですが、書面によらない贈与は各当事者が撤回することができるとされています(民550)。

このように書面による「契約書作成義務」が法令上要求されているケースは、詳しくは「法令等により書面による保存、交付等が規定されている事案」を下記のページ(首相官邸ホームページ/高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)より確認することで調べることができます。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/tetsuzuki/

まとめ

・契約書の種類は典型契約13種類があるが、現実にはもっと多くの契約書がある
・口約束も契約になる。ただし証拠になるので契約書が活用されている。
・書面でなければ有効にならない契約もある

クイズ

業務委託契約は民法の典型契約でいうと何契約にあたりますか?

贈与契約を口約束で結びました。有効ですか?

定期賃貸借契約を口約束で結びました。有効ですか?

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